三重県情報公開審査会 答申第164号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年10月6日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県RDF施設・発電施設整備事業 技術提案図書 外2件」の開示請求に対し、三重県企業庁長(以下「実施機関」という。)が平成15年10月14日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、「三重県RDF施設・発電施設整備事業 技術提案図書」(以下「本件対象公文書」という。)である。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書中の非開示部分は条例第48条(適用除外)に該当し、非開示が妥当というものである。
条例第48条(適用除外)に該当
本件対象公文書のコピーは存在するものの、原本は警察に押収されており、そのコピーについても原本と同様に刑事訴訟法の規定する押収物と判断すべきであるから、条例第48条に定める適用除外文書に該当するとして非開示決定とした。
5 異議申立ての理由
異議申立人は、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈・運用を誤っているというものである。
実施機関は、本件対象公文書は押収品であると説明するが、コピーは存在しているのだからコピーを開示すべきである。また、押収の効力は原本には及んでいるがコピーには及ばないから、情報公開条例の解釈を誤った違法な非開示決定であり、取り消されるべきである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第48条(適用除外)の意義について
本条は、行政機関情報公開法が適用除外としている公文書について、条例の適用除外とすることを定めたものである。行政機関情報公開法の適用を除外することが定められているのは、刑事訴訟法に規定する訴訟関係書類及び押収物や漁業法に規定する免許漁業原簿等、個別の法令で自己完結的な閲覧・複写の制度が認められるものは当該制度に委ねるという趣旨であり、いわば制度の棲み分けを図ったものである。
(3) 条例第48条(適用除外)の該当性について
実施機関は、本件対象公文書のコピーについても刑事訴訟法に規定する押収物であるとして条例第48条に規定する適用除外文書に該当し、非開示が妥当であると主張している。一方、異議申立人は、押収の効力は当該公文書の原本のみであり、コピーには及ばないから開示すべきであると主張する。
確かに、原本のみならずそのコピーまで同条例の適用除外文書に該当するとなると、ひとたび刑事事件となれば、社会的関心が非常に高い事柄でも全く開示できないことがあり得るという点では、問題があると言えなくはない。
しかしながら、本件対象公文書のコピーは、押収された原本と同一の内容を有するものであり、刑事訴訟法第53条の2で規定する「訴訟に関する書類及び押収物」としての性質を失わないと判断せざるを得ない。したがって、コピーも原本と同視し得るものと認められるから、同法に規定する押収物として条例第48条に該当し、非開示とした実施機関の決定に誤りがあったと言うことはできない。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15.10.28 | ・諮問書の受理 |
15.10.30 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15.11. 5 | ・非開示理由説明書の受理 |
15.11. 5 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15.12.16 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第189回審査会)
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16. 1.27 | ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第191回審査会)
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16. 2.24 | ・審議 ・答申 (第192回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。