三重県情報公開審査会 答申第243号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年7月7日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「税務調査プロジェクト保有文書のうち、自家用車を公用車として使用する場合に関するすべての文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成17年7月29日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、次のとおりである。
- 平成16年度「公務出張に使用する自家用車届出書」
- 平成17年度「公務出張に使用する自家用車届出書」
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○条例第7条第2号(個人情報)に該当
本件対象公文書は、職員が自家用車による出張を行うにあたって、所属長あて提出される文書である。非開示とした情報は、個人の財産に係る私的な情報であり、個人に関する情報であることは明らかであるが、職員が自家用車を公務出張に用いたとしても、当該自家用車の私有財産たる性質に変わりはない。
5 異議申立て理由
自家用車といえども、公用車として使用しているのだから、これが私的に使用されていないかどうかを県民がチェックするためには、本決定による非開示部分のうち、「車名」及び「車種」並びに「在籍地及び登録番号」のうち自動車登録番号等の下4桁を除く部分は、開示すべきである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないことととしている。
なお、公務員等にあっては、例えば、給与額、休暇に関する情報や家族状況などの公務員等の個人の私的な情報については、本号に該当すると解されるが、公務員等の職務に関する情報については、公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがある場合に限り本号に該当することとなる。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号に該当するとして非開示とした情報は、本件対象公文書に記載された「免許取得年月日」「車名」及び「車種」並びに「在籍地及び登録番号」のうち自動車登録番号等の下4桁を除く部分である。実施機関は、その主張を総合すると、これらの情報が条例第7条第2号本文の「個人に関する情報であって特定の個人が識別されるもの」に該当すると判断して非開示としたようである。
他方、異議申立人は、自家用車であっても、公用車として使用しているのだから、これが私的に使用されていないかどうかを県民がチェックするためには、本決定による非開示部分のうち、「車名」及び「車種」並びに「在籍地及び登録番号」のうち自動車登録番号等の下4桁を除く部分(以下「本件非開示情報」という。)は、開示すべきであると主張している。
ところで、自家用車による出張は、「職員の自家用車による出張の承認等に関する基準の制定等について(平成15年3月20日総務第04-402号、総務局長通知)」に基づき、公務の処理に当たって必要な場合に、所属長が承認するものである。したがって、当該承認を受けて出張に使用される自家用車に関する情報は、その限りにおいて、公務員等の職務に関する情報であると考えられる。
しかし、自家用車は、上記承認を受けて出張に使用する場合を除いては、通常は職員又はその家族等が私的に使用するものであるから、本件非開示情報を開示すると、当該職員又は家族等の私的な行動のみならず自宅等までが明らかになることが予想され、当該自家用車に対するいたずらや自宅への嫌がらせ行為などにより、当該職員個人の私生活上の権利利益を害するおそれがある。
確かに、異議申立人が主張する出張のための使用を認められた自家用車での当該出張期間中の私的使用は、許されず、これを防止するためには、本件非開示情報を開示することが有効である旨の異議申立人の主張は理解できる。しかし、だからといって、職員の私生活上の権利利益を害してまで、開示する特段の必要性があるとまでは認められない。
したがって、本件非開示情報は、本号本文に該当し、非開示が妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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17. 8.15 | ・諮問書の受理 |
17. 8.19 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
17. 9. 7 | ・非開示理由説明書の受理 |
17. 9.12 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
18. 7.21 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第249回審査会)
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18. 8. 9 | ・審議 ・答申 (第251回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学講師 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。