三重県情報公開審査会 答申第141号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った公文書開示決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年8月12日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成14年5月31日におこなわれた中勢沿岸流域下水道事業推進協議会に関する・協議概要・資料・事前レクの概要」の開示請求 (以下「本請求」という。)に対して、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成14年8月26日付けで行った開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
当該協議会は、関係市町の首長、議会議長、県関係機関の代表により構成されるもので、毎年定例的に開催され、協議会の基本方針(事業報告、予算関係書など)を審議しており、今回は、協議会の解散について諮られた。その後中勢沿岸流域下水道事業(志登茂川処理区)についての進捗状況の説明を資料に基づき行ったが、特筆すべき議論がなかったため、説明が行われた事実を記録したものであり、異議申立人が主張するような意図的な情報隠しを行ったものではない。
4 異議申立て理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
実施機関は「昨年度は、意見が事業推進のうえで重要だったので残したが、今年度は議論がなかったため」と主張しているが、”意見”はあったと推測される。昨年度の議事記録が文書化されておれば今年もそうあるべきで、一切記録を残さなくてよい委員会ならば、開催する必要がない。文書化しないことで情報公開の対象としないというやり方になれば、意図的な情報隠しといえ、これは情報公開制度の根本をゆさぶることである。文書化に関して、条例や要綱等で明確にしておかなければ徹底した情報公開などありえない。
5 審査会の判断
異議申立人は実施機関の当該開示決定の取消しを求めていることから、本決定の妥当性について、以下のとおり判断する。
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った開示決定の取消しを求めているが、異議申立書の内容や当審査会における意見陳述などから総合的に判断すると、異議申立ての主旨は、実施機関が開示した公文書には、本来記録されるべきであると異議申立人が考える内容の記載がなく、意図的に情報隠しを行っていると思われる点に対するものであると認められる。
そこで、当審査会が実際に開示された公文書を見分したところ、確かに公文書として保管すべき議事記録としては、結論のみが記載されているに過ぎず、実際の議事内容を伺い知ることができる程度に整備されているとは言えない。実施機関は、特筆すべき議論がなかったと説明しているが、当該公文書の記載内容はあまりにも簡素であると言わざるを得ず、異議申立人が疑問を抱くことは理解できるところである。
しかしながら、実施機関が他に文書を作成している事実も認められず、公文書の特定についても誤りがあったとは言えないことから、実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの提言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、異議申立人は情報公開制度において対象となる公文書のあり方について主張しているので、当審査会から次のとおり提言する。 本件事案に関しては、実施機関が作成した公文書が、十分な内容であるとは言い難く、情報公開制度が真に実効あるものたらしめるためには、公文書が適正に作成されることが必要である。その意味では異議申立人の主張する行政情報の文書化については理由のあるところであり、今後実施機関もこの趣旨を十分踏まえたうえで、情報公開制度への信頼を確保するためにも、公文書を適正に作成されるよう努められたい。
さらに、本件事案のように県が主宰している会議で市町村長等の幹部により構成されるようなものについては、県の審議会等が原則公開で開催されている運用を参考にするなど、県民への一層の情報公開に努められるよう要望する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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14.11. 5 | ・諮問書の受理 |
14.11.11 | ・実施機関に対して開示理由説明書の提出依頼 |
14.12.17 | ・開示理由説明書の受理 |
14.12.17 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15. 2.21 | ・書面審理 ・実施機関の開示理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第169回審査会)
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15. 3.18 | ・審議 ・答申 (第171回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。