三重県情報公開審査会 答申第99号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成12年12月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「共同募金会を通じて日本自転車振興会補助申請を行った際、県の推薦状をいただけなかった件について、指導課である長寿社会課の根拠となるべき判断資料及び匿名投書に関する厚生省よりの調査依頼内容についての公文書」との開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成12年12月27日付けで行った不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の不存在理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、該当する文書が存在せず、不存在決定が妥当というものである。
- 開示請求内容のうち「共同募金会を通じて日本自転車振興会補助申請を行った際、県の推薦状をいただけなかった件について、 指導課である長寿社会課の根拠となるべき判断資料」については、共同募金会から県からの推薦状(副申書)を作成する依頼を受けておらず、当該文書は存在しないことから、公文書不存在の決定を行ったものである。
- また、開示請求内容のうち「匿名投書に関する厚生省よりの調査依頼内容についての公文書」については、厚生省老人福祉局企画課介護保険指導室から電話で連絡があり、今後の対応について口頭により同省から調査依頼があった。したがって、公文書は 存在しないことから、公文書不存在の決定を行ったものである。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
- 共同募金会を通じた日本自転車振興会への補助申請について、県の推薦状を申請したところ、もらえなかったとのことである。この件について理由を知りたいときは、県長寿社会課長へ問い合わせるよう共同募金会から指示があった。県長寿社会課長に問い合わせたところ、県としても複数の中より推薦すべきところを選択しなければならず、推薦できなかったと説明があった。
- 県の指導監査の際、県担当職員より、厚生省へも県に来たものと同じ匿名の投書が来ているので、調査するよう依頼があったとの発言があった。同じ文書との発言は、厚生省の文書を見ない限り、発言できるはずがない。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)「共同募金会を通じて日本自転車振興会補助申請を行った際、県の推薦状をいただけなかった件について、指導課で ある長寿社会課の根拠となるべき判断資料」の不存在決定について
日本自転車振興会への補助申請については、社会福祉法人三重県共同募金会(以下「共同募金会」という。)が窓口となり、各法人からの申請を受付け、共同募金会内に設置される公益補助事業推薦委員会において推薦法人を選定する。県の関係各課は、共同募金会からの依頼を受け、選定された法人について知事名で副申書を作成することとなっているものであり、推薦の依頼を受けなかった法人について副申書を作成していない以上、開示請求の対象となった推薦状(副申書)は存在しない、と実施機関は説明している。
なお、異議申立人は、推薦状そのものの開示を求めたのではなく、補助申請が採択されなかった県の判断基準を求めているのであって、「推薦状は存在しない」とした実施機関の本決定は、請求の趣旨を誤って解釈したものであると言わざるを得ない。そこで、当審査会としては、以下、当該補助申請に対する採択、不採択の判断基準を示す文書の存否について検討する。
異議申立人が、日本自転車振興会への補助申請が不採択となった理由を共同募金会に問い合わせたところ、共同募金会からは県の担当課に問い合わせるよう指示があったと説明している。このような経緯を勘案すると、異議申立人が実施機関に何らかの公文書が存在してしかるべきであると判断したことは理解できる。
しかし、実施機関から聴き取り調査したところ、当該事務は共同募金会の固有の事務であり、共同募金会が主催する公益補助事業推薦委員会に委員として県関係課室長が出席し、県としての参考意見を述べるに過ぎず、あくまでも採択・不採択の決定権限は共同募金会にあるということである。そうであるとすると、決定権限のない県には採択・不採択の判断基準を示す公文書がないのは当然であり、何ら不自然なことではない。
よって、当該事務は共同募金会の固有の事務であるから県には公文書がないとする実施機関の主張は、妥当である。
(3)「匿名投書に関する厚生省よりの調査依頼内容についての公文書」の不存在決定について
実施機関は、厚生省から調査依頼があったのは電話によるものであり、公文書による依頼はなかったと説明している。厚生省から調査依頼があったと実施機関が説明している以上、何らかの公文書が存在してしかるべきである、との異議申立人の主張は理解できなくはないが、実施機関及び厚生省の双方に到達しているものが、電話での会話によってお互いに同内容の投書であると確認するということも、あり得ることであり、特に不自然ということはない。実施機関が、厚生省からの依頼は電話によるものであり、公文書は存在しないと主張する以上、当審査会としては、実施機関の主張を認めざるを得ない。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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13. 1.15 | ・諮問書受理 |
13. 1.16 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
13. 2. 5 | ・非開示理由説明書受理 |
13. 2. 6 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
13. 3.23 | ・書面審理 ・実施機関の非開示理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第128回審査会)
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13. 4.20 | ・審議 ・実施機関の補足説明聴取 (第129回審査会)
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13. 5.18 | ・審議
(第130回審査会)
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13. 6. 1 | ・審議 ・答申 (第132回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。