三重県情報公開審査会 答申第176号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年12月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「「紀勢町特定地番と奥川に関する土地境界確認申請の現在までの経緯が確認出来る書」等の開示請求 (以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年2月4日付けで行った公文書開示決定(以下「開示決定」という。)及び公文書部分開示決定(以下「部分開示決定」という。)の取り消しを求めるというものである。
なお、両決定は、平成15年12月19日付け本請求に対して平成16年1月5日付けで実施機関が当初に不存在決定を行なった後、同年2月4日付けで追加で開示決定と部分開示決定を行なったもの(両決定とも平成15年11月26日付け請求の開示日に文書が特定されたもの)であり、両決定に対して異議申立人から複数の異議が提起され、現在まで開示には至っていない。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、上記決定が妥当というものである。
平成16年2月4日付け開示決定及び部分開示決定で特定された文書は、平成16年1月9日(平成15年11月26日付け請求の開示日)に異議申立人との話し合いの中で特定されたものであり、条例第14条の開示決定の期限内に決定の延期処分をすることは不可能である。仮に当初の不存在決定を取り消し、再請求を行なったとしても実質的に意味のないことであって、異議申立人が求めている情報を開示することは情報公開制度の本旨にも合致するものであるとともに、この処分により異議申立人の権利、利益が直接侵害されているわけでもないと思料される。
4 異議申立て理由
異議申立人は、以下の決定に対して異議申立を提起した。
(ア)平成16年2月4日付け開示決定
- 平成15年12月19日付け開示請求に係る決定は、既に不存在決定(平成16年1月5日付け)の処分を行なっている。一開示請求に対して、不存在、開示の相反する二処分は存在するはずがないから、本件処分の取り消しを求める。
- 旅行結果報告書が開示文書の中に含まれていないことから、旅行命令書を含む5文書以外の文書が存在しないのは、不作為であり処分の取り消しを求める。
- 開示請求日は、平成15年12月19日であり、条例第13条第1項の規定である15日以内を32日も経過し、延長の理由の記載もない。
よって、条例第12条第1項に規定に反するので処分の取り消しを求める。 - 本決定通知の備考欄に平成16年1月9日に判明したものである旨の記述があるが、判明時点より26日経過してから開示決定は可能とする規定は、条例にはなく、処分の取り消しを求める。
(イ)平成16年2月4日付け部分開示決定
- 平成15年12月19日付け開示請求に対して、開示(平成16年2月4日付け)、部分 開示(平成16年2月4日付け)の2件の処分を行なったが、事前に不存在決定(平成16年1月5日付け)を行なっている。一開示請求に対して、不存在、開示、部分 開示の相反する処分は存在する訳がないから、本件処分の取り消しを求める。
- 実施機関が特定した公文書は、抗議書の平成15年11月11日提出以前より公文書 として存在していることから、本件で特定された文書を開示しても、抗議書に対応した行為を示す公文書は開示されてなく、不作為である。
- 上記 (ア)3.の理由に同じ
- 上記 (ア)4.の理由に同じ
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 公文書の開示決定及び部分開示決定に係る追加について
実施機関は、非開示理由説明要旨に記載のとおり平成15年12月19日付け本請求に対して平成16年1月5日付けで不存在決定後、平成16年2月4日付けで追加して開示決定及び部分開示決定を行なったものである。実施機関の説明によれば、これら追加して決定を行なったのは、平成16年1月9日(平成15年11月26日付け請求の開示日)に異議申立人との話し合いの中で特定されたからである。
一方、異議申立人は、両決定は当初で不存在決定を行なっておきながら、開示決定したうえ、さらに部分開示決定を行なうなどの3つの相反する決定は存在する訳がない。条例上の15日以内を32日も経過し、決定延長理由の記載もなく、条例第12条第1項の規定に反すると主張している。また、決定通知書の備考欄に後日文書判明した旨の記載があるが、判明してから26日も経過して開示決定は可能とする規定は条例上見当たらないとも主張している。
確かに開示に至る一連の手続きを厳格に条例に照らし合わせれば、実施機関の追加決定は理由もなく延長通知もされていないなど事務手続き上の不備があるとの異議申立人の主張は、十分理解できる。
しかしながら、実施機関と異議申立人の対象公文書の特定作業が十分に協力して行なわれたとは言い切れないが、実施機関の説明を聞く限りにおいては、条例の趣旨に沿って異議申立人が知りたい情報を遅滞なく開示しようとする姿勢が見受けられる。
本件の場合、仮に当初の不存在決定を取り消し、改めて決定を行なったとしても事務処理に要する時間が経過するのみであって、異議申立人にとって結果的に必ずしも最良な方法であるとは考えにくい。また、異議申立人は、特定された公文書の中には「旅行結果報告書」はなく、「抗議書に対応した行為を示す公文書」も開示されていないから、処分の取り消しを求めているが、実施機関の説明を聞く限りにおいて文書を作成、保有していないという実施機関の説明に不自然な点があるとは認められない。
よって、異議申立人が主張するような不作為は認められず、実施機関が当初の決定を取り消さずに追加決定した事務処理に形式的な不備はあるものの、異議申立人との話し合いの中でさらに文書特定を行なうために時間を要したものであることから、当該決定を直ちに取り消すべき程度の手続き上の誤りがあったとまでは言えない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案について次のとおり意見を申し述べる。当審査会は、上記のとおり判断したものであるが、情報公開制度への信頼をより一層確保する意味においても、実施機関、開示請求者の双方が公文書の特定に互いに協力しながら、情報公開制度の運用が円滑に行なわれるよう努めるべきである。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
16. 2.20 | ・諮問書の受理 |
16. 2.23 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16. 3. 1 | ・非開示理由説明書の受理 |
16. 3. 4 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16. 3.16 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 (第195回審査会)
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16. 5.18 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第198回審査会)
|
16. 6.22 | ・審議 ・答申 (第200回審査会)
|
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授(平成16年4月20日辞職) |
※委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授(平成16年5月1日任命) |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
三重県情報公開審査会委員(平成16年6月1日以降)
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
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