三重県情報公開審査会 答申第214号
答申
1 審査会の結論
実施機関は、本件異議申立ての対象となった公文書のうち、当審査会が非開示妥当と判断した部分を除き、開示すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年8月6日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「「談合情報」により延期した広域農道フラワー道路(亀山市川崎町)のその後の措置対策について分かる全ての文書(公示以後の全ての手続を含む)及び最近の談合情報とその対処について分かる全ての文書」の公文書開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年8月20日付け農商第02-62号で通知した公文書部分開示決定(以下「本決定A」という。)及び平成16年8月20日付け北農第310号で通知した公文書部分開示決定(以下「本決定B」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、別表の「対象公文書」欄に記載したとおりである。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定A及び本決定Bが妥当というものである。
(1)条例第7条第2号(個人情報)に該当
本件対象公文書のうち、本決定Aにおける(ア)「談合情報報告書」に記載されている情報提供者の役職及び氏名及び(イ)「談合通報文書」に記載されている情報提供者の役職及び氏名並びに本決定Bにおける(ウ)「閲覧カード」に記載されている閲覧者の氏名、(エ)「談合通報文書」に記載されている情報提供者の役職及び氏名及び(オ)「入札執行の延期について(伺い)」の「別記あて先」に記載されている入札指名業者の従業員の姓は、特定の個人が直接又は間接に識別される情報であるため、条例第7条第2号に掲げる情報(個人情報)に該当する。入札指名業者の従業員の氏名を公にすることにより、会社の従業員として入札業務等に関わったに過ぎないにもかかわらず、世間から会社の担当者として談合に関わったのではないかという疑惑をいだかれ、これによって私生活の平穏が乱されるおそれがある。また、同号ただし書のいずれにも該当しないから、これらの情報を非開示とするのが妥当である。
(2)条例第7条第3号(法人情報)に該当
本件対象公文書のうち、本決定Aにおける(カ)「談合通報文書」に記載されている法人名等、本決定Bにおける(キ)「談合通報文書」に記載されている法人名等、(ク)「閲覧カード」に記載されている閲覧者の会社名、氏名及び電話番号、(ケ)「入札執行の延期について(伺い)」の「別記あて先」及び「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「別記あて先」に記載されている入札指名業者の業者名、代表者名、郵便番号、住所及び電話番号、(コ)「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「事情聴取日程表」に記載されている対象業者名並びに(サ)「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「第2案 各業者への通知文書」に記載されている対象業者名及び代表者名は、これを公にすることにより、当該法人があたかも談合に関与しているとの不名誉な疑惑を抱かれるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。事情聴取は入札参加業者の任意の協力により実施する調査であること、また、条例第7条第3号ただし書のいずれにも該当しないことから、これらの情報を非開示とするのが妥当である。
(3)条例第7条第6号(事務事業情報)に該当
本件対象公文書中の、本決定Aにおける(シ)「談合通報文書」の全部、本決定Bにおける(ス)「閲覧カード」の全部(閲覧カードの様式の部分を除く。)、(セ)「談合通報文書」の全部、(ソ)「入札執行の延期について(伺い)」の「別記あて先」及び「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「別記あて先」の全部(別記あて先の様式の部分を除く。)、(タ)「談合情報提供者からの聞き取り概要」に記載されている「4 談合情報提供者からの聞き取り概要(発言要旨)」の次行以降最終行まで、(チ)「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「事情聴取日程表」のうち聴取の順番、開始時刻、終了時刻及び対象業者名及び(ツ)「入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)」の「第2案 各業者への通知文書」の全部(実施機関は対象業者名、代表者名及び聴取日時の部分を除く共通の記載事項だけが記載されたものを、代わりに開示した。)のうち、(シ)、(セ)及び(タ)は、これを公にすることにより今後同種の情報が得られなくなるなど、事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。また、(ス)、(ソ)、(チ)及び(ツ)は、入札前にこれを公にすることにより、入札指名業者が判明してしまい、指名競争入札について不正行為を行うことが容易になり、県の行う工事の契約事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。したがって、これらの情報を非開示とするのが妥当である。
