三重県情報公開審査会 答申第272号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年9月11日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成12年11月27日の三重県立学校校長と教頭が三重県立学校の特定の教員に対して暴力を振るった件について、県教育委員会等が当該特定の教員に対して行った聞き取りについてのすべての資料(当該特定の教員への聞き取りの呼び出し等を含む)」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年12月22日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立てについて
本件異議申立ては、上記2の開示請求に対し実施機関が平成16年9月16日付けで公文書の存否を明らかにしない決定を行ったところ、同月22日に異議申立てがなされ、当審査会の平成17年11月11日付け答申第221号を踏まえ、実施機関が当該決定の一部を取り消し、改めて行った本決定に対して、平成18年1月25日付けでなされたものである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
開示請求のあった「暴力を振るった件」に関し、当該暴力を振るわれたとする特定の教員から三重県教育委員会に対して文書や電子メールで様々の訴えがなされていたため、これらの確認のために行った聞き取りに関する文書を対象公文書として特定し、本決定を行ったものである。本決定の通知書に「特定の教員の分限処分に関する聞き取りについての文書」と記載したのは、結果的にこれらの文書が当該特定の教員の分限処分に関する資料として使用されたため、そのように記載したに過ぎない。本決定において特定した公文書以外には、開示請求に係る公文書は存在しない。
5 異議申立て理由
異議申立人が開示を求めた文書は、三重県立学校校長と教頭が三重県立学校の特定の教員に対して暴力を振るった件に関して県教育委員会等が当該特定の教員に対して行った聞き取りについての資料であるにもかかわらず、実施機関が本決定において特定した文書は、当該特定の教員の分限処分に関する聞き取りについての文書である。したがって、本決定により開示された文書は異議申立人が開示を求めた文書でないことは明らかであり、本決定は直ちに取り消されなければならない。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本件異議申立てについて
本件異議申立ては、上記2で述べたとおり、実施機関が、当審査会の答申第221号を踏まえ、公文書の存否を明らかにしない決定の一部を取り消して改めて行った本決定に対して、なされたものである。そして、異議申立人は、上記5で述べたとおり、本決定により開示された文書は、異議申立人が開示を求めた文書でないことは明らかであると主張し、本決定の取り消しを求めている。
本件異議申立ては、形式的には実施機関が行った開示決定の取消しを求めるものであるが、実質的には本決定において特定された公文書以外には開示請求に係る公文書が不存在であることに対する異議申立てであるものと判断されることから、当審査会においても、本決定において特定された公文書以外の開示請求に係る公文書が不存在であること(以下「本件不存在決定」という。)についての異議申立てとして、以下のとおり判断する。
(3) 本件不存在決定の妥当性について
本件不存在決定に関する実施機関の説明は、上記4のとおりである。本決定において特定した公文書以外に開示請求に係る公文書は存在しないとする実施機関の説明には不自然な点はなく、またそのような公文書が存在するとの特段の事情も認められない。
したがって、実施機関の本件不存在決定は妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
条例第21条第1項は、開示決定等について行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定による不服申立てがあったときは、同項各号のいずれかに該当する場合を除き、速やかに当審査会へ諮問しなければならないことを定めている。しかし、上記2のとおり、平成18年1月25日付けでなされた本件異議申立てについて、実施機関は同年9月28日付けで当審査会へ諮問しており、諮問が著しく遅延している。実施機関は、条例の適切な運用に努めるべきである。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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18. 9.28 | ・諮問書の受理 |
18.12.15 | ・諮問の取扱いについて審議
(第259回審査会)
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19. 1.18 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
19. 1.24 | ・非開示理由説明書の受理 |
19. 2. 9 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
19. 2.13 | ・意見書の受理 |
19. 2.15 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
19. 3.14 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第267回審査会)
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19. 5.11 | ・審議 ・答申 (第270回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 (平成19年3月31日辞職) |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学准教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市看護医療大学副学長 |
※委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 (平成19年4月17日就任) |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。