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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第133号

答申

1 審査会の結論

本件異議申立ての対象となった公文書のうち、「平成14年度高等学校入学志願者学力検査個人別・出身学校別一覧表」の本人に関する部分の「調査書諸記録の100%」欄及び「学力検査等得点合計の80%」欄を除く部分並びに「本人の学力検査答案」の記述式問題以外の部分は開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年3月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「津市内特定県立高校における入学試験の合否基準及び受検生の入学試験答案」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が「平成14年度高等学校入学志願者学力検査個人別・出身学校別一覧表」(以下「本件対象公文書①」という。)及び「異議申立人の子(以下「本人」という。)の学力検査答案」(以下「本件対象公文書②」という。)を特定したうえで、平成14年4月5日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の非開示理由説明要旨

実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書①は条例第7条第6号(事務事業情報)に、本件対象公文書②は第7号第6号(事務事業情報)及び第8条第1項第2号に、それぞれ該当し、非開示が妥当というものである。

(1)条例第7条第6号の該当性について

本件対象公文書①は、当該高校の入学者選抜において、単に調査書を点数化し、学力検査得点と合算して合否判定を行っていないこと、及び学力検査の成績だけで選抜せず、総合的な観点から最終の合否判定を行っていることを示す文書である。結果として、学力検査の得点の低い者が合格することもあれば、得点の高い者が不合格となることもありうるが、この点について一部の保護者には納得が得られない場合も考えられ、本件対象公文書を開示することにより無用の混乱を生じさせるおそれがある。

また、当該高校の合格者の最高得点及び最低得点が明らかになることから、学力検査得点と合否判定の関係のみが注目され、入学者選抜に対する誤解を生じ、本県がこれまで進めてきた選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化などの入学者選抜改善への取り組みが阻害されるとともに、学校間のランク付けや序列化を促進するおそれがある。

さらに、推薦入学、特色化選抜など、様々な選抜方法を取り入れ実施しているが、その一部である一般選抜について、いわゆる「合格基準」なるものが公開されることにより学校全体についての正しい評価が得られないことになる。

本件対象公文書②は、入学選抜の学力検査における本人の答案用紙の解答の正誤並びに得点であるため、本号でいう「試験に係る事務」に関する情報と認められる。

本件対象公文書②の解答等は本人に関する情報であるが、同時に当該解答に対する判定・評価といった事務に関する情報が含まれており、両者は分離できない一体のものとして捉える必要がある。

したがって、当該解答を開示することは、学校ごとに採点基準を策定する際の独自性や裁量の余地を損なうとともに、今後、学力検査問題が知識のみを問う設問となる等、様々な観点から受検者の能力・適性を評価するという本来の学力検査の意義を損なうおそれがある。さらには、各学校ごとに採点基準が異なることから、評価者には裁量的要素が入らざるを得ず、開示を前提とした評価はその裁量性を著しく制限することとなる。

(2)条例第8条第1項第2号の該当性について

本件対象公文書②は、入学選抜の学力検査における本人の答案用紙の解答の正誤並びに得点であるため、本号に規定する「個人の判定等に関する情報」であると認められる。

学力検査問題は、個人の知識、思考、判断や問題解決の過程等を評価するために、多岐選択方式ではなく解答を記述させる方式を採用し、その内容に応じて部分点が与えられる問題を含んでおり、その採点は、各高等学校ごとに統一した基準により行われている。記述式問題のように部分点が与えられる問題については、必ずしも機械的に評価できる性質のものではなく、学校による裁量的要素を含んだ判定とならざるを得ないものであるから、受検生が学校側とは異なる判断を持ち、受検生と学校側の間で見解の相違等が生じることが容易に想像できる。

また、裁量を伴う判定結果について不満を抱いた受検生に対し、逐一その理解と納得を得るような説明をすることも現実問題として極めて困難である。

このように、受検生から採点に対する疑義が呈され、合否判定をめぐる誤解を生み、それが他の受検生や保護者等へも波及し、県民の入学者選抜に対する不信感を拡大するような可能性も否定できない。そのような事態ともなれば、今後の入学者選抜事務に係る事務事業そのものの適正な遂行に著しい支障が生じる可能性がある。よって、部分点が与えられる採点箇所は、本号に該当すると認められると判断した。

