三重県情報公開審査会 答申第188号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行なった決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年3月23日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定土地改良区第11区換地図(現地耕地整理は昭和36年から昭和37年)」、「特定土地改良区第1区換地図(耕地整理は昭和30年代)」、「土地改良事業換地処分登記申請書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年3月31日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
また、異議申立人は、実施機関が土地改良事業換地処分登記申請書を不存在としたこと(以下「不存在決定」という。)についても、県に存在しないこと自体に疑問を感じるというものである。
3 実施機関が特定した対象公文書について
実施機関が特定した対象公文書は、「昭和48年特定土地改良区第11換地区の換地図」、「昭和59年特定土地改良区第1換地区の換地図」である。
4 実施機関の開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定及び不存在決定が妥当というものである。
(1) 換地図の正当性について
県は、本件土地改良区から認可申請のあった換地計画に添付されている換地図を正当なものとして認可を行ったものである(第11換地区については昭和48年12月14日付け、第1換地区については昭和59年12月11日付け認可)。工事後の土地を表示した換地図は、開示した換地図以外一切存在しない。
(2) 土地改良事業換地処分登記申請書について
土地改良法第55条に規定するとおり、土地改良事業換地処分登記申請は事業主体である本件土地改良区が管轄法務局に対して行うものであり、県は本件開示請求に係る情報の原因となる行政活動を行っておらず、公文書は存在しない。県は認可権者であるのみで、保管されている換地計画書には土地改良事業換地処分登記申請書は添付されていない。
5 異議申立て理由
公文書として送付された図面は、私が請求した昭和30年代に行われた耕地整理の換地図面ではなく、年度が違う図面や大幅に改ざんされた図面である。その証拠となる箇所は幾つも指摘でき、関係者承知の上である。土地改良事業換地処分登記申請書については、公文書が存在しないとして開示されなかったことについて疑問を感じる。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下に判断する。
(2) 本決定及び不存在決定の妥当性について
異議申立人は、昭和30年代に耕地整理が行われており、その時点での換地図が県に存在しないことはあり得ず、実施機関が特定した対象公文書は、異議申立人が請求した換地図とは作成年度が異なり、改ざんされた換地図であると主張している。
他方、実施機関は、本件土地改良区の第11換地区及び第1換地区の昭和30年代の換地図の請求に対し、それぞれ請求年度とは異なった昭和48年及び昭和59年の換地図を開示している。実施機関の説明によると、本件土地改良区の換地業務は昭和43年から始まっており、また、本件土地改良区が事業主体となって行っている事業であるため、県には認可後の昭和48年及び昭和59年の換地図しか存在せず、このことについて、異議申立人にあらかじめ説明したうえで、請求の対象公文書の特定につき口頭にて了解を得て本決定を行っていると主張している。
土地改良法に定める手続きにより土地改良区が事業主体となって行う土地改良事業の場合、土地改良区は、権利者会議の議決を経て決定された換地計画の認可を都道府県知事に申請し、都道府県知事はこれを受けて審査を行い適否を決定し公告縦覧したうえで、換地計画を認可することになっている。その後、土地改良区が換地処分を行い登記を登記所に申請することになっている。また、工事完了後から換地処分を行うまでの間の一時利用地の指定についても土地改良区が行うが、都道府県知事への認可申請や届出などを行うことにはなっておらず、一時利用地の指定で作成された図面は都道府県知事には提出されない。
実施機関の説明によると、異議申立人の請求にかかる耕地整理は、昭和30年に本件土地改良区営事業として開始され、昭和38年に工事が完了したものである。また、一時利用地指定が昭和35年から昭和38年頃にかけて行われたものと認められる。そして、昭和43年から順次換地計画の処理が行われ、本件土地改良区における第11換地区の換地計画が昭和48年12月14日に認可され、第1換地区の換地計画が昭和59年12月11日に認可されたものである。
したがって、仮に異議申立人が主張しているように昭和30年代に換地計画が作成されたとしても、本件土地改良区から実施機関に提出された換地図は、換地計画を認可する際に取得した換地図である「昭和48年特定土地改良区第11換地区の換地図」及び「昭和59年特定土地改良区第1換地区の換地図」しか存在しないとする実施機関の説明に不自然な点は認められない。なお、前述のように本件土地改良区が一時利用地を指定した時期があることから、異議申立人が主張している「昭和30年代の耕地整理の換地図」のような図面は本件土地改良区が一時利用地の指定のために作成した図面であると推測され、このような図面を区域内の人が持っていることは不自然なことではない。しかし、これは実施機関ではなく本件土地改良区が作成して組合員に渡したと推測される図面であるので、その図面が実施機関に存在しているはずであるとまでは言えない。
したがって、当審査会としては、実施機関の説明に不自然な点は認められず、実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
次に、土地改良区営事業による土地改良事業換地処分登記申請は、前述のとおり土地改良区が登記所に対して登記申請を行うものであり、県には土地改良事業換地処分登記申請書は提出されることにはなっていないので、制度的に県は土地改良事業換地処分登記申請書を保有しているとは言えないのであるから、本件土地改良区営事業による土地改良事業換地処分登記申請書が実施機関に存在しないとする実施機関の説明に不自然な点は認められないので、実施機関の不存在決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16. 5.13 | ・諮問書の受理 |
16. 5.18 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16. 6. 7 | ・非開示理由説明書の受理 |
16. 6.10 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16.10. 1 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 (第207回審査会)
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16.11. 5 | ・審議
(第209回審査会)
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16.12. 3 | ・審議 ・答申 (第211回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。