三重県情報公開審査会 答申第279号
答申
1 審査会の結論
実施機関の行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成18年10月30日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「環森第13-107号の記載について、平成17年3月に特定事業者が廃棄物を撤去する際に、排出した産業廃棄物処理のマニフェストの写しの交付について。平成18年10月24日付環森第13-号の58の開示交付を受けたが、排出場が不存在のため再請求いたします。」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年11月29日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○ マニフェストの写しについて
平成17年3月に特定の土地から撤去後自社の敷地に保管し、その後排出したとするマニフェストを入手し、開示請求対象公文書として特定し開示したものである。
○ 非開示部分について
非開示とした部分は、マニフェストの写しに記載された交付担当者、運搬担当者、処分担当者の氏名であり、当該情報は開示することにより特定個人が識別される情報であり、条例第7条第2号に該当するため非開示とした。
4 異議申立て理由
廃棄物を排出した土地を特定し開示請求したにもかかわらず、開示された文書は、請求内容とは異なるマニフェストの写しである。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
本決定では、交付担当者、運搬担当者及び処分担当者の氏名は、情報公開条例第7条第2号に該当するため非開示とされているが、異議申立人は当該非開示部分についての異議は主張していないため、この点について争いはないと判断する。したがって、当審査会は、対象公文書の特定についてのみ判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件開示請求にあるマニフェストは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第12条の3に規定される産業廃棄物管理票であり、「環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。」とされている。
異議申立人は、特定の事業者(以下「当該事業者」という。)が廃棄物を不法に投棄し、その後その廃棄物を撤去したとする特定の土地(以下「当該地」という。)から廃棄物が排出されたことを記載するマニフェストの開示を求めたが、当該地から排出されたことが記載されたマニフェストは開示されていないと主張している。
実施機関は、異議申立人の請求に該当すると思われるマニュフェストは全て開示しており、実施機関の対応に誤りはなかったと主張している。実施機関の説明によると、当該事業者は、廃棄物を当該地に仮置きしていた事実があり、本件対象公文書は、当該事業者が当該地に仮置きしていた廃棄物を撤去した際に、その一部を当該事業者の自社敷地に仮置きし、その後廃棄物処理場に排出した際に交付したマニフェストの写しである。また、マニフェストに記載されている内容からは当該地から排出されたことは確認できないが、実施機関が当該事業者に事情聴取し、当該地に投棄されていた廃棄物に係るマニフェストであることを確認したと説明している。
以上の実施機関の説明に特段の不自然は認められないことから、開示請求に関連するものとして本件対象公文書を特定した実施機関の判断は妥当であるとせざるを得ない。
なお、附言すれば、本来廃棄物の排出及び処理に係る情報が記録されるべきマニフェストの交付に関して、事業者への指導が徹底されていないため、異議申立人に誤解を招いたことは否めない。異議申立人に十分な理解を得るように努めることが必要である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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19. 3.15 | ・諮問書の受理 |
19. 3.27 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 4.17 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 4.25 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 7.20 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第274回審査会)
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19. 8.22 | ・審議 ・答申 (第277回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。