三重県情報公開審査会 答申第149号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年2月4日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県知事名義の持ち株関係資料一式」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年2月17日付けで行った開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示(不存在)理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、以下に説明する文書(以下「本件対象公文書」という。)については保有していないため非開示(不存在)が妥当というものである。
営業報告書については、県が株主であることから株主総会の開催時期に送付されてきているが、財産管理書類の保存年限が3年としていることから、開示した以前の営業報告書はすでに廃棄処分しており不存在である。
定款、株主総会議事録、理事会議事録については、当該法人の書類である。三重県は株主ではあるが、定款の変更があった場合や毎年の株主総会、理事会の終了後に、そうした文書の送付を求めていないので、保有しておらず不存在である。
4 異議申立ての理由
三重県が、公的資金である県費の出資先の基金や公社、第3セクター、会社等について関与している事業については、県として出資当初の書類や、定款などは永久保存して保有しているべきである。また、近年の株主総会や、理事会・取締役会等の議事録についても、県に保管されているべきであるから、これら関係文書を改めて取得したうえで開示決定すべきである。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立書の内容や当審査会へ提出された意見書などから総合的に判断すると、異議申立ての主旨は、実施機関が既に開示した公文書の中には、本来保有しておくべきであると異議申立人が考える当該法人の定款等が含まれておらず、不存在とした点であると認められる。
確かに、異議申立人が主張するように、公金を出資している法人についての本件対象公文書を取得・保有していないことは、当該法人の経営状態などを客観的に説明できる資料がないということであり、適正な出資であるかどうかの確認も極めて困難な状態であると言わざるを得ない。そういった意味では、実施機関が当該法人に対して、本件対象公文書を提出させたうえで、開示決定をすべきとする異議申立人の主張も理解できる。
しかしながら、公文書の処理期限にしたがって廃棄し、または、文書自体を取得していないとする実施機関の説明から保有していないことは明らかであり、公文書の特定についても誤りがあったとは言えないことから、実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 審査会からの提言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、異議申立人は情報公開制度における公文書の管理について主張しており、文書管理については当審査会が意見を述べる立場にはないが、情報公開制度と文書管理は表裏一体の関係にあることから、次のとおり提言する。
本件事案に関して、実施機関は営業報告書について保存期間を3年としていることが認められるが、公費を出資している法人に係る文書であり、説明責任を果たすうえで、より重要な文書として位置づけ保存期間を再検討すべきではないかと思料する。また、株主総会や理事会の議事録はともかくとして、公費を出資している法人の定款を保有していないことは、説明責任の観点からも望ましいものであるとは言えない。
今後実施機関にあってはこの趣旨を十分踏まえたうえで、情報公開制度への信頼を確保するためにも、公文書を適正に取得・保存されるよう努められたい。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15. 3. 4 | ・諮問書の受理 |
15. 3. 5 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
15. 3.26 | ・非開示理由説明書の受理 ・異議申立人に対して非開示(不存在)理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15. 7. 8 | ・異議申立人からの意見書の受理 |
15. 7.11 | ・書面審理 ・実施機関の非開示(不存在)理由説明の聴取 ・審議 (第178回審査会)
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15. 8. 8 | ・審議
(第180回審査会)
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15. 9.11 | ・審議 ・答申 (第182回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。