5 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から、実施機関の決定は条例の解釈運用を誤っているというものである。
「談合情報」による聴き取りその他調査活動は、犯罪捜査でないことを明示した上でこれを行っているのであるから、聴き取りに関する情報を公表しても何ら差し支えはない。
今回の「談合情報」に係る情報公開請求に対する部分非開示は、三重県知事の「談合防止」、「透明性の確保」、「説明責任」に係る「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」等の規定を如何に骨抜きにし、従来型「官製談合」を復活させるかという企図を明白に示すものであり、入札契約方式の改変に係る効果を発表できないことと合わせ、逆流の姿勢を明確に示すものと言える。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関が本号に該当するとして非開示とした情報は、上記4(1)の(ア)から(オ)に掲げる情報であり。以下のとおり分類することができる。
(a)談合の情報を実施機関に提供した者の役職及び氏名 (ア)、(イ)、(エ)
(b)閲覧カードの閲覧者の氏名 (ウ)
(c)入札を延期する通知のあて先である入札指名業者の従業員の姓 (オ)
(a)に掲げる情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。この情報は本号ただし書により非開示情報から除くとされている「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(同号ただし書イ)又は「人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(同号ただし書ロ)のいずれの情報にも該当するとは認められず、非開示が妥当である。
(b)に掲げる情報は、実施機関の説明によれば、平成16年8月4日実施機関に入札について談合の情報の提供があった工事(以下「本件工事」という。)の最初の入札に当たり、実施機関が仕様書等の基礎的な資料を入札指名業者に限らず閲覧に供した際に、実際に閲覧した業者の従業者に閲覧カードに記入させることとしている情報の一部である。閲覧カードに記載されている業者は株式会社などの営利法人であるが、営利法人の従業者の氏名は、本号本文に規定する「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得る情報」であることは明らかである。そして、この情報は、本号ただし書イ又はロに掲げる情報に該当するとは認められないため、非開示が妥当である。
(c)に掲げる情報は、平成16年8月4日に行う予定であった本件工事に係る指名競争入札(以下「当初入札」という。)の前に談合の情報が実施機関に提供されたことを受けて、実施機関がこの入札を延期した際に、当初入札の指名業者にあてて当初入札の延期を通知するために作成した文書の起案書の一部である「別記あて先」に記載されている情報である。当初入札の指名業者も株式会社などの営利法人であり、営利法人の従業員の姓は、(b)の場合と同様、本号本文の「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得る情報」であることは明らかである。そして、(c)に掲げる情報も、本号ただし書イ又はロに掲げる情報に該当するとは認められないため、非開示が妥当である。
(4)条例第7条第3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。しかしながら、法人等に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる支障から県民等の生活・環境を保護するため公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、常に公開が義務づけられることになる。
(5)条例第7条第3号(法人情報)の該当性について
実施機関が本号に該当するとして非開示とした部分は、上記4(2)の(カ)から(サ)に掲げる情報であり。以下のとおり分類することができる。
(d)実施機関に談合情報として提供された文書に記載されている談合に関わったとされる法人の名称 (カ)、(キ)
(e)閲覧カードに記載されている閲覧者の所属する会社名、閲覧者の氏名及び電話番号 (ク)
(f)当初入札の入札指名業者の業者名、代表者名、郵便番号、住所及び電話番号 (ケ)、(コ)、(サ)
