三重県情報公開審査会 答申第244号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年6月30日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「軽油引取税を脱税・密造(販売)などしたとして、県税務調査プロジェクトが告発したすべての案件に関するすべての文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成17年8月11日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、次のとおりである。
- 平成16年2月20日付け起案「地方税法(軽油引取税)違反嫌疑事件の告発について(伺い)」のうち、告発事件送付書
- 平成16年10月28日付け起案「地方税法違反嫌疑事件の告発について(伺い)」のうち、告発事件送付書
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○条例第48条(適用除外)に該当
告発事件送付書、告発書及びこれらに添付された書類は、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」であり、条例第48条の規定に基づき、条例の適用除外となる。
5 異議申立て理由
軽油密造事件の摘発には広く県民の協力が必要だから積極的に公表すべきである上に、開示請求に係る告発事件はいずれも判決が確定しているから開示しても公益が損なわれるおそれは皆無である。
また、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」は極めてあいまいな表現であり、告発書が「訴訟に関する書類」だとしても、告発事件送付書は単なる送り状的性格をもつものであるから、開示すべきである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第48条(適用除外)の意義について
本条は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「行政機関情報公開法」という。)が適用除外とされる公文書について、条例の適用除外とすることを定めたものである。行政機関情報公開法の適用を除外することが定められているのは、刑事訴訟法に規定する訴訟関係書類及び押収物や漁業法に規定する免許漁業原簿等であって、個別の法令で自己完結的な閲覧・複写の制度が認められるものは当該制度に委ねるという趣旨であり、いわば制度の棲み分けを図ったものである。
(3) 条例第48条(適用除外)の該当性について
実施機関は、告発事件送付書は、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」であり、条例第48条の規定により条例の適用除外文書に該当すると主張する。
他方、異議申立人は、本件開示請求に係る告発事件はいずれも判決が確定しており、検察庁では確定刑事記録を閲覧できたと主張する。また、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」は極めてあいまいな表現であり、告発書が「訴訟に関する書類」だとしても、告発事件送付書は単なる送り状的性格をもつものであるから、開示すべきであると主張している。
確かに、異議申立人が主張するように、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」を定義した明文の規定はないため、告発書がこれに含まれることは間違いないものの、その範囲は必ずしも明確であるとは言い難い。そこで、当審査会がインカメラ審理により見分したところ、本件対象公文書は、実施機関が当審査会の審理において説明したとおり、地方税犯則事件の取締について(昭和25年8月20日付け地方財政委員会税務部長通知)の様式第9の1及び三重県県税犯則取締事務取扱規則(昭和24年三重県規則第58号)第13号様式に従って作成され、これらの様式で定められた記載項目として、犯則嫌疑者の本籍、出生地、前科といった告発書には記載されていない項目についても、所要の記載が行われており、単なる送り状とは言えないと認められた。したがって、当審査会としては、刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」の範囲は明確でないものの、少なくとも本件対象公文書については、告発書と一体となるもの又はこれと密接に関連を有するものとして、「訴訟に関する書類」に含まれると認められると判断する。
したがって、告発事件送付書を含めた「訴訟に関する書類」は、条例により開示すべきとはいえず、刑事訴訟法及び刑事確定訴訟記録法により開示・非開示を決定すべきであり、条例の適用除外とされるべきである。
なお、本件対象公文書は、写しであるが、内容は原本と全く同一であることから、「訴訟に関する書類」に該当すると認められる。
したがって、本件対象公文書は、条例第48条に該当し、非開示とした実施機関の決定は妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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17. 8.24 | ・諮問書の受理 |
17. 8.26 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
17. 9.22 | ・非開示理由説明書の受理 |
17. 9.27 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
18. 7.21 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第249回審査会)
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18. 8. 9 | ・審議 ・答申 (第251回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学講師 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。