三重県情報公開審査会 答申第174号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年12月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「農地法第43条第2項に基づく「知事が行った仲介」により確定している旨が確認できる書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年1月5日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取り消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
異議申立人が主張する農地法第43条第2項に基づく知事による和解の仲介は、管轄する市町村農業委員会から、農地法第43条の2第1項ただし書の規定に基づく申し出があった場合に行う旨記載されている。当該案件については、市町村農業委員会からそのような申し出の事実がなく、したがって知事による和解の仲介を行った事実もない。また、仮になんらかの仲介的な行為があったとしたら、住民サービスの考えに基づいて調整等をおこなったものと思料されるが、そのような文書もないことから、公文書不存在とした。
4 異議申立て理由
知事による和解の仲介は、県が行った河川改修工事を行った際の農地被害に対する不服申立により当時の農政部が農地法に基づき行った事案である。農地が排水できないなどの被害の発生原因は排水工事の際に起因しており、過去に提起した事案の継続であることが明らかである。実施機関は仲介の事実を認めたくないため、文書を所持しているにもかかわらず開示していないのだから、不存在であるとした処分理由は不当である。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取り消しを求めているが、異議申立ての主旨は、実施機関が農地法第43条第2項に基づく知事による和解の仲介は行われていないとして不存在とした点であると認められる。
異議申立人は、実施機関が知事による和解の仲介の事実を認めようとしないから、文書を所持していても開示していないだけで、自己の農地に関する案件で仲介はあったはずであると主張している。
しかしながら、実施機関は、農地法第43条第2項に基づく知事による和解の仲介とは、管轄する市町村農業委員会から、農地法第43条の2第1項ただし書の規定に基づく申し出があった場合に行われるものであり、当該案件については市町村農業委員会からそのような申し出の事実がない以上、同法第43条の5第1項に基づく知事による和解の仲介があった事実もないとしている。また仮に、一般的な住民サービスの一環として実施機関によるなんらかの仲介的な行為があったとしても、そのような文書は存在しないとする実施機関の主張に不自然な点は認められない。
したがって、本請求に該当する公文書が存在しないとする実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
16. 2. 6 | ・諮問書の受理 |
16. 2.12 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
16. 3. 2 | ・非開示(不存在)理由説明書の受理 |
16. 3. 4 | ・異議申立人に対して非開示(不存在)理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16. 3.16 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 (第195回審査会)
|
16. 5.18 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第198回審査会)
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16. 6.22 | ・審議 ・答申 (第200回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授(平成16年4月20日辞職) |
※委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授(平成16年5月1日任命) |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。
三重県情報公開審査会委員(平成16年6月1日以降)
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
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