なお、部分点が与えられる問題以外についても、仮にこれを開示することとなると、簡易開示により各教科別の得点を開示していること、及び正答例や配点の記載もある採点基準を公表していることから、教科別得点から部分点が与えられる採点箇所以外の得点を差し引くことにより部分点が判明することとなるため、全部非開示とした。

4 異議申立ての理由

異議申立人は、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈・運用を誤っているというものである。

(1)本件対象公文書①について

受検生が最も知りたいのは合格ラインである。

自己の得点と合格ラインを知ることにより、不合格の程度や合格した場合の自分の位置を知ることができ、一層の励みとなる。

なお、私が求め、又多くの人が知りたいと思うのは「このライン」であって、県教委が特定する受検生の分布表の開示を求めているのではない。

その意味で実施機関が本件対象公文書①を公文書として特定し、受検番号順の一覧表であることから個人が特定され得る情報ということになり、個人に関するプライバシー等の人権保護の観点を取り上げ、条例第7条第6号に該当するという説明は無用な理由付けである。

さらに、これにより最高得点、最低得点が明らかになると指摘しているが、上記説明と同様、開示する公文書のスレ違いから生ずる問題で、これを求めているわけはなく無用な理由付けである。

また、合格基準を示すことにより『選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化などの入学者選抜改善への取組みが阻害される』などとは全く的はずれな理由付けと思われるし、『学校間のランク付けや序列化を促進する恐れがある」という理由付けも、どこに理念があるのかわからない説明である。

合格ラインの高さは、その高校に、その年集まった生徒の学力の高さを示すことにはなるが、それは不変のものではないし、そのことだけが絶対価値でもない。各学校の教師は魅力ある学校づくりを通じ、消費者である受検生に自校をアピールすべきである。そのことにより、集まる生徒の質が変わり「序列」が変化する。その緊張感こそ教育の質の向上につながり、ひいては子どもの成長につながる。

ましてや、『一般選抜について、いわゆる合格基準なるものが公開されることにより、学校全体についての正しい評価が得られなくなる』とするに至っては、情報非開示の壁の中で学校を保護し学校間競争をなくそうとするもので、「教育界の護送船団方式」を今後も墨守すると言っているようなもので全く説得力がない。

(2)本件対象公文書②について

実施機関は本件対象公文書②の開示に対して、条例第7条第6号及び第8条第1項第2号に該当するとして非開示とした。

その理由は、答案を開示することにより、記述式問題の採点内容が判明し『受検生と学校側の間で見解の相違が生じることが容易に想像できる。また裁量を伴なう判定結果について不満を抱いた受検生に対し、逐一その理解と納得を得るような説明をすることも現実問題として困難である。』『記述式問題では、各学校ごとに採点基準が異なることから評価者には裁量的要素を含んだ評価が入らざるを得ず、開示を前提とした評価はその裁量を著しく制限することとなる。』という点に尽きる。

ここには「記述式問題をどのように採点しようともそれは各学校独自の採点基準に基づくものであり、批判を許さない」という思想がある。

問題は学問であり、答が学問的な正当性を有しているかという判断であり、行政の自由意思はない。

時として解答の字が誤字のごとく見えるが、全体の解答状況から正答とするといった細かな救済的採点という裁量行為があろうことは容易に想像できるが、正しい解答を誤りとするがごとき裁量はなく、「見解の相違」などではすまされない。

かような論争が「裁量権を著しく制限する」と評価されるとしたら、すべての批判が許されないのと同じとなり、結果は教育行政サイドの独断を許すこととなる。(行政も誤りを犯す)

また、子どもたちの発達状況をより詳しく知るために、記述式問題が出されると思われるが、これを採点する側が採点の効率という視点から画一的な答案(正答例)のみを正答としたいと考えるならば、教育現場の自己否定としか思えない。

答案が『個人の判定等に関する情報』であることに争いはないが、「個人」とは「自分」のことであり、自分が自分の答案の開示を受けることがどうして『高校入学者選抜の事務の適正な遂行を著しく困難にする』のであろうか。

要は、受検生から異議を言われると、受検事務に混乱が生ずるといいたいのであろうが、一体誰のための受検事務と考えているのであろうか。

行政情報は、主権者のものであって、行政サイドの独占物ではない。従って行政は、主権者に対する説明責任を果すためにも情報を開示する責務があり、教育行政情報も例外ではない。

