三重県情報公開審査会 答申第152号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非開示決定(存否を明らかにしない決定)は妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、審査請求人が平成15年4月9日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「名阪国道の特定地点付近に設置のオービス設置時の設置場所選定過程が分かるもの(事故多発地点等の関係が)」及び「名阪国道の特定地点に設置のオービス及び中央装置の設置工事時の工事竣工書類一式(契約書類、打合せ簿、写真、取扱説明書等)」の開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」 という。)が平成15年4月21日付けで行った非開示決定(存否を明らかにしない決定。以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定が妥当というものである。
(1) 条例第7条第4号(公共安全情報)に該当
オービスと称する速度違反自動取締装置の設置場所は、これを公にすることにより、以後の道路交通上の安全、交通取締り及び道路交通法違反捜査に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、公表していない。
仮にこれを公にすれば、同装置設置地点以外の場所では法を無視した暴走行為等速度違反が横行し、交通の安全を著しく損なうこととなるほか、常習的に速度超過違反行為を敢行しようとする者等による検挙逃れのための同装置に対する破壊行為、その他同装置の正常な作動を妨害する行為が行われるおそれがあり、道路交通法違反被疑者の検挙、すなわち、悪質危険運転者の排除に重大な支障が生じると認められるため、非開示が妥当と判断した。
(2) 条例第11条(公文書の存否に関する情報)に該当
速度違反自動取締装置の設置場所は、条例第7条第4号の公共安全情報に該当する非開示情報であり、同装置の設置場所を特定した本件開示請求に係る公文書については、その存否を答えるだけで、条例第7条第4号に該当する非開示情報を開示することとなるため、公文書の存否を明らかにしなかったものである。
4 審査請求の理由
審査請求人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
公文書開示請求書に設置場所の特定地点を明記しており、実施機関の非開示理由である「速度違反自動取締装置の設置場所が明らかとなり」は、請求内容に基づく決定と合致しないことから条例の解釈を誤った違法な処分であり、取り消されるべきである。
5 審査会の判断
本件開示請求について、実施機関は、条例第7条第4号(公共安全情報)及び同条例11条(公文書の存否に関する情報)に該当するとの理由により本決定が妥当であると主張している。
そこで、審査請求人が審査を請求した情報について判断する。
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。
条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第11条(公文書の存否に関する情報)の意義について
条例第11条は、開示請求に対して、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公文書の存否を明らかにしないで、当該公文書の開示をしないことができる旨規定している。
(3) 条例第11条(公文書の存否に関する情報)の該当性について
本開示請求は、名阪国道における特定地点に設置されたオービスと称する速度違反自動取締装置の設置場所選定過程に関する資料及び設置工事時の工事竣工書類一式の開示を求めるものであるが、開示を求める範囲を特定するためとはいえ、速度違反自動取締装置の設置場所(地点)を具体的に示した開示請求であるため、実施機関が同文書の存否を明らかにしてしまうと、請求人の示した具体的な設置場所が結果的に明らかとなってしまい、実施機関の主張するような道路交通上の安全、交通取締り及び道路交通法違反捜査に支障を来すおそれがないとはいえない。すなわち、同装置の設置場所自体が、条例第7条第4号(公共安全情報)に該当して非開示とすべき情報である旨の実施機関の主張には理由があり、本件開示請求に対して公文書の存否を明らかにすることが非開示情報を開示することとなることが認められる。なお、実施機関も設置路線等でオービスを特定していれば、設置場所まで明らかになることはないため、存否応答拒否処分をすることはなかった旨主張している。
よって、実施機関の本決定は妥当であると判断する。
(4) 結論
よって主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙「審査会の処理経過」のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15. 5.19 | ・ 諮問書受理 |
15. 5.26 | ・ 実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15. 6.20 | ・ 非開示理由説明書受理 |
15. 6.23 | ・ 審査請求人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15. 9.11 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の非開示理由説明の聴取 ・ 審議 (第182回審査会)
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15.10.10 | ・ 審議 ・ 答申 (第184回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。