三重県情報公開審査会 答申第238号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年4月14日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県立盲学校の平成10年度以降のシラバスのうち、該当学年の児童生徒等が次学年等に進級等した際に次年度等の担当教諭等が次年度にシラバス等を作成する際に参考等するための資料として各年度の教諭等が作成し倉庫等に整理保存したシラバス」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年4月26日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立てについて
異議申立人は、本決定のうち平成10年度から平成14年度まで及び平成17年度の分のシラバスが不存在であることに対して異議があると主張している。
本件異議申立ては、形式的には実施機関が行った部分開示決定の取消しを求めるものであるが、実質的には不存在に対する異議申立てであるものと判断されることから、当審査会においても、本決定において不存在とされた部分(以下「本件不存在決定」という。)についての異議申立てとして、以下のとおり判断する。
4 実施機関の理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件不存在決定が妥当というものである。
平成10年度及び平成11年度分のシラバスについては、三重県立盲学校において組織的に作成されておらず、また、保存もされていない。
平成12年度から平成14年度までの分のシラバスについては、同校内において一部の職員による作成の取組みはあったが、組織的に保存しているものはない。
平成17年度分のシラバスについては、開示請求時点においては作成中であったため、不存在とした。
5 異議申立て理由
平成10年度から平成14年度までの分のシラバスについては、三重県立盲学校の職員が作成しているなら、組織的な作成でないにせよ、公文書であり、保存されていないのは違法である。また、シラバスは生徒の年間指導計画であるから、当該生徒が在籍する限りは保存しておかなければならず、保存されていないということはあり得ない。
平成17年度分のシラバスについては、当該年度の開始前に作成されていなければならないから、開示請求時点において作成中ということはあり得ない。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本件不存在決定の妥当性について
実施機関の説明によると、三重県教育委員会は平成14年度から県立高等学校に対してシラバスの作成を指示したが、盲・聾・養護学校に対してシラバスの作成を指示したことはなく、三重県立盲学校においては平成15年度以降校長の指示によりシラバスを作成しているものであることから、平成10年度から平成14年度までの分のシラバスは組織的に作成ないし保存していないとのことである。しかし、実施機関の説明には、具体的にこれを裏付ける資料がなく、必ずしも信用できるものとはいい難いものの、同説明が不自然で信用できないとまでいうこともできない。
また、異議申立人は、三重県立盲学校の職員が個人的に作成しているシラバスはあるとの実施機関の説明に対し、組織的な作成でないにせよ、公文書であり、保存されていないのは違法であると主張するが、条例に基づく開示請求の対象となる「公文書」とは、単に実施機関の職員が職務上作成したことにとどまらず、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして当該実施機関が保有していることが要件とされているから(条例第2条第2項)、同主張は認められない。ただ、職員が個人的にシラバスを作成し、組織的に保有管理していないとの実施機関の説明にも、裏付け資料がないため、疑問は残る。
さらに、異議申立人は、平成17年度分のシラバスについて、当該年度の開始前に作成されていなければならないと主張する。確かに、シラバスは教科・科目ごとの授業計画というべきものであるから、当該年度の開始前に作成されていることが望ましいと考えられる。しかしながら、前記のとおり盲・聾・養護学校におけるシラバス作成は三重県教育委員会からの指示に基づく義務的なものでないことに加え、盲学校においては県立高等学校に比して個々の生徒の様態を十分把握した上で作成する必要があるため、実施機関が主張するように開示請求時点においては作成中であったということはやむを得ないものと認められる。
したがって、本件公文書を不存在とした実施機関の決定を不当とするまでの積極的な事由を見出すことはできないので、本決定は妥当とせざるを得ない。
(6) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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17. 7.20 | ・諮問書の受理 |
17. 7.22 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
17. 8. 4 | ・非開示理由説明書の受理 |
17. 8.10 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17. 8.17 | ・異議申立人からの意見書の受理 |
17. 8.19 | ・実施機関に対して意見書の送付 |
18. 4.21 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第244回審査会)
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18. 5.19 | ・審議
(第246回審査会)
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18. 6.16 | ・審議 ・答申 (第247回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 (平成18年5月31日退職) |
※委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学講師 (平成18年6月1日任命) |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。