三重県情報公開審査会 答申第97号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成12年8月7日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「土木常任委員会及び協議会の会議録(平成2年5月22日外52件)」の開示請求に対し、三重県議会議長(以下「実施機関」という。)が平成12年8月17日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
今回の異議申立ての対象となった公文書(以下「本件対象公文書」という。)は平成2年5月22日から平成9年3月14日までに開催された土木常任委員会及び協議会の会議録であり、平成8年度以前に実施機関が作成し、保管しているものである。
なお、平成9年度以降に作成された同会議録(平成9年5月16日外12件)については既に開示決定を行っており、今回の異議申立ての対象とはなっていない。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件請求は条例附則第2項に規定する公文書に該当しないため、非開示が妥当というものである。
開示請求のあった公文書(以下「本件公文書」という。)については、文書は存在するが、条例附則第2項により、議会が保有している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書について適用することとしており、本件対象公文書については条例の適用対象外にあたるため本決定をしたものである。
また、本決定は非開示ではあるが、異議申立人から開示請求があった際に情報公開条例の規定等を説明しており、議会としての説明責任は十分果たしてきたところである。
なお、異議申立人は、傍聴制度により公開している会議の会議録を非開示とする条例には瑕疵があり、平成8年度以前の会議録も開示すべきと主張するが、条例では第7条に規定する非開示情報が記録されていない限り、実施機関の保管する文書の開示を求めており、平成9年度以降の文書については傍聴制度のない会議の会議録も開示しているところである。
さらに、異議申立人は、本会議会議録が条例の適用以前から公開されていることを理由として、委員会会議録も同様に公開されなければならないと主張するが、法令等に特段の規定がある場合を除き、実施機関が保管する文書のうち、条例が対象としている文書を開示することには合理性がある。
本会議会議録は、三重県議会会議規則(昭和31年12月27日三重県議会規則第1号)第93条の規定により「議員及び関係機関に配布する。」ことが義務づけられており、過去から速記の方法により正確な記録を行い、印刷物として作成し、配布、公開してきたものであり、したがって、議会の保管するその他の文書まで過去に遡って成り立ちの異なる本会議会議録と同時に取り扱わねばならないとする異議申立人の主張には合理性がない。
5 異議申立ての理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
(1) 法解釈の正誤だけを捉えれば非開示とする判断は間違っていないかもしれない。
しかし、傍聴制度による公開との整合性を考えれば条例自体に瑕疵があると言わざるを得ない。説明責任を全うするという観点からも条例施行前に作成した文書を如何なる文書であっても非開示とするのは、合理的でないのは明らかである。
(2) 委員会及び協議会の会議録等は別の制度を設けてでも公開しなければならない。県議会本会議の議事録は条例の施行に関係なく以前から広く一般に公開されている。その付託機関である委員会及び協議会の会議録を殊更隠し立てする必要などない。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例第1条によると、本条例の目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進する、というものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 条例附則第2項の適用について
条例上、議会が保有している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書について適用することとしており、今回の請求については適用範囲外にあたる、と実施機関は主張している。
本件対象公文書は、平成2年5月22日から平成9年3月14日に開催された土木常任委員会及び協議会の会議録であり、条例附則第2項が、「議会が保有している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書」に限定している以上、条例上の対象公文書の範囲外であると言わざるを得ない。
よって、 実施機関の本決定は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会からの提言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、審査会として次のとおり提言する。
本件事案の場合、対象となる公文書は条例附則に規定する対象公文書の適用範囲外であることは明らかであり、形式的に条例を解釈すれば、実施機関の本決定に法的な瑕疵があったとは認められない。
条例上 、議会が保有する公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得したものについて適用していることに関しては、立法政策上の判断であり、当審査会として意見を述べる立場にない。しかし、条例上の対象公文書ではない公文書の開示請求があった場合であっても、単に形式的に条例上非開示決定を行うにとどまるのではなく、公文書の内容や性格、重要性に応じて情報提供の可否を判断すべきであると考える。
特に、今回の対象公文書は、議会としての機能を果たす上で本会議と並んで重要な位置付けをもつ委員会の会議録である。また、委員会は、平成9年6月以降は一般傍聴を認めており、それ以前も委員長の許可があれば傍聴が可能であった。
これらのことから、委員会の会議録について、県民がその内容を知りたいと考えることは当然であり、単に条例上対象外の平成8年度以前のものであるという理由だけで非公開とすることは合理的でないと言わざるを得ない。本会議の会議録は、別の制度を設け過去のものから公表しているという例もあり、委員会の会議録についても、保存年限内にあり、議会が現に保有しているのであれば、平成8年度以前のものであっても可能な限り積極的に情報提供し、真に「開かれた議会」を目指されることを強く希望する。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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12.11. 1 | ・諮問書受理 |
12.11. 1 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
12.11.14 | ・非開示説明書受理 |
12.11.17 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
13. 3.13 | ・書面審理 ・実施機関の非開示理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第127回審査会)
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13. 5.22 | ・審議 ・答申 (第131回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。