三重県情報公開審査会 答申第121号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、審査請求人が平成14年1月8日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「津市阿漕駅周辺の交差点に関する情報」の開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成14年1月21日付けで行った部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
審査請求人は、当初の開示請求において、「津市阿漕駅周辺の交差点に関する情報」として、津市大倉交差点の信号周期、改善措置等に関する情報を求めている。それに対して、実施機関 は、信号機台帳及び交通安全施設研究グループ会議に関する公文書等(以下、「本件対象公文書」という。)を特定し、本決定を行った。
4 実施機関の部分開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、条例第7条第2号(個人情報)に該当し、部分開示が妥当というものである。
本件対象公文書に記載された「警部補以下の階級にある警察官の氏名(当該警察官の印影を含む。)」は、条例第7条第2号(個人情報)に該当する。
条例第7条第2号の規定により保護されるべき情報とは、
- 個人の事業に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報及び公務員の職務に関する情報を除く。)であって特定の個人が識別されうるもの
- 事業を営む個人の当該事業に関する情報及び公務員の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれのあるもの
- 知事が規則で定める職にある公務員の氏名
のいずれかに該当する情報であり、また、上記3の「知事が規則で定める職」とは、「三重県 情報公開条例第7条第2号の規定に基づき知事が定める職に関する規則(平成13年三重県規 則第12号)によれば、「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる警察の職員の職及びこれに相当する警察の職員の職」とされている。
そして本件対象公文書には、「警部補以下の階級にある警察官の氏名」が記載されており、これは、上記の3に該当し、非開示とした。
5 審査請求の理由
審査請求人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
- 警察官の氏名は、個人情報ではなく、公職にある職員の氏名であるから三重県情報公開条例の解釈を誤った違法な処分であり、取り消されるべきである。
- 警察の特殊な分野は別にして、市民警察の分野、特に交通警察の分野に関しては、情報を市民に提供して、市民からの情報や提案を得て、交通の安全を図っていくということが必要で、積極的に公開した上で、市民が提言できるような形にすべきである。
6 審査会の判断
本件対象公文書について、実施機関は、条例第7条第2号(個人情報)に該当するので部分開示が妥当であると主張している。そこで、審査請求人が審査を請求した情報について判断する。
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
本号は、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨の規定であり、プライバシー保護のための非開示条項として、個人の識別が可能な情報か否かによると定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、個人識別情報を原則非開示とした上で、個人の権利利益を侵害せず非開示にする必要のないもの、及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものをただし書で例外的事項として列挙する個人識別情報型を採用している。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関は、「知事が規則で定める職にある公務員の氏名に該当する」としているのに対して、審査請求人は、「およそ公職にある職員の氏名は開示すべきである。」としている。
確かに、警察官は、公務員であり、公務員の職務に関する情報を原則開示としている本号の規定によれば、開示すべきものと判断されなくもない。一方、警察官の氏名の取扱いについては、「知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名」を例外的に非開示とできる旨規定されている。
「三重県情報公開条例第7条第2号の規定に基づき知事が定める職に関する規則」(平成13三重県規則第12号)によると、「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる警察職員の職及びこれに相当する警察職員の職」と定められている。本件対象公文書に記載された警察官の氏名及び印影は、いずれも警部補以下の階級にある警察官のものであり、「知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名」に該当するため、実施機関が本号(個人情報)に該当するとして非開示とした決定について誤りがあったとは認められない。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙「審査会の処理経過」のとおりである。
別紙
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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14. 2. 1 | ・ 諮問書受理 |
14. 2. 4 | ・ 実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
14. 2.22 | ・ 非開示理由説明書受理 |
14. 2.25 | ・ 審査請求人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出 依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
14. 3. 4 | ・ 口頭意見陳述申出書の受理 |
14. 5.21 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の非開示理由説明の聴取 ・ 審査請求人の口頭意見陳述 ・ 審議 (第153回審査会)
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14. 6.18 | ・ 審議
(第155回審査会)
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14. 7.16 | ・ 審議 ・ 答申 (第157回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。