2003年度 三重県における情報提供の現状と課題
―意見反映手続きに関する提言―
平成15年6月
三重県情報提供推進委員会
はじめに
情報提供推進委員会は、後でも述べる『三重県の情報提供施策の推進に関する要綱』(以下、『情報提供推進要綱』)で設置されている審議会です。この委員会は、県が行う情報提供の実施状況について報告を求めることや、県の情報提供施策について調査研究し、提言することができます。
「公開から提供へ」という言葉が表すように、情報公開条例による情報開示制度とともに、開示請求をまたずに情報を提供することの重要性が指摘されはじめています。しかしながら、どのような目的で、どのような情報提供を行うのかをはじめとして、情報提供には検討すべき課題がたくさんあります。三重県の情報提供の現状を整理し、課題を提起することが委員会の仕事です。
委員会では、情報提供の現状を概観するとともに、特に検討すべき課題を取り上げて検討し、提言することにしています。しかしながら、情報提供を検討する常設の審議会を設置する地方公共団体は全国にほとんど例がありません。こうした情報提供の仕組みを活用しながら、情報提供をめぐる課題を着実に提起することによって、公開から提供へ、そして県民が政策立案に参加しやすい情報提供を充実させることが委員会の仕事と考えています。
平成15年6月
三重県情報提供推進委員会
会長 樹神 成
1 三重県における情報提供の枠組
情報提供は、もともとは、行政の判断で必要と思われる情報を住民に提供するという意味合いが強く、行政にとって都合のよい情報が提供されるというイメージが強くありました。このような意味で情報提供がいくら進んでも、住民にとって必要な情報が提供されることになるとは限りません。そこで、まず、情報提供の枠組についての考え方と現状を検討する必要があります。
三重県における情報提供の枠組は、(1)情報公開条例改正前、(2)情報公開条例の改正(1999年10月、施行は2000年4月)、(3)『情報提供推進要綱』及び『県民の意見を行政に反映させる手続きに関する指針』の制定の各時期に分けて考えることができます。
三重県は、旅費や食糧費の不適正な支出が明らかになると、旅費・食糧費・消耗品費の予算及び支出状況について情報提供することを決めました。また、事務事業目的評価表(1998年2月)や予算見積書の公開(1999年2月)を決め、政策立案または政策評価についての情報提供にも取り組みはじめました。
三重県情報公開条例の改正のときには、「情報提供の総合的推進」(第3章)についての章を設け、情報提供施策の推進(第41条)、公表義務制度(第42条)及び会議の公開(第43条)を定めました。これらの規定が、三重県の現在の情報提供施策の法的な基礎となっています。会議の公開については、『審議会等の会議の公開に関する指針』が1999年7月に定められました。
1998年から「情報提供のあり方」について検討をはじめていた情報公開懇話会(情報提供検討小委員会)は、2000年3月に「情報提供のあり方」についての答申を行いました。その内容は三重県の「情報提供のあり方」に大きな影響を与えました。情報公開懇話会(情・沍沒「小委員会)は、これまでの情報提供の問題点を踏まえ、新しい視点で情報提供を進めるべきだと提言しました。この新しい視点での情報提供のキーワードが「参加と協働」です。
「参加と協働をキーワード」とした情報提供をするために、情報公開懇話会(情報提供検討小委員会)は次のことを提言しました。
- 政策課題、政策立案過程、政策実施過程及び政策評価についての情報、つまり争点情報の情 報提供を進める
- 現有の情報提供にとどまらず、県民にとって必要な情報を積極的に収集する
- 双方向性を確保できる情報提供の仕組みを検討する
- 行政・住民の双方が情報の利用者であることから、住民参加で情報提供を進める
- 県全体の総合施策として情報提供を進める
三重県ではこのような内容の提言を受けて、公表義務情報や公表推進情報、情報提供推進委員会について定める『情報提供推進要綱』、並びに意思形成過程で情報を公表し、それに対する意見を考慮して意思決定を行うことを目的とする『県民の意見を行政に反映させる手続きに関する指針』を2001年4月に定めています。情報提供推進委員会は2001年10月に設置されました。
以上のように、三重県の情報提供は、情報公開条例第3章「情報提供の総合的推進」を基礎に、『審議会等の会議の公開に関する指針』、『情報提供推進要綱』(公表義務情報、公表推進情報)及び『県民の意見を行政に反映させる手続きに関する指針』を基本枠組としています。
2 情報提供の現状
情報提供の現状を、(1)情報提供の方法、(2)会議の公開、(3)意見反映手続きに分けて示します。
(1) 情報提供の方法
① インターネット
ア ホームページ
県のホームページへのアクセス件数は、トップページで月間約48万件(2003年4月実績)です。アクセス数の多いページは、この4月では「選挙関係情報」、「入札情報」等となっています。部局別のアクセスでは、教育委員会、健康福祉部、県土整備部の順で多く、また、県のホームページとは別のサーバーで管理されている環境部の「三重の環境」へは、月間60万件(2003年4月、県HPとはカウント方式が異なるため単純に比較できない。)を超えるアクセス数があります。