行政が適切に機能する最大のシステムが情報開示であることも知らねばならない。 主権者の開示請求は権利として行っているのであって「相談」ではない。開示の結果、誤りがあると認識する時は、訂正を求めるのは開示請求とともに保障されるべき自己情報の訂正請求権の行使であって、これを「混乱」というのは、主権者に対して説明責任を負うべき行政の思い上がりと知るべきである。

5 審査会の判断

(1)基本的な考え方について

条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。

当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2)条例第7条第6号(事務事業情報)の意義について

本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。

(3)条例第7条第6号(事務事業情報)の該当性について

ア 本件対象公文書①について
 実施機関は、「津市内特定県立高等学校の合格基準」に関する文書について、本件対象公文書①を特定したうえで本決定をし、本県の高等学校入学者選抜においては、単に出身中学校からの調査書の得点及び入学志願者学力検査の結果のみで判定するのではなく、それらを含めた資料を総合的に判断して決定しており、異議申立人が主張するような合格ラインなるものは存在しない、と説明している。
 実施機関が作成した「三重県立高等学校入学者選抜実施要項」によると、選抜方法について、『(1)調査書の第3学年における「各教科の学習の記録」及び全学年の「特別活動の記録」等により、およそ募集定員に当たる数の者を選ぶ。(2)志願者全員について、学力検査等得点により、募集定員のおよそ80%に当たる者を高点者から順次選ぶ。ただし、その中から、各高等学校の特色、性格に応じて必要な教科の成績が著しく下位にある者等を、保留者として除外することができる。(3)同一人について上記(1)及び(2)の両方に含まれている者を合格者とする。(4)上記(3)による合格者の数と募集定員との差のうち、その2分の1に相当する人数は、上記(1)に選ばれた者の中から、学力検査等の高点者から順次選び、これを合格者とする。(5)上記(3)及び(4)による合格者の合計数と募集定員との差に当たる者の選抜に当たっては、上記保留者を含めた残りの入学志願者の中から、調査書、学力検査及びその他選抜のための資料を総合的に判断して合格者を決定する。』と規定しており、本県の高等学校入学者選抜においては単に調査書を点数化し、学力検査得点と合算してその得点の高い者から順に定員に達するまで合格者を決定しているわけではないので合格ラインなるものは存在しない、との実施機関の説明も理解できないわけではない。
 一方、異議申立人は意見書の中で、学力検査得点と調査書(内申書)得点の合算が合格ラインとして示されることとなるのであり、求めているのは具体的な受検生の分布状況ではない、と主張している。
 そこで当審査会がインカメラ審理により見分したところ、本件対象公文書①は「受験番号」、「出身中学校名」、「性別」、「学力検査の各教科得点及び小計」、「第3学年の各教科の学習の記録の評定及び小計」、「調査書諸記録の100%」、「学力検査等得点合計の80%」、「合否」、「第二志望合格」、「1年の評定合計」、「2年の評定合計」の個人の評価情報が項目別に記載された一覧表であり、異議申立人が求めている「合格ライン」を明確に示す公文書であるとは言い難い。
 しかしながら、得点のみで合否判定を行うのではなく総合的に判断して合格者を決定しているとしても、合格者の中で学力検査の得点の最低点が何点であったかは、本件対象公文書①から結果として判明することは事実であるため、当審査会は、本件対象公文書①を異議申立人が求める「合格ライン」を示す文書として、本号の該当性を以下のとおり判断する。
 実施機関は最低合格得点を開示することによって、「学力検査得点と合否判定の関係のみが注目され、入学者選抜に対する誤解を生じ、本県がこれまで進めてきた選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化などの入学者選抜改善への取組みが阻害されるとともに、学校間のランク付けや序列化を促進するおそれがある。」と主張する。
 一方、異議申立人は、「合格ラインの高さは、その高校にその年集まった生徒の学力の高さを示すこととなるが、それは不変のものではないし、そのことだけが絶対価値でもない。各学校の教師は魅力ある学校作りを通じ、消費者である受検生の自校をアピールすべきである。そのことにより、集まる生徒の質が変わり「序列」が変化する。その緊張感こそ教育の向上につながり、ひいては子どもの成長につながる。」と主張する。
 確かに、合格者中の学力検査の最低点は不変のものではないが、結果的に当該高校に合格した受検生の学力基準を示すものとなる。仮に他の者が他の県立高等学校の合格者最低点を開示請求すれば、条例は請求者の別によって公開決定の内容に差異が生じるものではなく、同様に公開されるため、これらの情報を統合することによって、すべての県立高等学校の学力検査得点における順列が可能となることは事実である。学歴社会の偏重による過度の受験競争から生れる風潮により、学力検査得点と合否判定の関係のみに注目し、ランク下位となった学校のマイナスイメージを固定化するおそれがあることは否定できない。
 実施機関が説明するとおり、総合的に判断して合否判定をしているにもかかわらず、結果として得られる合格者中の最低得点が、あたかも当該高校合格のための「合格ライン」であるとして開示され、また他の学校と単純に比較されランク付けされることによって、受験競争を助長し、選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化など実施機関が進める入学者選抜改善という事務事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる。
 よって、本件対象公文書①は本号に該当し非開示が妥当である。
 ただし、本件対象公文書①中に記載された本人の情報のうち、既に本人が知り得る部分は開示すべきであり、後述する。

