三重県情報公開審査会 答申第180号
答申
1 審査会の結論
実施機関は決定を取り消し、再度公文書を特定したうえで、改めて決定を行なうべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年1月7日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「公共事業の委託に関する随意契約指針、取扱基準」の開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年1月15日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取り消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
公共事業の委託に関する随意契約については、地方自治法施行令第167条の2第1項各項に該当するものについて、三重県会計規則に基づき契約の手続を行なっている。また、三重県建設工事随意契約指針及び同指針の運用方針は存在するが、請求内容が委託契約に限ってのものであったため、対象外である。
4 異議申立て理由
公共事業の委託の随意契約に関する指針の類が何もないとは考えられない。随意契約指針等は作成しているべきものであって、作成していないのはおかしい。地方自治法、同施行令をみると、各自治体で作ることになっているのではないか。作成していないと言えば開示しなくてよいのであれば、情報公開制度そのものが無意味になる。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
(2)不存在とした判断の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立ての主旨は、「公共事業の委託に関する随意契約指針、取扱基準」に関して、不存在とした点であると認められる。
実施機関の説明によれば、随意契約を行うことができる場合は、地方自治法施行令第167条の2第1項の各号に定められており、建設工事に関してはさらに、「三重県建設工事随意契約指針」及び「『三重県建設工事随意契約指針の運用方針』」が存在するが、委託に関しては同種のものは存在しない。したがって、本請求の対象公文書を公共工事の委託に関する「三重県建設工事随意契約指針」又は「『三重県建設工事随意契約指針』の運用方針」と同種の「公共工事の委託に関する指針」と特定できれば、本請求に係る公文書を作成していないことを理由に不存在とした実施機関の決定は妥当である。
しかしながら、当審査会が異議申立人から意見聴取したところ、求めていた情報としては、委託を行なう際の起案文に記載されている随意契約を行う理由や、契約の相手方の選定理由などが該当するように見受けられる。
このように、公文書の特定の段階で請求の対象公文書の内容について、異議申立人と実施機関双方の認識に相違が存在していたことは否めず、公文書の特定が不十分であったと認めざるを得ない。
したがって、実施機関は、不存在決定を取り消し、異議申立人と再度公文書の特定を行ったうえで、改めて決定を行うべきである。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
16. 3.23 | ・諮問書の受理 |
16. 3.24 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16. 4.16 | ・非開示理由説明書の受理 |
16. 4.21 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16. 8.20 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第204回審査会)
|
16. 9.17 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第205回審査会)
|
16.10. 1 | ・審議 ・答申 (第207回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。