県のホームページへの掲載は、各所属から「情報提供システム」に直接入力することにより自動的に情報提供を可能にしていることを一つの特徴としています。このシステムにより、庁内ネットワークに接続されたすべてのパソコンから登録することができ、各所属の提供したい情報が簡単に三重県ホームページ上に情報提供できるようになっています。また、2002年の秋以降は部局別オリジナルホームページを作成しています。これらのことによって、各チームまたは各部局がそれぞれ趣向を凝らし、個性あふれる情報発信や迅速な情報内容の更新がめざされています。
イ e-デモ会議室
e-デモ会議室は、インターネットを活用した住民参加型の電子会議室で、生活者(県民)の身近なテーマや地域が抱える課題などについて、生活者が自由に意見を述べ、議論に参加できる新たな住民参加の場です。テーマ別に会議室が設けられており、現在、4つのテーマで議論が展開されています。
② マスメディア
ア 報道機関
記者会見や記者クラブ等への資料提供等を通じて、県民への情報が提供されています。
イ テレビ・ラジオ
三重県は、テレビ・ラジオ番組で以下のような三重県コーナーをもっています。
これらの番組は、県内のイベント情報、身近な生活情報、県政に関する情報を県民に提供することを目的としています。
三重テレビ | 県政ウォッチング | 第5金曜日を除く毎週金曜日 22:15-22:30 |
CBCラジオ | こんにちは三重県です | 毎週木曜日 11:47-11:52 |
CBCラジオ | 三重県の窓 | 毎週土曜日 10:51-10:56 |
東海ラジオ | こんにちは三重県です | 毎週水曜日 10:32-10:37 毎週木曜日 15:01-15:06 |
FM三重 | 三重県からのお知らせ | 毎週月~金曜日 7:43- 7:48 毎週月、水、金曜日17:40-17:45 |
FM三重 | こんにちは三重県です | 毎週火曜日 16:07-16:12 |
③ 広報誌
「県政だよりみえ」は、県内の全世帯に毎月配付されています。県の編集方針は、「県の施策や取り組み等を、県民にできる限りわかりやすく伝えることを基本として編集し、県民から意見や提言を得て、今後の県政運営に反映させるよう問題提起型の県民とのコミュニケーションツール」というものです。先の「県民一万人アンケート調査結果」でも8割以上が「役立つ」と評価しています。
④ 情報公開総合窓口
情報公開総合窓口で約30,000部の行政資料を収集し、県民の役立つような行政資料を閲覧できるよう整備しています。2002年度の利用者は3,732人でした。行政資料の窓口配架については、各部局で作成された行政資料のほか、『情報提供推進要綱』に謳われている「公表義務情報」(県民に提供しなければならない情報)、「公表推進情報」(県民への情報提供を特に推進すべき情報)を公表する際は、総合窓口への配架を義務づけています。
(2) 会議の公開
三重県では、『審議会等の会議の公開に関する指針』が制定され、県の審議会等を原則公開しています。2002年度には、73の審議会等が開催されました。そのうち公開で開催したものが38(52.0%)、非公開が27(37.0%)、一部非公開が8(11.0%)でした。傍聴者の多かった審議会等は、次のとおりです。
審査委員会等の名称 | 延べ傍聴人数(人) |
---|---|
三重県公共事業再評価委員会 |
38 |
三重県公衆衛生審議会 |
12 |
三重県公害事前審査会 |
9 |
三重世界遺産学術調査委員会 |
9 |
(3) 意見反映手続き
意見反映手続きは、一定の事案(基本的な計画や条例)を決定しようとする時に、あらかじめ案等を公表し、案等に対する意見の提出を求め、提出された意見を考慮して意思決定を行うともに、提出された意見に対する県の見解や対応をまとめ公表するという制度です。
意見反映手続きにより意見の募集を実施した事業は、別添資料にあるように、39事業(2003年6月現在)でした。意見の提出状況は、相当数の意見が集まった事業もあるとともに、意見提出のなかった事業も12件ありました。また、全体としてみると意見が殺到しているという状況ではありません。それでも、比較的短期間のうちに、39事業の意見反映手続きが行われ、県の見解や対応が公表されていることは、制度の定着を示すものです。三重県の「パブリックコメント」のホームページには、2002年10月からの集計で月平均1,200件程度のアクセスがあります。
3 意見反映手続きの現状と課題
意見反映手続きは、情報の公開(提供)と参加(意見の反映)のふたつをあわせもっています。情報の公開(提供)と参加(意見の反映)とは切り離せないと考えられてきました。そこで、今回は、三重県における意見反映手続きの課題について特に取り上げ検討することとしました。
(1) 制度の周知と呼称