イ 本件対象公文書②について
 実施機関は、本件対象公文書②は本号に該当し非開示が妥当であると主張しているが、本件事案の場合、異議申立人は本人の情報のみを請求しているのであり、条例第8条第1項ただし書、すなわち公文書の本人開示の例外に該当するか否かを判断すべきであり、後述する。

(4)条例第8条の意義について

本条は、本来、個人情報保護条例で対処すべきであるが、暫定的なものとして、公文書開示制度において、開示できない個人情報を、本人に限り、開示請求できることとしたものである。しかし、個人の指導、診断、判定、評価等に関する情報を開示することにより、指導、診断、判定、評価等の過程やそれらの基準を知らせることになり、評価者等が正確な評価等ができなくなったり、本人に悪影響を及ぼすなどの結果をもたらす場合には、非開示にできることを規定している。

本条第2号は、事務という点では条例第7条第6号(事務事業情報)と同じではあるが、指導、診断等の事務の性格に着目して同号とは別に定められたものである。

なお、本件異議申立ては、三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号)の施行(平成14年10月1日)に伴い改正された条例の施行前になされた処分にかかるものであるため、改正前の本条に即して判断する。

(5)条例第8条の該当性について

ア 本件対象公文書①について
 本件対象公文書①については、前述のとおり条例第7条第6号(事務事業情報)に該当し、非開示が妥当であると判断するが、本条の規定の趣旨から本人の情報についてまで非開示とすることは妥当であると言えない。本件対象公文書①に記載されている「受験番号」、「出身中学校名」、「性別」、「学力検査の各教科得点及び小計」、「第3学年の各教科の学習の記録の評定及び小計」、「調査書諸記録の100%」、「学力検査等得点合計の80%」、「合否」、「第二志望合格」、「1年の評定合計」、「2年の評定合計」のうち、「調査書諸記録の100%」及び「学力検査等得点合計の80%」欄を除く部分は、本人が知り得る情報であり、これらの情報を非開示にすべき理由はないと言わざるを得ない。
 なお、「調査書諸記録の100%」及び「学力検査等得点合計の80%」欄については、前述の「三重県立高等学校入学者選抜実施要項」のとおり、個々の受検生について、(1)調査書の第3学年における「各教科の学習の記録」及び全学年の「特別活動の記録」等により、およそ募集定員に当たる数の者に該当しているか否か、並びに(2)学力検査等得点により、募集定員のおよそ80%に当たる者に該当しているか否か、を示したものである。実施機関が説明するとおり、総合的に判断して合否判定を行っている以上、「調査書諸記録の100%」あるいは「学力検査等得点合計の80%」に個々の受検生が該当しているか否かは、実施機関が行う入学者選抜という事務においては、いわば最終合否判定に至るまでの中途の段階で付された情報である。また、これらの情報は、個々の受検生に関する判定、評価に関する情報である。最終的な合否判定の中途の段階である本件情報を開示することによって、無用な混乱を与えるおそれがあることは否定できない。したがって、入学選抜事務の適正な遂行を著しく困難にすると認められるため、本欄については非開示が妥当である。

