三重県情報公開審査会 答申第232号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年9月7日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成10年5月29日に公表された『監査委員公表』に関し、住民監査請求書及び添付書類」の開示請求に対し、三重県監査委員(以下「実施機関」という。)が平成16年9月9日付けで行った部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、住民監査請求(平成10年4月3日受付)に係る三重県職員措置請求書及び事実証明に関する書類1~6(以下「本件対象公文書」という。)である。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○条例第7条第2号(個人情報)に該当
条例第3条後段には「実施機関は、個人のプライバシーに関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない。」とある。職業及び印影は、個人に関する情報であって、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され得る情報に当たることから、条例第7条第2号本文の「個人に関する情報・・・であって特定の個人が識別され得るもの」(以下「個人に関する識別情報」という。)に該当し、開示することにより監査請求人個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあると判断した。条例第7条第2号の規定の趣旨は、個人を特定から保護しようとするだけではなく、個人に関するプライバシーの保護を最大限に図ろうとするものであって、個人に関する識別情報については、同号のイ及びロに例外事項として掲げられた「公にされ、又は公にすることが予定されている情報」及び「人の生命等を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当する場合を除き、非開示情報とすると規定されている。監査請求人の職業及び印影は個人に関する識別情報であり、かつ、同号のイ及びロに掲げられた情報には該当せず、非開示情報に当たると判断した。
5 異議申立ての理由
開示しない理由として、「特定の個人が識別され得るおそれがある情報であるため」とされているが、当該監査の請求人は、住所、氏名が公開され、特定の個人としてすでに識別されていることから、職業と印影を特に非開示とする理由にならない。
また、住民監査請求の請求人は、住民全体のために監査請求を行っており、監査結果において氏名等が保護されることを期待しておらず、少なくとも監査請求書に記載されている範囲は、プライバシーの侵害にはならないと判断して監査請求を行っているのであって、非開示とすることはおかしい。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号(個人情報)に該当するとして非開示としたのは、本件対象公文書中の三重県職員措置請求書に記載されている請求者の職業及び印影である。
実施機関は、監査請求人の職業及び印影は、個人に関する情報であって、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され得る情報に当たることから、条例第7条第2号本文の個人に関する識別情報に該当し、開示することにより監査請求人個人の私生活上の権利利益を害するおそれがある。本号の規定の趣旨は、個人を特定から保護しようとするだけではなく、個人に関するプライバシーの保護を最大限に図ろうとするものであって、個人に関する識別情報については、同号のイ及びロに例外事項として掲げられたものに該当する場合を除き、非開示情報とすると規定されている。監査請求人の職業及び印影は個人に関する識別情報であり、かつ、同号のイ及びロに掲げられた情報には該当せず、非開示情報に当たると主張している。
他方、異議申立人は、開示しない理由として、「特定の個人が識別され得るおそれがある情報であるため」とされているが、当該監査の請求人は、住所、氏名が公開され、特定の個人として既に識別されていることから、職業と印影を特に非開示とする理由にはならない。また、住民監査請求の請求人は、監査結果において氏名等が保護されることを期待しておらず、少なくとも監査請求書に記載されている範囲は、プライバシーの侵害にはならないと判断して監査請求を行っているのであって、非開示とすることはおかしいと主張している。
しかしながら、本件対象公文書中の請求者の職業及び印影については、他の情報と組み合わせることにより、特定の個人が識別され得る情報であることは明らかであり、氏名及び住所が公開されているとしても、本号本文を定めた趣旨(個人に関するプライバシー等の人権保護)から原則として開示すべきではないと考えられる。また、本件対象公文書中の請求者の職業及び印影は、三重県職員措置請求書に記載されているとはいえ、公益上開示する必要性のある情報とは考えられず、本号ただし書ロの情報(人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報)に該当するとは認められない。さらに、実施機関が説明するように監査請求者の氏名及び住所は監査結果の公表によって明らかとなっているが、職業及び印影については、監査結果の公表において明らかにしておらず、法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報でもない。
よって、本件対象公文書中の職業及び印影は、本号本文に該当し、ただし書にも該当しないことから、非開示が妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16.12.13 | ・諮問書の受理 |
16.12.15 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
17. 1. 7 | ・非開示理由説明書の受理 |
17. 1.12 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
18. 1.17 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第237回審査会)
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18. 2.21 | ・審議 ・答申 (第240回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。