三重県情報公開審査会 答申第166号
答申
1 審査会の結論
本件異議申立ての対象となった公文書を実施機関が作成、保有していない以上、実施機関が行った不存在決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年8月29日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「RDF爆発事故での県、特定法人、桑名消防の協議に関する記録」の開示請求 (以下「本請求」という。)に対し、三重県企業庁長(以下「実施機関」という。)が平成15年9月19日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
8月14日には、三重県企業庁、特定法人及び桑名市消防本部の職員が話し合いを行ったが、4名の負傷者を生じた事故直後であったので、現場は混乱しており、記録は作成されていない。
4 異議申立て理由
実施機関は8月14日の最初のRDF貯蔵タンク爆発から、一貫して桑名消防、特定法人との重要な協議記録を全く残していないのは、再三批判を受けている「情報隠し」と思われても仕方がなく、メモ一つ存在しないという実施機関の説明も不自然である。三重県企業庁と特定法人との業務委託契約書の第1条第5項及びRDF焼却・発電施設整備事業契約書の第1章第1条第3項には「この契約書に定める請求、通知、報告、申出、承諾及び解除は、書面により行わなければならない。」と書面主義を規定している。契約書に沿う形ならば、緊急時での口頭のやりとりでも、常識的に後で内容を書面化すべきであったはずであり、実施機関は契約書の内容を遵守しているとはいえない。また、実施機関は、三重県情報公開条例第41条第2項(情報提供施策の推進)及び第44条(公文書の管理)を遵守しているとはいえない。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立ての主旨は、実施機関がRDF爆発事故後に行った特定法人、桑名消防との三者協議について、公文書として協議記録を作成しておらず、不存在とした点であると認められる。
確かに、異議申立人の主張するように、RDF爆発事故についての本件対象公文書を作成、保有していないことは、県の施設において発生した重大な事故に対する県民への説明責任の観点からも望ましいものであるとは言えない。実施機関として、少なくとも要旨等をまとめた当該協議記録を作成して保存するなど、記録に基づき説明できる状況にすべきであると考えられる。しかしながら、実施機関は、本請求に対して、平成15年8月14日の爆発事故直後のみ県、特定法人、桑名消防の三者において協議の場を持っていることは事実であるが、正式な会議としては設けられておらず、事故直後の混乱、またそれ以降、企業庁長が現場で直接指揮していたこともあり、口頭にて報告を行っていたとして、実施機関として一切の協議記録を作成していないので不存在決定を行ったと説明している。
当審査会としては、本件事案に関して、本件対象公文書が不存在か否かについて判断するものであり、文書を作成、保有していないことについての実施機関の説明にも、不自然な点があるとは認められず、本請求に該当する公文書が存在しないとする実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15.10. 6 | ・諮問書の受理 |
15.10. 9 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15.10.15 | ・非開示理由説明書の受理 |
15.10.17 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16. 1. 9 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第190回審査会)
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16. 2.26 | ・審議 ・答申 (第193回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。