三重県情報公開審査会 答申第100号
答申
1 審査会の結論
財団法人三重県建設技術センターが行った非開示決定は妥当である。
2 異議申出の趣旨
異議申出の趣旨は、異議申出人が平成12年11月30日付けで財団法人三重県建設技術センター情報公開実施要綱(以下「要綱」という。)に基づき行った「平成9年5月27日名張市長との契約(仮称)名張市斎場建設予定地物件移転補償額算出業務委託(名張市滝之原地内)契約金額金11,728,500円にかかる成果品中A棟~J棟の各損失補償金額及び合計金額」の開示請求に対し、財団法人三重県建設技術センター理事長(以下「センター」という。)が平成12年12月5日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件対象文書について
本決定で異議申出の対象となった文書(以下「本件対象文書」という。)は、斎場建設予定地物件移転補償額を算出するため名張市がセンターと委託契約を締結し、それを受けてセンターが平成9年度に作成した成果品である。
4 センターの非開示理由説明要旨
センターの主張を総合すると、次の理由により、本件請求は要綱附則第2項に規定する文書に該当しないため、非開示が妥当というものである。
開示請求のあった本件対象文書については文書は存在するが、これはセンターが名張市との委託契約により作成した成果品で、その帰属は市にある。成果品は作成した後発注者に送付しており、センターとしては現在預かっているものにすぎない。開示請求時点では、センターが市から借りていた状態であり、センターに本件対象文書が事実存在したため本決定をしたものであるが、そもそもセンターの保有する文書ではない。
また、要綱附則第2項で「この要綱は、平成10年度以降に作成され、又は取得した対象文書について適用する。」と明記しており、本件対象文書については要綱の適用対象外にあたるため本決定をしたものである。
また、本決定は非開示ではあるが、異議申出人から開示請求があり、その後要綱の規定を説明したり、本件対象文書以外の情報は開示しており、センターとしての説明責任は十分果たしてきたところである。
5 異議申出の理由
異議申出人の主張を総合すると、次に掲げる理由からセンターの決定は、要綱の解釈運用を誤っているというものである。
(1) 要綱附則第2項は経過措置を定めているもので、「この要綱は、平成10年度以降に作成され、又は取得した対象文書について適用する。」としているだけで、適用しないとは規定していない。
(2) 平成10年度以前に作成された文書については、この要綱を適用して判断するものではなく、センターが情報公開制度の原則に照らし、裁量により判断していいものと思料される。
(3) 開示するか否かにあたっては、むしろ同要綱第7条に該当するかの判断により決定すべきであり、開示することによってセンター並びに名張市の当事者としての地位を不当に害するおそれや、センターが実施する事業に関してその正当な利害を害する おそれも生じないものと考えられる。
(4) 本件の開示請求は、契約書や成果品の全ての公開を求めているのではなく、積算によって得られた結果の「合計金額」を求めたものであり、これを公開することにより契約当事者の利害が損なわれるとは到底考えられないものである。その内容が個人情報であったとしても、個人と識別される部分を伏せて部分的に公開すべきである。
(5) センターは、同要綱第3条に規定する県民の知る権利を尊重するような解釈と運用をされるべきである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
要綱第1条によると、本要綱は、三重県情報公開条例(平成11年10月15日三重県条例第42号)第47条第1項の規定に基づき、センターの文書の開示に関し必要な事項を定めること等により、センターの保有する情報の一層の公開を図り、もってセンターの諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、公正なセンター運営の推進に資することを目的としているものである。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、要綱を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2)要綱上の本件対象文書の該当性について
開示請求のあった本件対象文書については、文書は存在するが、その帰属は発注者である名張市にあり、センターとしては現在預かっているものに過ぎず、そもそもセンターの保有する文書ではない、とセンターは主張している。
しかしながら、センターが市町村など地方公共団体等から委託を受けて業務を行っていることを考えると、センター自身が作成した文書(本件では成果品)は、当該センターの文書として判断すべきである。仮に本件対象文書が平成10年度以降に作成されたものであり、現にセンターが保有している状態にある場合には、要綱上の文書として、開示・非開示等の決定を行うべきである。
よって、当審査会としては、この点に関してはセンターの主張を認めることはできない。
(3) 要綱附則第2項の適用について
要綱附則第2項では、平成10年度以降に作成され、又は取得した対象文書について適用することとしており、今回の請求については要綱の適用範囲外にあたる、とセンターは主張している。
本件対象文書については、当審査会にセンターから提出がなかったためインカメラ審理を行っておらず当審査会では確認はできなかったが、センターが主張するよう平成9年度に作成されたものであれば、要綱附則第2項が、「この要綱は、平成10年度以降に作成され、又は取得した対象文書について適用する。」に限定している以上、要綱上の対象文書の範囲外であると言わざるを得ない。
よって、センターの本決定は、妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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13. 1.17 | ・諮問書受理 |
13. 1.17 | ・センターに対して非開示理由説明書の提出依頼 |
13. 1.24 | ・非開示説明書受理 |
13. 1.25 | ・異議申出人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
13. 5.18 | ・書面審理 ・センターの非開示理由説明の聴取 ・異議申出人の口頭意見陳述 ・審議 (第130回審査会)
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13. 6. 1 | ・審議 ・答申 (第132回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。