三重県情報公開審査会 答申第225号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年8月12日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重ごみ固形燃料発電所について今後の中長期的な維持管理費と廃炉にかかる費用の見込み」の開示請求 (以下「本請求」という。)に対し、三重県企業庁長(以下「実施機関」という。)が平成16年8月20日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
RDF貯蔵槽爆発事故後、貯蔵設備整備経費において消防法、火災予防条例などの法改正を踏まえた対応が必要となり、本決定時点では今後の中長期的な維持管理費の見通しを立てることができないことにより、公文書が存在しないため、不存在とした。
三重ごみ固形燃料発電所の廃炉にかかる費用の見込みについては、廃炉とする計画がないことにより、公文書自体が存在しないため、不存在とした。
4 異議申立て理由
事業継続もしくは縮小・廃止の判断にあたり、中長期的に想定されるそれぞれの今後の費用の見込みは重要な判断基準であると考えられるが、適当な理由を例示することで故意に算出せず不存在としており、見通しのない財政運営など常識ではあり得ない判断である。県は中長期的に想定される各費目を積算のうえ、できるだけ正しい費用の見込みを算出し県民に情報提供しなければならない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立ての主旨は、事業継続もしくは縮小・廃止の判断に不可欠な今後の中長期的な維持管理費と廃炉にかかる費用の見込みを故意に算出せず、不存在としたとのことであると認められる。
しかしながら、実施機関は、貯蔵槽爆発事故後も日々関係市町村において、ごみが発生しており、早急にその処理について対応をしていかなければならない状態であったことから、ごみ固形燃料発電所の安全な状態での運転再開を最優先していた状況にあり、施設整備をするためには、消防法、火災予防条例等の法改正を踏まえた対応等も必要であったため、本決定当時は今後の中長期的な維持管理費の見込みを立てられる状況ではなく、また、廃炉にかかる費用の見込みについては、廃炉計画そのものが想定されておらず、廃炉にかかる経費の算出が全くなかったと説明している。したがって、実施機関としては、本決定当時公文書を作成していないので不存在としたと主張している。
当審査会としては、本件事案に関して、対象公文書が不存在か否かについて判断するものであり、文書を作成していないことについての実施機関の説明に、不自然な点があるとは認められず、本請求に該当する公文書が存在しないとする実施機関の本決定は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16.11. 8 | ・諮問書の受理 |
16.11. 9 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16.11.18 | ・非開示理由説明書の受理 |
16.11.22 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17.10.14 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 (第231回審査会)
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17.11.11 | ・実施機関の補足説明 ・審議 (第233回審査会)
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17.12.16 | ・審議 ・答申 (第236回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。