三重県情報公開審査会 答申第259号
答申
1 審査会の結論
実施機関の行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成18年8月14日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「環森第13-107号の記載について、特定事業者が廃棄物を撤去する際に、排出した産業廃棄物の適正処分を確認したマニフェストの写しと、当該事業者の廃棄物以外の廃棄物が埋め立てられていることを確認した調査結果、及びその回答が長期に及んでいる理由」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成18年8月28日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○ マニフェストの写しについて
実施機関の職員が、当該事業所で目視により確認したが、その際当該事業者にマニフェストの写しの提出を求めなかったため、存在しない。
○ 調査結果について
実施機関の職員が、当該事業所において、当該事業者が排出する廃棄物以外の廃棄物が埋め立てられていることを目視で確認できたため、それ以上の調査等を行っていないため公文書は存在しない。
○ 回答が長期に及んでいる理由について
当該事案の経過説明は、その都度、口頭等で行っているため、理由について記載した公文書は存在しない。
4 異議申立て理由
マニフェストの提示を求めると、公文書開示請求の手続きをとるように言われたため開示請求をしたが、不存在の決定であった。実施機関は、当該事業所で実施機関の職員が目視したというが、確認で済ませる問題ではない。また、調査報告書の開示請求に対しても、口頭での回答のみで、文書での回答がないこと及び、実施機関からの正当な理由が回答されていない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件開示請求にあるマニフェストは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月25日号外法律第137号)第12条の3に規定される産業廃棄物管理票であり、「環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。」とされている。
異議申立人は、当該事業者の不法投棄に関して問題提起がされている状況の中で、マニフェストを現場で確認するだけでは、環境行政として適正でないと主張している。実施機関は、本件開示請求の対象となった立ち入り調査は任意のものであり、任意の調査の際にマニフェストの写しの提出を求めるまでもなく現場で確認するのみであり、本決定の時点においてマニフェストの写しを収受していなかったと主張している。異議申立人の主張ももっともであるが、制度上は、マニフェストは廃棄物の排出事業者から受託事業者に交付され、通常は事業者において保管されるものであることから、実施機関の説明に特段の不自然さは見られない。したがって、実施機関が不存在としたことは妥当である。
次に、異議申立人は、再三の請求にもかかわらず、調査結果の報告が回答されず、実施機関は徒に回答を延ばしていると主張している。一方実施機関は、平成17年9月9日の現場での調査において、当該事業者が排出した廃棄物ではないと判断し、その後も、随時口頭等で経過報告をしてきたことから、異議申立人の要望には応じてきたとしている。本件請求時点では、調査は継続中であり、調査の完了を待って回答する予定であったとする実施機関の説明を認めざるを得ない。したがって、実施機関が調査結果に関する公文書を不存在とした決定は妥当である。
なお、異議申立人は平成17年10月25日付けの異議申立(左記異議申立は、条例に基づく異議申立ではない。)に対する回答が長期にわたった理由についても開示請求している。当然に、その理由を説明する文書が存在すれば、開示請求の対象となりうるが、当該異議申立後も随時経過説明を行ってきたため、理由を記載した公文書を作成していないという実施機関の説明は理解できる。したがって、当該理由を記載した公文書が存在しないとした実施機関の決定は妥当である。
以上のことから、実施機関の行った本決定は妥当であると判断する。
当審査会の判断は上記のとおりであるが、本決定で不存在としたマニフェストが、本件異議申立後の新たな開示請求に対して部分開示されていること、その開示決定において決定書記載事項に誤りがあったことなど、実施機関の対応に不充分な部分があり、そのことが却って異議申立人の不信感を招いていると思われる。また、犯罪調査に発展する可能性のある事案に関して、その対応に慎重になることはやむをえないと考えるが、異議申立人に十分な理解を得るように努めることが必要である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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18. 9.21 | ・諮問書の受理 |
18. 9.28 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
18.10.18 | ・非開示(不存在)理由説明書の受理 |
18.10.26 | ・異議申立人に対して非開示(不存在)理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
18.11.27 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第258回審査会)
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18.12.18 | ・審議 ・答申 (第260回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学助教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。