三重県情報公開審査会 答申第237号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年3月27日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「情報公開条例」という。)に基づき行った「三重県分限審査委員会の設置の法律的根拠は何ですか」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年5月11日付けで行った不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
分限処分については、地方公務員法(以下「地公法」という。)第28条に規定されており、同条第3項に、職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなくてはならないとされ、職員の分限に関する条例(昭和48年三重県条例第3号。以下「分限条例」という。)が定められている。その分限条例で、降任、免職及び休職の手続が定められているが、三重県分限審査委員会(以下「委員会」という。)は、法律又は条例に基づいて設置したものではなく、実際の運用にあたって慎重を期するために、実施機関は、職員分限審査取扱要綱を制定し、委員会は、その要綱に規定され、設置しているものである。
なお、申立て人からは、平成17年2月8日付けでも、「職員分限審査委員会取り扱い要綱の法的根拠」について開示請求がなされており、実施機関は、請求内容をまとめた公文書が存在しないため、平成17年2月21日付けで「職員分限審査委員会取り扱い要綱の法的根拠については、地公法第28条第1項に定める分限の実施に必要な審査等を、より慎重に行う目的で分限審査委員会を設置し、その手続き等について定めるために当該要綱を制定しました。」との資料提供を行っている。また、「職員分限審査取扱要綱」にあっては、平成16年5月14日付けで開示請求され、開示している。
以上の理由から、三重県分限審査委員会の設置の法的根拠についてまとめた公文書は存在しないため不存在決定するとともに、申立人に対し、「「職員分限審査取り扱い要綱」を制定し、これに基づいて三重県分限審査委員会を設置しました。」との情報提供を行った。
4 異議申立ての理由
教育委員会は委員会の設置について条例では定められていないので、「職員分限審査取扱要綱」(平成15年12月1日施行)を制定して地公法第28条第1項で分限処分を決定したと主張するが、地公法第28条第3項で分限の手続き及び効果を条例で定めるように求めていて、職員分限審査取扱要綱の制定をもって、委員会の法的な設置の根拠として地公法第28条第1項を主張することはできない。
したがって、実施機関が自ら委員会の設置の法的根拠についてまとめた公文書が存在しないことを認めたので委員会の決定は、地公法第28条第1項に基づく分限処分の法的効力を生じない。また、「職員分限審査取扱要綱」を制定する以前にも実施機関は、地公法第28条第1項に基づき分限処分を行っているので、その経緯から、上記の要綱以外の内規の存在が推察されると主張している。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
情報公開条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。情報公開条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、情報公開条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人は、委員会の設置の法的根拠がないにもかかわらず、地公法第28条の分限処分が委員会で行われている。地公法第28条は分限の手続については条例で定めなければならないと規定しており、条例により委員会を設置して地公法第28条の分限処分をしなければいけない。したがって、委員会の設置を条例で規定せずに要綱で規定するのは不当であると主張している。
実施機関は、請求に該当する文書が存在しないため、不存在の決定をした。分限処分については、地公法第28条に規定されており、同条第3項に「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなくてはならない」とされていて、三重県では分限条例を定めており、降任、免職、休職の手続については定められているが、実際の運用にあたって慎重を期するため、職員分限審査取扱要綱を制定し、委員会の設置を規定していると主張している。
異議申立人は、委員会の設置については必ず条例で定めなければならないと主張しているが、三重県では、分限処分については、地公法第28条第3項に基づき、分限条例第3条において降任、免職及び休職の手続を定め、任命権者が決定することになっている。任命権者が分限処分を決定するにあたって、慎重な審議と内部的な意思形成のために、委員会を要綱で設置したとしても、それが違法とまでは言えない。
したがって、文書不存在とする実施機関の決定は妥当であると判断する。
なお、附言すれば、当審査会は、情報公開条例に基づき実施機関の行った決定についての異議申立に関し審査するものであって、実施機関が設置している委員会が地公法に適合しているか否か等について審査するものではない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
17. 6.29 | ・諮問書の受理 |
17. 7. 5 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
17. 7.25 | ・非開示(不存在)理由説明書の受理 |
17. 8. 3 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17. 8.16 | ・異議申立人から意見書の受理 |
17. 8.19 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
18. 4.17 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第243回審査会)
|
18. 5.15 | ・審議 ・答申 (第245回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 伊藤 睦 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 元三重中京大学短期大学部教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。