(d)に掲げる情報は、本号本文に規定する「法人に関する情報」であることは明らかであるが、「公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当するかどうかが、争点になる。この点、実施機関は、これらの情報を公にすることにより、当該法人があたかも談合に関与しているとの不名誉な疑惑を抱かれるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められると説明し、これに対して、異議申立人は、世間一般では建設業者が談合をしているのは当たり前の話になっており、わざわざ県が否定するのは、県が行っている入札制度の改革と矛盾していると主張する。確かに、新聞等に談合についての記事がしばしば載る等、建設業者の談合が社会的な問題となっている。しかし、本件工事に係る指名競争入札については、本決定A及び本決定Bを行った時点で、権限のある実施機関の調査により談合が行われたと認定されていた等の事情は認められない。談合情報として提供された文書に載っている(d)に掲げる情報を開示すれば、実施機関が説明するように、記載されている法人があたかも談合に関与したかのような不名誉な疑惑を抱かれるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。したがって、(d)に掲げる情報は本号本文に該当する。また、(d)に掲げる情報は、「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(本号ただし書イ)、「違法又は不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある影響から県民等の生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(同号ただし書ロ)又は「イ又はロに掲げる情報に順ずる情報であって公益上公にすることが必要であると認められるもの」(同号ただし書ハ)のいずれにも該当するとは認められないから、非開示が妥当である。
(e)に掲げる情報は、実施機関の説明によれば、当初入札に当たり、実施機関が仕様書等の基礎的な資料を入札指名業者に限らず閲覧に供した際に、実際に閲覧した業者の従業者に閲覧カードに記入させることとしている情報である。実施機関の説明によれば、建設工事等の指名競争入札を行う場合、指名を受けた建設業者等だけでなく、それ以外の建設業者等も入札前に仕様書等の基礎的な資料を閲覧することを認めている。そして、談合が確認できなかった旨の県の発表がまだされていない本決定Bを行った時点で(e)に掲げる情報を開示すれば、実施機関が説明するように、記載されている法人があたかも談合に関与しているかのような不名誉な疑惑を抱かれるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれもあると認められ、本号本文に該当すると考えられる。また、本号ただし書イ、ロ又はハのいずれにも該当するとは認められないから、非開示が妥当である。
(f)に掲げる情報は、本件工事に関する談合の情報を受けて、本件工事の当初入札の指名業者に当初入札を延期することを通知するために実施機関により作成された公文書や、当初入札の指名業者に対して本件工事に関する談合の情報を受けて行う事情聴取に出席を求めるために実施機関により作成された公文書に記載されている情報である。(f)に掲げる情報は当初入札において指名を受けた業者名等であるが、(f)に掲げる情報についても、(e)に掲げる情報について上記で述べたのと同様に、本決定Bを行った時点で(f)に掲げる情報を開示すれば、実施機関が説明するように、記載されている法人があたかも談合に関与しているかのような不名誉な疑惑を抱かれるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれも認められ、(f)に掲げる情報は本号本文に該当する。また、本号ただし書イ、ロ又はハのいずれにも該当するとは認められないから、非開示が妥当である。
(6)条例第7条第6号(事務事業情報)の意義について
本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。
(7)条例第7条第6号(事務事業情報)の該当姓について
実施機関が本号に該当するとして非開示とした部分は、上記4(3)の(シ)から(ツ)に掲げる情報であり。以下のとおり分類することができる。
(g)実施機関に談合情報として提供された文書の全部 (シ)、(セ)
(h)閲覧カードの全部(閲覧カードの様式の部分を除く。) (ス)
(i)当初入札の全ての入札指名業者の業者名、代表者名、郵便番号、住所、電話番号、入札指名業者毎に割り振られた整理番号、入札指名業者毎の聴取の順番、開始時刻及び終了時刻 (ソ)、(チ)、(ツ)
(j)実施機関が談合の情報を提供した者から談合に関して聴き取りを行った結果を記録した文書に記載された、情報提供者と実施機関の発言の要旨と実施機関のまとめ (タ)
(g)に掲げる情報は、当初入札に関して談合の情報を他者から入手した者(以下「本件談合情報通報者」という。)が当該情報を通報するために作成して実施機関に提出した文書である。実施機関は、この文書が公にされると、県と談合の情報を提供した者との信頼関係が崩れ、今後談合の情報が県に提供されなくなり、県が様々な形で正確な情報を入手することが困難になるおそれがあると説明するが、異議申立人は、この文書は公文書開示請求をした本人が提出したものであるから、非開示にする必要はない旨を主張する。しかし、本件談合情報通報者が実施機関に提出した文書自体が公にされると、当該談合の情報の入手方法など当該文書に記載されている情報の内容などにより談合の情報の入手先や入手方法が特定され、当該談合情報の入手先がその権利利益の不当な侵害を受けるおそれ等があり、この文書が公にされると、今後、県へ談合情報を提供する者が減ったり、談合に関する同種の情報が県に任意に提供されなくなる等、県が談合に関して様々な形で正確な情報を入手することが困難になるおそれがあると認めざるを得ない。したがって、(g)に掲げる情報は本号に該当し、非開示が妥当である。
(h)に掲げる情報は、本件工事の当初入札に当たり、実施機関が仕様書等の基礎的な資料を入札指名業者に限らず閲覧に供した際に、実際に閲覧した業者の従業者に記入させることとしている文書である。実施機関の説明によれば、指名競争入札に参加する建設業者以外でも仕様書等の基礎的な資料を閲覧することはあるが、参加する業者でない者がこれらの資料を閲覧してもあまり意味がなく、閲覧した業者がその指名競争入札の指名業者であると判断されてしまうとのことであるから、(h)に掲げる文書を公にすると、入札前に指名競争入札の指名業者が判明してしまい、指名競争入札について不正行為を行うことが容易になり、県の行う工事の契約事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる。したがって、(h)に掲げる情報は本号に該当し、非開示が妥当である。
(i)に掲げる情報は、本件工事に関する談合の情報を受けて、当初入札の指名業者に当初入札を延期することを通知するために実施機関により作成された公文書や、当初入札の指名業者にあてて本件工事に関する談合の情報を受けて行う事情聴取に出席を求めるために実施機関により作成された公文書の一部である。これらの文書には、当初入札の全ての指名業者の名称や代表者名など指名業者を特定し得る情報が記載されており、(i)に掲げる文書を公にすると、入札前に指名競争入札の全ての指名業者が判明してしまい、指名競争入札について不正行為を行うことが容易になり、県の行う工事の契約事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる。したがって、(i)に掲げる情報は本号に該当し、非開示が妥当である。
(j)に掲げる情報について、実施機関は、この情報が公にされると、談合情報の提供について県への信頼が崩れ、今後談合の情報が県に提供されなくなり、県が様々な形で正確な情報を入手することが困難になると説明する。(j)に掲げる情報が記載されている部分には、本件談合情報通報者が当該談合の情報を入手した入手先や入手方法などに関する情報や、本件談合情報通報者からの聴き取りの成果についての実施機関の判断に関する情報が記載されているが、(g)に掲げる情報の場合と同様、これらの情報が公にされると、その内容により当該談合の情報の入手先や入手方法が特定され、当該談合情報の入手先がその権利利益の不当な侵害を受けるおそれ等があり、この文書が公にされると、今後、県へ談合情報を提供する者が減ったり、談合に関する同種の情報が任意に県に提供されなくなる等、県が談合に関して様々な形で正確な情報を入手することが困難になるおそれがあると認めざるを得ない。ただし、(j)に掲げる情報は、実際には、情報提供者と実施機関の発言の要旨と本件談合情報通報者からの聴き取りの成果についての実施機関の判断の二つの項に分けて記述されているが、これら二つの項のうち、情報提供者と実施機関の発言の要旨の項には「4 談合情報提供者からの聞き取り概要(発言要旨)」という項目名が表示され、実施機関はこれを開示しているのに対して、本件談合情報通報者からの聴き取りの成果についての実施機関の判断の項については、その項目名を開示しなかった点には疑義がある。この項目名だけは開示しても何ら差し支えないと考えられる。したがって、(j)に掲げる情報は、本件談合情報通報者からの聴き取りの成果についての実施機関の判断の項の項目名を除き、本号に該当し、非開示が妥当である。なお、異議申立人は、聴き取りの対象となった本件談合情報通報者は公文書開示請求をした本人であるから、非開示にする必要はない旨を主張する。しかし、条例上、公文書開示請求は何人も請求することができるとされており、開示請求者が何人であるかによって、または開示請求者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかなどの個別的事情によって、当該公文書の開示・非開示の判断を変えるべきではない。
(8)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別表
1 本決定Aで実施機関が非開示とした部分
対象公文書 | 非開示とした部分 | 非開示とした理由 |
---|---|---|
「農林水産商工部公正入札調査委員会事項書」(平成16年8月4日付け「談合情報報告書」及び情報提供者から提供された「談合通報文書」を含む。) | ・「談合情報報告書」のうち、情報提供者の役職及び氏名 (ア) | ・特定の個人が識別され得るため、条例第7条第2号(個人情報)に該当。 |
・「談合通報文書」の全部 (イ)、(カ)、(シ) |
・談合通報文書のうち、情報提供者の役職及び氏名 特定の個人が識別され得るため、条例第7条第2号(個人情報)に該当。 |
|
・談合通報文書のうち、法人名等 法人の競争上の地位その他正当な利益を害するため、条例第7条第3号(法人情報)に該当。 |
||
・談合通報文書の全部 事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
2 本決定Bで実施機関が非開示とした部分
対象公文書 | 非開示とした部分 | 非開示とした理由 |
---|---|---|
「閲覧カード」(平成15年度広域農道事業第3001-分1号北勢南部地区広域農道事業4工区その4道路工事に係るもの) | ・全部(工事番号、工事名、施行番号、入札予定年月日、閲覧年月日及び閲覧者の会社名、氏名及び電話番号が記載されている。また、工事仕様書等複写願の様式が一緒に記載されているものがある。閲覧カードの様式を代わりに開示) (ウ)、(ク)、(ス) |
・閲覧カードのうち、閲覧者の氏名 特定の個人が識別され得るため、条例第7条第2号(個人情報)に該当。 |
・閲覧カードのうち、閲覧者の会社名、氏名及び電話番号 法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第7条第3号(法人情報)に該当。 |
||
・閲覧カードの全部(閲覧カードの様式の部分を除く。) 事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
||
「談合通報文書」(談合情報提供者から提供されたもの。本決定Aの対象公文書のうち「談合通報文書」と同一のもの) | ・全部 (エ)、(キ)、(セ) | ・情報提供者の役職及び氏名 特定の個人が識別され得るため、条例第7条第2号(個人情報)に該当。 |
・法人名等 法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第7条第3号(法人情報)に該当。 |
||
・談合通報文書の全部 事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
||
入札執行の延期について(伺い)(平成16年8月4日起案) | ・「別記あて先」の全部(入札指名業者の業者名、代表者名、No.、郵便番号、住所、電話番号、従業員の姓が記載されている。様式を代わりに開示。) (オ)、(ケ)、(ソ) |
・別記あて先のうち、入札指名業者の従業員の姓 特定の個人が識別され得るため、条例第7条第2号(個人情報)に該当。 |
・別記あて先のうち、入札指名業者の業者名、代表者名、郵便番号、住所及び電話番号 法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第7条第3号(法人情報)に該当。 |
||
・別記あて先の全部(別記あて先の様式の部分を除く。) 事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
||
談合情報提供者からの聞き取り概要(平成16年8月4日実施のもの) | ・「4 談合情報提供者からの聞き取り概要(発言要旨)」の次行以降最終行まで (タ) | ・事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
入札談合情報に関する事情聴取の実施について(伺い)(平成16年8月4日起案) | ・「事情聴取日程表」のうち、聴取の順番、開始時刻、終了時刻及び対象業者名。 (コ)、(チ) ・「第2案 各業者への通知文書」の全部(対象業者名、代表者名、聴取日時などが記載されている。対象業者名、代表者名及び聴取日時の記載がないものを代わりに開示。) (サ)、(ツ) ・「別記あて先」の全部(入札指名業者の業者名、代表者名、No.、郵便番号、住所、電話番号、従業員の姓が記載されている。様式を代わりに開示。) (ケ)、(ソ) |
・事情聴取日程表のうち、対象業者名、第2案各業者への通知文書のうち、対象業者名、代表者名、別記あて先のうち、入札指名業者の業者名、代表者名、郵便番号、住所及び電話番号 法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第7条第3号(法人情報)に該当。 ・事情聴取日程表のうち、聴取の順番、開始時刻、終了時刻、対象業者名、第2案各業者への通知文書の全部(通知文書の様式の部分を除く。)及び別記あて先の全部(別記あて先の様式の部分を除く。) 事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすため、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当。 |
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
16. 9. 8 | ・諮問書の受理 |
16. 9.13 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16.10. 1 | ・非開示理由説明書の受理 |
16.10. 4 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17. 4.15 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第220回審査会)
|
17. 5.13 |
・審議
(第221回審査会) |
17. 8. 3 | ・審議 ・答申 (第227回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 平成17年6月17日辞任 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 平成17年6月20日任命 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。