三重県情報公開審査会 答申第230号
答申
1 審査会の結論
本件異議申立ては、異議申立ての利益は失われたと認められるので、実施機関は却下すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年8月24日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成16年8月23日県土整備企業常任委員会説明資料における損害額等について特定法人から当面負担しているとして報告があったとされる詳細がわかる文書と協議内容の詳細がわかる文書」の開示請求に対し、三重県企業庁(以下「実施機関」という。)が平成16年9月7日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立てについて
異議申立人は、本決定のうち「協議内容の詳細がわかる文書」(以下「本件対象公文書」という。)が不存在であることに対して異議があると主張している。
本件異議申立ては、形式的には実施機関が行った本決定の取消しを求めるものであるが、実質的には不存在に対する異議申立てであるものと判断されることから、当審査会においても、本決定に際して不存在であった部分(以下「本件不存在決定」という。)についての異議申立てとして、以下のとおり判断する。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件不存在決定を取消したうえで、平成17年1月5日付けにて公文書部分開示決定を行っており、現時点では異議申立人に対し本件対象公文書の開示を行っているというものである。
○本件不存在決定について
実施機関と特定法人との協議のうち、「特定法人が当面負担しているとした報告」に関して、当該報告の内容に関する協議のうち、「当該協議の詳細がわかる文書」は、実施機関と特定法人との協議自体が実施されておらず、公文書として存在しないため、本件不存在決定を行った。
しかしながら、本件不存在決定に対し開示請求者から異議申立てがなされ、異議申立ての趣旨を確認した結果、実施機関と異議申立人との間で公文書の特定にあたって齟齬があることを確認し、本件不存在決定で文書の特定作業を行った以外に、「特定法人が当面負担しているとした報告」を上司に報告した文書及び「特定法人が当面負担しているとした報告」が提出されるに至った事実経過がわかる文書も公文書開示請求の対象としているよう推測できることから、再度公文書を特定し、本件不存在決定を取消したうえで、平成17年1月5日付け公文書部分開示決定を行った。
なお、平成17年1月27日に平成17年1月5日付け公文書部分開示決定に対する閲覧・説明を実施したが、異議申立人から異議申立書を取下げる申出はなかった。
5 異議申立て理由
実施機関は、「公文書の特定に齟齬がある」と主張しているが、そうではなく文書を故意に隠蔽し不存在とした可能性が非常に高い。「協議内容の詳細がわかる文書」を請求したのであって、その文書の使途や目的は問うてないにも関わらず、実施機関は勝手に曲解した主張をいまさら述べているにすぎない。これは齟齬などではなしに異議申立てされたから軌道修正したと解すべきで、悪質極まりない情報の隠蔽であり言語道断な不正行為である。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 異議申立ての利益について
異議申立人が本件開示請求をし、本件対象公文書は不存在であるとして本件不存在決定がされたことについては、条例に基づく公文書の開示を求める権利又は利益を侵害されたことになり、異議申立てを提起した平成16年11月9日時点では、異議申立人には、本件不存在決定の取消しを求める法律上の利益があったといえる。
しかしながら、その後、実施機関が公文書の特定作業に齟齬があったとして、本件不存在決定を取消し、異議申立人に対し平成17年1月5日付けで公文書部分開示決定を行ったことにより、異議申立人が取消しを求める決定は取消され、本件対象公文書について新たに部分開示決定がなされたのであるから、この時点で本件不存在決定の取消しを求める異議申立ての利益はなくなったと認められる。
よって、本件不存在決定の取消しを求める異議申立人の請求は、異議申立ての利益がなくなったことから、却下すべきである。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
異議申立人は、意見陳述申出書等において、実施機関は、「公文書の特定に齟齬がある」と主張しているが、異議申立てをされたから軌道修正したと解すべきで、悪質極まりない情報の隠蔽であり言語道断な不正行為であると主張している。
当初の公文書の特定段階で請求の対象公文書の内容について、実施機関も説明するように、異議申立人と実施機関双方の認識に相違が存在していたことは否めず、公文書の特定が不十分であったことが認められる。この点について、実施機関は、当初の公文書の特定段階において、開示請求者の意思をよく確認すべきであり、不存在決定を行うに当たっては慎重な判断をすべきであったと言わざるを得ない。実施機関は、情報公開制度への信頼を確保するためにも、条例の適切な運用に努め、開示請求者に疑念を抱かれることのないようすべきである。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
17. 2.21 | ・諮問書の受理 |
17. 2.22 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
17. 3. 9 | ・不存在理由説明書の受理 |
17. 3.11 | ・異議申立人に対して不存在理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17.12.16 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第236回審査会)
|
18. 1.31 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第238回審査会)
|
18. 2.17 | ・審議 ・答申 (第239回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。