三重県情報公開審査会 答申第52号
答申
1 審査会の結論
「発注標準基礎資料 事業所別業種別一覧(伊勢土木事務所管内の業者、業種:土木及び建築)」について、実施機関が三重県情報公開条例第8条第3号に該当するとして非開示としたことは妥当ではなく、全て開示すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成9年10月13日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「発注標準基礎資料 事業所別業種別一覧(伊勢土木事務所管内の業者、業種:土木及び建築)」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成9年10月21日付けで行った非開示決定の取消しを求めるというものである。
なお、本件対象公文書は、経営事項審査の総合評点を企業別に高低順に記載した内容を発注者用の資料として作成された一覧表である。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を非開示決定にしたというものである。
・条例第8条第3号(国等協力関係情報)の該当性について
本件対象公文書の総合評点を含む経営事項審査結果は、建設業法第27条の27第1項によれば、「建設大臣又は都道府県知事は、経営事項審査を行ったときは、遅滞なく、当該経営事項審査に係る建設業者に対して、当該経営事項審査の結果を通知しなければならない。」と規定されているが、一般開示は規定されていない。
このため、経営事項審査結果は、建設省や他の都道府県においても公表されておらず、三重県のみが開示することは、国や他の都道府県との協力関係が著しく損なわれると認められるから、条例第8条第3号(国等協力関係情報)に該当し、非開示としたものである。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書等で述べ、また、審査会で口頭意見陳述している異議申立ての主たる理由は次のように要約される。
- 私企業相互間で行う取引について、行政目的で以て収集した資料については、公開しないこととされることに理由はあるが、公共事業を行うに当たって工事能力、財務能力を保証する資料は、法律等により個人のプライバシーとして保護されるべきものと定められたものを除いては、公開されるべきである。
- 発注標準基礎資料の作成の基礎となったデータは、財務能力、工事履歴、技術者の雇用状況、工事能力から成っており、公にされるべきものと想定する。
例えば、法人の財務内容は、商法により新聞広告をする他、債権者に閲覧させなければならない等、公開が保障されている。
また、同データには、事業主の私人としてのプライバシーは含まれていないと想定する。 - 建設業法第27条の27第1項で一般開示は規定していないとあるが、規定していない事項について、県が行った行政行為について情報を公開するのが情報公開制度である。
- 国や他の都道府県との協力関係が損なわれるとあるが、三重県が提供を受けた国又は他府県の行政情報の公表については、国又は他府県の同意が必要と考えるのは妥当であるが、三重県がその行政行為として収集した資料を公表するについては、協力関係が著しく損なわれると認められる根拠が希薄である。
以上の理由で以て、本件対象公文書は、条例第8条第3号(国等協力関係情報)に該当しないと解するのが妥当である。
5 審査会の判断
本件対象公文書について、実施機関は、条例第8条第3号(国等協力関係情報)に該当するので非開示にできると主張している。そこで、以下について判断する。
(1)基本的な考え方について
条例の制定目的は、県民の公文書開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。
条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示項目を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)条例第8条第3号(国等協力関係情報)の該当性について
本号は、県の行政が、国等との密接な関係のもとに執行されていることから、県と国等との協力関係、信頼関係を維持するため、開示することにより、これらの関係を著しく損なうと認められる情報は、非開示とできることを定めたものである。
本件対象公文書は、伊勢土木事務所管轄内の土木及び建築業者の経営事項審査の総合評点を高低順に記載し、ランク付けしたものであって、行政として公表はしていないが、業界内あるいは外でも周知の事実の情報である。
また、実施機関は、非開示決定の理由の中で、「経営事項審査の内容については、建設省から非開示との指示があり、」としているが、国(建設省)から文書による明示の指示はないということである。
このような情報を開示しても、国等との協力関係、信頼関係を著しく損なうとはいい難く、よって条例第8条第3号の該当性は認められないし、このような情報は国民に吟味・判断してもらう材料として公開していくべきである。
(3)結論
以上のとおり、本件対象公文書を、実施機関が非開示としたことは妥当ではなく、全て開示すべきである。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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9.10.24 | ・諮問書受理 |
9.11.12 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
9.12.3 | ・非開示理由説明書受理 |
9.12.11 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
9.12.24 | ・口頭意見陳述申出書及び意見書受理 |
10.8.7 | ・書面審理 ・実施機関の非開示理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述の聴取 ・審議 (第87回審査会)
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10.8.19 | ・審議 ・答申 (第88回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
会長職務代理者 | 曽和 俊文 | 関西学院大学法学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学女子短期大学部教授 |
委員 | 室木 徹亮 | 弁護士 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |