三重県情報公開審査会 答申第213号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年5月21日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県公正入札調査委員会の伺書及び添付書類一式」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年6月4日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立ての対象公文書
「平成14年5月22日付け県土第03-94号の起案文書及び添付書類」及び「平成12年5月23日付け公推第142号の起案文書及び添付書類」中の三重県公正入札調査委員会委員委嘱依頼者(案)略歴書(以下「本件対象公文書」という。)
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
○条例第7条第2号(個人情報)に該当
本件対象公文書中の最終学歴(以下「本件最終学歴」という。)は個人に関する情報であり、開示することにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるため、条例第7条第2号(個人情報)に該当し、非開示とすることが至当である。
5 異議申立て理由
委員は学識経験者として任命されており、個人情報として非開示とされている情報のうち、最終学歴部分については、学識経験者であるという要件につき、判断するうえで重要な情報である。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関は、今回異議申立ての対象となっている本件最終学歴は個人に関する情報であり、開示することにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるため、個人情報に該当して非開示が妥当であると主張している。
他方、異議申立人は、委員は学識経験者となっているから、最終学歴は学識経験者であるか否か判断するうえで重要な情報であると主張している。
本件最終学歴については、個人のプライバシーに関する情報であり、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得る情報として、本号本文に該当することは明らかである。また、三重県公正入札調査委員会は、三重県が行う建設工事、測量委託業務、設計委託業務等の入札に係る談合に関する情報に対する的確な対応のため、調査審議を行うものであって、委員の任命理由として、高度な専門知識や見識を有し、または、専門領域で高い評価を得ている等、学歴よりもむしろ職歴が重視されていると見受けられ、かつ、本件対象公文書中の各委員の職歴等はすでに明らかにされていることから、当該個人の私生活上の権利利益を侵害してまで公にすべき情報であるとの公益上の理由も認められず、本号ただし書にも該当しないので本件最終学歴は非開示が妥当である。
なお、委員の任命にあたっては、職歴等に加え、最終学歴も資料に記載していると実施機関は説明しており、また、学識経験のある者として任命された委員は、地方公務員法第3条第3項の特別職に属する地方公務員に該当する。よって、仮に、本件最終学歴を「公務員等の職務に関する情報」に当たるとしたとしても、最終学歴は個人のプライバシーに関する情報であって、公にすることにより、個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあると考えられるから、本件最終学歴は、本号本文の「公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当し、非開示が妥当と認められる。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
16.10. 1 | ・諮問書の受理 |
16.10. 5 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16.11. 8 | ・非開示理由説明書の受理 |
16.11. 9 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17. 6.16 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第224回審査会)
|
17. 7.19 | ・審議 ・答申 (第226回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
※委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 (平成17年6月17日辞職) |
※委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 (平成17年6月20日任命) |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。