三重県情報公開審査会 答申第285号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年1月24日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15~18年度の「指導力向上支援ガイドブック」の供覧・決裁を示す文書等」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年2月6日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、次のとおりである。
- 平成15年5月20日付け起案文書「指導力向上支援研修ガイドブックについて(伺い)」
- 平成16年2月23日付け起案文書「平成16年度指導力向上支援研修ガイドブックについて(伺い)」
- 平成17年3月3日付け起案文書「平成17年度指導力向上支援研修ガイドブックについて(伺い)」
- 平成18年3月1日付け起案文書「平成18年度指導力向上支援研修ガイドブックについて(伺い)」
- 平成16年4月27日付け起案文書「平成16年度指導力向上支援研修に係る社会体験研修について(伺い)」
- 平成17年6月14日付け起案文書「センター等研修における月別総括表について(伺い)」
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
「指導力向上支援ガイドブック」の様式を定めるためだけの起案は行っておらず、様式を含んだガイドブック全体を定めるための起案を行っているため、開示請求の内容の1点目と2点目を合わせて対象公文書を特定し、開示した。したがって、開示請求の内容の2点目についても、既に開示している。
開示請求の内容の3点目について、指導力向上支援研修ガイドブックに掲載されていない様式2「センター等研修における月別総括表」等の起案文書は、平成17年6月14日付け起案文書を除き、口頭決裁のため、不存在である。組織内で使用する様式は、必ずしも文書による決裁を得ず、口頭による了解(決裁)で済ませる場合もある。口頭決裁を示す事実に該当する文書は、当然ない。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次の理由により、本決定は取り消すべきであるというものである。
開示請求の内容は、①平成15年度から18年度までの「指導力向上支援ガイドブック」の供覧・決裁を示す文書、②平成15年度から18年度までの「指導力向上支援ガイドブック」の様式1から様式10までの供覧・決裁を示す文書、③平成15~18年度様式2「センター等研修における月別総括表」・様式3「センター研修における月別評価」・様式4「センター研修状況シート」・様式9「センターにおける授業研修の評価」の供覧・決裁を示す文書であったのに、①の文書及び③の文書の一部のみ開示され、②の文書が開示されていない。
開示請求の内容の③に関し、一部の起案文書は口頭決裁のため不存在というが、それを示す事実が示されていない。様式の制定や変更は、口頭決裁では行えない。また、口頭決裁と文書決裁が混在するのは不自然である。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
まず、異議申立人は、開示請求の内容の2点目の「平成15年度から18年度までの「指導力向上支援ガイドブック」の様式1から様式10までの供覧・決裁を示す文書」に対する公文書が開示されていないと主張している。これに対し、実施機関は、「指導力向上支援ガイドブック」の様式を定めるためだけの起案は行っておらず、様式を含んだガイドブック全体を定めるための起案を行っているため、開示請求の内容の1点目と2点目を合わせて対象公文書を特定し、開示したと説明している。当審査会が本件対象公文書を見分したところ、確かに様式も含めた指導力向上支援研修ガイドブック全体の作成、印刷製本及び配布について起案・決裁がなされていた。したがって、開示請求の内容の1点目と2点目を合わせて対象公文書を特定し、開示したとする実施機関の説明に不合理な点はない。
また、異議申立人は、開示請求の内容の3点目について、指導力向上支援研修ガイドブックに掲載されていない様式2「センター等研修における月別総括表」等の起案文書について、一部の起案文書を除き不存在であるのはおかしいと主張している。確かに、三重県教育委員会処務規程(平成14年教委訓第4号)第6条においては、事務の処理は、事案が軽微な場合を除き、原則として文書によることを規定しており、異議申立人の主張に係る様式等を定めるに当たっては本来起案文書を作成して決裁を受けるべきであったと考えられる。しかしながら、そのような事務処理の適否はともかくとして、ほとんどの場合に口頭による了解(決裁)を受けて、指導力向上支援研修ガイドブックに掲載されていない様式2「センター等研修における月別総括表」等を定めたとする実施機関の説明に特に不自然な点は認められず、これらの様式等を定めた起案文書が存在することを窺わせるような事情もない以上、これらの起案文書を不存在とした本決定は、やむを得ないものと言わざるを得ない。
したがって、本件開示請求に対し本件対象公文書を特定した本決定は、不当とまではいえず、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 4.10 | ・諮問書の受理 |
19. 4.11 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 5. 2 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 5. 9 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 8.10 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 (第276回審査会)
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19. 8.30 | ・意見書の受理 |
19. 8.31 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第279回審査会)
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19. 9.20 | ・審議 ・答申 (第281回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。