三重県情報公開審査会 答申第227号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年10月26日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「第90回~第94回に至る三重県情報公開審査会に事務局から提出されたすべての文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年11月9日付けで行った部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
また、異議申立人は、それぞれの事案の答申案を不存在としたこと(以下 「本件不存在決定」という。)について、答申案は保有されるべきであるとして、この点についても異議があるとしている。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、次のとおりである。
(1)「(平成9年6,7,8月知事交際費支出分)知事交際費内訳書」の非開示決定に対する異議申立て事案
(2)「(平成8~9年度)クリーニング関係苦情相談」の部分開示決定に対する異議申立て事案
(3)「(平成9年度)特定の法人の産業廃棄物処理事業計画書の図面等の追加について」の部分開示決定に対する異議申立て事案
(4)「(平成9年度)特定の法人の産業廃棄物処理事業計画書に係る同意について」の部分開示決定に対する異議申立て事案
(5)「(平成9年度)業務日誌(特定の法人の監視・指導に係るものに限る)」の部分開示決定に対する異議申立て事案
(6)「平成10年6月の三重県知事の予定が分かる文書」の非開示決定に対する異議申立て事案
(7)「平成10年6月の三重県知事の日程調整表(日時のみが分かる文書)」の非開示決定に対する異議申立て事案
上記(1)~(7)の各事案の三重県情報公開審査会への提出資料うち、異議申立書(以下「本件対象公文書」という。)。
また、それぞれの事案の答申案は不存在であるため、文書は特定していない。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定及び本件不存在決定が妥当というものである。
○条例第7条第2号(個人情報)に該当
異議申立人の氏名、印影、住所及び年齢は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものであり、公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を侵害するおそれがあるため。
○本件不存在決定について
それぞれの事案の答申案については、答申が確定した後廃棄するため、不存在である。
5 異議申立ての理由
審査会が確定した答申案のとおりに最終答申がなされなかったとしても、その事実を確かめようがない。このようなことが行政としてあるはずがないから、当然、保有し、後日のチェックに耐えるようになっているはずである。
また、異議申立書の年齢を開示して個人が特定できるとする理由はない。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
なお、本件事案について、異議申立人は、異議申立書の年齢を非開示としたこと及び答申案を不存在決定としたことに異議があると認められる。
よって、当審査会は、これらの点について情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号(個人情報)に該当するとして非開示としたのは、「(平成9年6,7,8月知事交際費支出分)知事交際費内訳書」の非開示決定に対する異議申立て事案の他6件の事案に関する異議申立書の異議申立人の年齢である。
実施機関は、異議申立人の氏名、印影、住所及び年齢は、個々にではなく一体となって個人を識別し得る個人に関する情報であり、また、事業を営む個人であっても、年齢については当該事業に関する情報には当たらず、個人に関する情報であって特定の個人が識別され得る情報であることから、条例第7条第2号に該当すると判断し非開示とした。また、本号ただし書イ、ロに掲げる情報にも該当しないと主張している。
他方、異議申立人は、年齢は常識的に考えて、同一世代・年代に属する人は多数存在するから、個人が識別され得ることはあり得ない。年齢を開示して個人が特定できるとする理由はないと主張している。
しかしながら、年齢については、住所、氏名等他の情報と組み合わせることにより、特定の個人が識別され得る情報であると認められるのであり、本号本文を定めた趣旨(個人に関するプライバシー等の人権保護)からも原則として開示すべきではないと考えられる。本件対象公文書中の年齢は、公益上開示する必要性のある情報とは考えられず、本号ただし書ロの情報(人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報)に該当するとは認められない。また、法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報でもない。
よって、本件対象公文書中の年齢は、本号本文に該当し、ただし書にも該当しないことから、非開示が妥当である。
(4) 本件不存在決定の妥当性について
答申案の不存在について、異議申立人は、審査会が確定した答申案のとおりに最終答申がなされなかったとしても、その事実を確かめようがないと主張している。
実施機関は、答申案に修正等の変更があった場合、その答申案を電子データ上にて変更のうえ、上書き保存する。よって、答申案が確定した後においては、変更を行う前の答申案については、電子データとして存在しなくなる。また、印刷を行った答申案についても答申が確定した後は、廃棄処分をしたため不存在であると主張している。また、本決定に対する異議申立てが提起された以降、情報公開審査会に提出した答申案については、留意して保存しているとのことである。
確かに、異議申立人が主張するように、答申案が不存在では、答申確定後、答申案の修正箇所の有無について確認することはできない。
しかしながら、実際に開示を求められている答申案について、修正等の変更があった場合には、電子データ上にて修正等を行い上書き保存し、また、印刷を行った答申案については既に廃棄しており、存在しないという実施機関の説明には不自然な点は認められない。
したがって、実施機関が行った本件不存在決定は妥当であると言わざるを得ない。
(5) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
実施機関が情報公開審査会に提出した答申案は、行政の内部的な審議検討に関する情報ではあるが、事務事業の透明性確保の点から、残しておくことが望ましいと考えられる。
実施機関は、本決定に対する異議申立てが提起された以降、情報公開審査会に提出した答申案については、既に取扱いを変更し、留意し保存しているとのことであるが、今後とも、情報公開審査会に提出した答申案については、公文書として保存すべきである。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16.12.17 | ・諮問書の受理 |
16.12.22 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
17. 1.25 | ・非開示理由説明書の受理 |
17. 1.26 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17.11.15 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第234回審査会)
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18. 1.17 | ・審議 ・答申 (第237回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。