イ 本件対象公文書②(本人の学力検査答案)について
a. 条例第8条第1項第1号の該当性について
 実施機関は、本件対象公文書②は条例第7条第6号(事務事業情報)に該当し非開示が妥当であると主張している。本件事案の場合、異議申立人は本人の情報のみを請求しているため、当審査会の判断に実質的な差異を生じるものではないが、「本人の情報ではあるが、条例第7条各号に該当する場合は本人の情報であっても非開示とすることができる」という趣旨で規定されている本条第1項第1号に該当するか否かという観点から判断することが適当であり、以下のとおり判断する。
 本件対象公文書②を開示することは、学校ごとの採点基準を公開することとなり、記述式問題を採用する以上、学校の裁量的要素を含んだ判定にならざるを得ない、と実施機関は主張している。また、裁量を伴なう採点基準について、不満を抱いた請求者に対して逐一その理解と納得を得られるような説明をすることは現実問題として極めて困難であるとともに、公開を前提にした評価はその裁量性を著しく制限し、本県が求めている学力検査の意義を損なう、とあわせて主張している。
 記述式問題を採用する場合、学校の裁量的要素を含んだ判定とならざるを得ないとともに、多量の答案用紙を極めて限られた期間に判定しなければならないといった高校入試の特殊性があることも事実である。裁量的要素を含んだ判定に対して疑義を抱く受検生が生じ得ることは理解に難くないが、これを公開することによって見解の相違が生じても有益な結論が得られないことも十分に予想されるところである。その結果として、採点基準の裁量性が狭められ、多岐選択式のみでは判定できない受検生の知識、思考、判断や問題解決の過程等を評価しようとする目的で出題されている記述式問題の意義そのものが損なわれるおそれがある、という実施機関の考え方も理解し得るところである。
 したがって、本件対象公文書②のうち、記述式問題にかかる部分については、本号に該当し、非開示とすることもやむを得ないと言わざる得ない。なお、記述式問題以外の部分は、非開示とすべき積極的な理由はない。
b.条例第8条第1項第2号の該当性
 本件対象公文書②は本人の答案用紙の解答の正誤並びに得点であるため本号に規定する「個人の判定、評価に関する情報」と認められる。
 前述のとおり、本件対象公文書②のうち、記述式問題にかかる部分については本号の該当性を判断するまでもなく非開示が妥当である。また、それ以外の部分については、当該事務の適正な遂行を著しく困難にするとは認められず、開示すべきである。

(6) 結論

よって、主文のとおり答申する。

6 審査会からの提言

当審査会の結論は以上のとおりであるが、県民の関心の高い高等学校の入試については、透明性が高い方がもとよりのぞましい。異議申立人が主張するとおり、行政は主権者に対する説明責任を果すためにも情報を開示する責務がある。よって、審査会として次のとおり意見を述べる。

本件事案に関しては、単に「裁量的要素があるから非開示である」旨の考え方を実施機関が有しているとの印象を強く受けたが、一般に情報公開度が高いといわれている三重県の実施機関とは思えず残念である。裁量性がある場合には、その基準を公開することが当然の考え方となっている。むしろ裁量性が高い事務を担当するものは、その分、説明責任が十分に果せるどうか通常以上に注意を払い、工夫を怠るべきではなかろう。

当審査会としては、様々な観点から慎重に審議し、主文のとおりの結論に達したところであるが、前述の実施機関の主張に対して、あえて苦言を呈し、三重県の入試制度が公開に耐え得るものとなり、県民の信頼を得るものとなることを強く切望する。

7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、別紙2審査会の処理経過のとおりである。

別紙1

審査会の処理経過

年月日 処理内容
14. 6.07 ・諮問書の受理
14. 6.11 ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
14. 9.09 ・非開示理由説明書の受理
14. 9.18 ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
14.11.12 ・書面審理
・実施機関の非開示理由説明の聴取
・異議申立人の意見陳述
(第162回審査会)
14.12. 3 ・書面審理
・実施機関の非開示理由説明の聴取
(第164回審査会)
15. 1.28 ・実施機関の非開示理由説明の聴取
・審議
(第167回審査会)
15. 2.18 ・審議
・答申
(第168回審査会)

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
※会長 岡本 祐次 三重短期大学法経科教授
※会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
※委員 渡辺 澄子 松阪大学短期大学部教授
※委員 山口 志保 三重短期大学法経科助教授
委員 早川 忠宏 弁護士
委員 丸山 康人 四日市大学総合政策学部教授
委員 豊島 明子 三重大学人文学部助教授

なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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