三重県情報公開審査会 答申第163号
答申
1 審査会の結論
実施機関は、審査会が妥当と判断した部分を除き、不存在決定を取消すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年8月27日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定土地改良区にかかる従前地土地評価書・換地計画書・等位別価格表・土地評価表」の開示請求 (以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年9月10日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
県営ほ場整備事業の換地処分等に関する業務は、三重県換地業務委託要領により、地元の事情に精通した特定土地改良区へ委託している。当地区の換地は、事業採択時から現在までの間、事業の進捗に合わせて換地区別に毎年度業務委託契約を締結して進めてきた。
本請求のあった文書のうち換地計画書(第2、第3換地区)、等位別価格表(第1、第2、第3換地区)は、平成15年9月10日時点において土地改良区において作成途中で あり、県へ提出されておらず存在しない。しかし、精査したところ、従前地土地評価書 (第2、第3換地区)及び土地評価表(第2、第3換地区)については、換地計画書を 作成するために県から当該土地改良区へ貸し出していた事が判明したことから、開示を 行なう予定である。
4 異議申立て理由
実施機関は、「請求された文書は、現在、作成されていないため」と回答しているが、権利者集会が開催されるなかで、当該公文書が不存在であるはずがなく、信用し難いものである。実施機関は、当該情報を所持しているものの、これを開示しない疑いがあり、不存在の解釈を誤った違法な非開示決定であるから取り消されるべきである。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立ての主旨は、権利者集会が開催されるなかで、当該公文書が不存在であるはずがなく、信用し難いものである点であると認められる。
実施機関の説明によれば、本請求のあった文書の全てが、平成15年9月10日時点において作成されていないとして本決定を行なったが、あらためて精査を行なったところ、そのうち、従前地土地評価書(第2、第3換地区)と土地評価表(第2、第3換地区)については、換地計画書を作成するために県から業務委託先である当該土地改良区へ貸し出していた事が判明したことから後日開示予定であるとしている。しかしながら、上記のような対応を本決定後のいかなる時期にでも認めてしまえば、決定そのものへの信頼性を欠くこととなる。実施機関は、誤った決定を行なった場合には、速やかに自ら是正すべきであることから、本決定を取り消し、改めて開示・非開示等の決定を行う必要がある。本件事案について実施機関の本決定に際しての事務処理は不適切であったと言わざるを得ない。
なお、権利者集会が開催されるなかで当該公文書が不存在であるはずがない、と異議申立人は主張するものの、換地計画書(第2、第3換地区)、等位別価格表(第1、第2、第3換地区)については、本決定時点において、文書を作成、保有していないという実施機関の説明に不自然な点があるとは認められず、これらの部分について該当する公文書が存在しないとする実施機関の主張は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案については実施機関の事務処理に不適切な点が見受けられることから、当審査会として次のとおり意見を申し述べる。本件対象公文書の一部については、当該土地改良区に貸し出していたことが後日判明し、開示を行う予定である旨、実施機関は非開示理由説明書において説明しているものの、当審査会における実施機関の補足説明の時点までに異議申立人に対して開示された事実は認められなかった。その後、本答申の日までの間に、実施機関は本件異議申立事案となった本決定を取り消したうえで、存在する文書について改めて開示等の決定を行ったようである。当審査会は、本決定の時点における妥当性について上記のとおり判断したものであるが、これらの一連の事務処理は、公文書の適正な管理、条例の適正な運用という観点から、不適切であったと言わざるを得ない。情報公開制度への信頼を確保するためにも、公文書の適正管理、条例の適正な運用を強く求めるものである。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15.10.24 | ・諮問書の受理 |
15.10.24 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15.11.19 | ・非開示理由説明書の受理 |
15.11.21 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16. 1.27 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第191回審査会)
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16. 2.24 | ・審議 ・答申 (第192回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。