三重県情報公開審査会 答申第124号
答申
1 審査会の結論
本件異議申立ての対象となった公文書を実施機関が作成、管理していない以上、実施機関が行った不存在決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成13年12月18日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「鉄道富州原第8号踏切工事について」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成13年12月27日付けで行った不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の不存在理由説明要旨
開示請求された内容は、昨年開示した公文書である委託工事費精算書の明細内容に関する疑問への説明要求であるが、明細書の記載内容や数値の説明を明記した公文書は工事委託先からも提出されておらず、また実施機関においても作成していないので存在しない。
また、開示した公文書の内容に対する説明責任についても、昨年から開示請求に対し誠意をもって説明し、説明できない不明な点については工事委託先である法人に対して 問い合わせて確認もおこなったが、開示した公文書が平成4年度に作成されたものであり、関係書類については既に保存年限が経過し廃棄しており詳細について説明できなかった。
そのため、異議申立人は、詳細な説明を求めるべく毎日のように実施機関へ電話で問 い合わせをしたが、実施機関としては質問を整理して質問状という形で文書を出してもらえないかと依頼したところ、今回の開示請求が出され、やむなく不存在決定をおこなった。
4 異議申立ての理由
昨年、開示請求した「富州原第8号踏切工事について」で、委託工事明細書を入手し 内容について実施機関に質問したが十分な説明がなされなかった。
そこで、情報公開の目的である説明責任を求めるべき、再度明細書の一部「伸縮継目」の疑問点について開示請求をおこなったが、実施機関は公文書は存在しないとの理由に より納得いく説明もおこなわず、職務怠慢というべきである。
この委託工事については、公金の不当、違法な支出があると考え、実施機関は工事委託先である法人に対して今回請求した内容について事情聴取し、文書をもって回答されることを要望する。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)「鉄道富州原第8号踏切工事について」の不存在について
今回の開示請求は、委託工事に不正、詐欺行為があり、公金の不当、違法な支出があると考えられる。昨年に開示された委託工事費精算書と図面の内容について実施機関から十分な説明が得られなかったため、再度、質問形式による開示請求を行ったが、実施機関は工事委託先である法人から十分な聴取調査も行わず,公文書は不存在であるとしたことは説明責任を果たしておらず職務怠慢である、と異議申立人は主張している。
実施機関は、請求内容に明記した公文書については、委託先である法人から昨年既に異議申立人に開示した委託工事費精算書と図面以外は提出されておらず、また実施機関としても作成していないので不存在決定を行ったと説明している。請求内容の文面から判断すると、既に開示している委託工事精算書と図面を再度対象公文書として特定し、開示する方法も考えられるが、工事委託先である法人に対して実施機関から十分な聴き取り調査も行わず公文書を不存在としたことは説明責任を果たしていない、という異議申立人の主張を勘案すると、明らかにそれ以上の情報を求めているものであると判断される。
本件事案のような委託工事の場合、事前に委託先である法人と協定を締結し、その中で工事内容や費用負担等提出書類を明記したうえで委託を行う。協定上、委託工事費精算書と図面以外の文書を委託先に求めることはなく、提出されている以上の文書を実施機関が作成、又は保有していないという実施機関の主張にも不自然な点はなく、異議申立人の請求を認めることはできない。
また、実施機関が、不明な点について法人に対して問い合わせたところ、既に関係書類が保存年限を経過し廃棄したので詳細についてはわからないとの返答であったとのことである。確かに請求の趣旨に対しての説明としては十分であるとは言えないが、委託工事に関する現行制度上、実施機関の説明には限界があると言わざるを得ない。
以上のことから、当該請求内容に該当する公文書が存在しないとする実施機関の本決定は妥当である。
(3)結論
よって主文のとおり答申する。
6 審査会からの提言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案の場合、委託工事に対する公金が適正に支出されたか否かを知りたいという異議申立人の請求の趣旨を十分に満足させるような公文書が存在しないことについて、審査会として次のとおり意見を述べる。
委託工事に関して実施機関が委託先から入手する情報は、協定書に基づく委託先からの委託工事精算書と図面のみであり、公金支出のチェックを行うには必ずしも十分といえない場合が考えられる。
本件事案の場合、確かに、工事の専門性、特殊性を考慮したうえで委託しているのであり、実施機関としてどこまで検査できるかという問題はあるにしろ、公金を支出している以上、県民に対する説明責任は実施機関が負うべきである。
県民と情報を共有し、もって県民の県政に対する理解と信頼を確保せんとする条例の趣旨に鑑み、委託工事に関する制度、検査体制の見直しなどを通じ、県民に対する説明責任を十分に果たされることを要望する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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14. 2. 6 | ・諮問書の受理 |
14. 2. 8 | ・実施機関に対して不存在理由説明書の提出依頼 |
14. 2.28 | ・不存在理由説明書の受理 |
14. 3. 1 | ・異議申立人に対して不存在理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼 |
14. 6. 4 | ・書面審理 ・実施機関の不存在理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第154回審査会)
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14. 7. 2 | ・審議
(第156回審査会)
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14. 8. 6 | ・審議
(第158回審査会)
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14.10. 1 | ・審議 ・答申 (第160回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。