意見反映手続きを実施しても、意見提出がなかった事業が12件ありました。特に言うべき意 見がなければ意見提出もないことがあると割り切ることもできますが、意見提出がなかった原因はいろいろ指摘できます。一番の問題は、県民のあいだで、意見反映手続きの制度が親しまれ、意見反映手続きの実施に注目が集まっているとはいえないことです。このような制度があることを知らない県民も多いと思われます。また、意見反映手続きを通じた意見の考慮が大きな注目を集めたという事例もないように思います。そこで、まず、意見反映手続きという制度の存在と意義を県民によく知ってもらう必要があります。
意見反映手続きが県民に重みをもって受け止められるようになるには、意見反映手続きを通じて、県民の意見が政策立案に反映されているという事実と実感が必要なことはいうまでもありません。
意見反映手続きが成功するかどうかは、担当チームが意見反映手続きを、政策立案上に積極的に位置づけているか、あるいは、いわば制度上の義務の履行という程度の位置づけをしているにすぎないかによって、大きく影響を受けます。つまり、担当チームが意見反映手続きをどのようなものとして捉えるかに大きく依存します。意見反映手続きを積極的に位置づける場合には、意見反映手続きを単発で行うのではなく、意見反映手続きが公聴会や審議会での議論と結びつけられています。担当チームが県民の意見が必要だと判断すると、そのような積極的な取り組みもなされるということを示しています。
現状では、意見反映手続きの通知はホームページで行われています。三重県のホームページのトップページの比較的見やすいところに「パブリックコメント」のページへのリンクが置かれています。しかしながら、ホームページ以外でも意見反映手続きの実施を通知するよう検討することが必要です。
以上のような担当チームの位置づけと通知の仕方とは別に、意見反映手続きを一般に「パブリックコメント」と呼ぶことが、意見反映手続きについてのイメージを持ちにくくしているのではないでしょうか。三重県では、正式には「意見反映手続き」といっています。「意見反映」という考え方になっている点は評価できるものの、「職員が県民の意見を反映させる」という意味合いも感じられます。そうした意味合いを払拭するためには、たとえば「政策立案参加手続」という呼称が検討に値します。意味するところが広くなりすぎるということも考えられますが、県民の理解は得られやすいといえます。また、市民活動団体や非営利組織(NPO)の活動が活発となると、これらの団体から必要な事務事業や企画の提案も起きてくると考えられます。こうした面を強調するものとして「協働提案手続」という呼称も魅力があります。
(2) 意見反映手続きに関する指針の特徴
三重県の意見反映手続きは、2001年4月から施行された『県民の意見を行政に反映させる手続きに関する指針』に基づいて実施されます。他の都道府県も既に類似の制度を設けています。それらとの対比も念頭に置いて、三重県の指針の特徴及び基本的内容をまとめてみました。
表では、三重県の意見反映手続きに対する疑問も示しました。これらの疑問は、指針の運用のなかでどのような問題があるかを、委員会で検討するなかで明らかになったことを踏まえています。こうした疑問を解消するために、指針の内容を見直すことが必要な時期が来るかもしれません。しかし、意見反映手続きは、まだできたばかりの制度です。そのことを考えると、指針それ自体の文言の見直しに傾注するより、運用を通じて浮かび上がってきた問題点を明らかにし、その改善を考えることも大切です。運用を通じて浮かび上がってきた問題点を明らかにすることで、指針の内容の問題点もよりはっきりします。
特徴 | 疑問 |
---|---|
案等を公表し、「それに対する意見を考慮して意思決定を行う」ことが目標。 | 提出された意見に対する「県の考え方を取りまとめ、提出された意見とあわせて公表」(意見の処理)することになっています。残念ながら、「意見を考慮して意思決定」が行われているかはわかりにくくなっています。 |
審議会等の審議の過程で本手続きに準じた手続きを採用する場合には、本手続きによらないことも可能。 | 審議会等は県民の意見を県政に反映する形態です。この審議会等の活動と意見反映手続きを別のものと考えるのではなく、むしろ、参加という大きな目的のための制度と考え、その結びつきを検討すべきではないでしょうか。 |
「県の施策に関する基本的な計画の策定又は変更」及び「県民に義務を課し、又は権利を制限する条令及び制度の制定又は改廃」に加えて、「公共の用に供される施設の建設に係る基本的な計画の策定又は変更」が対象。 | 意見反映手続きの対象となる事項について、多くの場合、審議会等が設置されています。この点からも、審議会等での検討と意見反映手続きの組み合わせを強調すべきではないでしょうか。「なるべく早い段階」での公表を促そうとすると、審議会等での検討の早い時期での公表が必要となります。その点からも、審議会等の活動と意見反映手続きとを関連させることが必要ではないでしょうか。 |
案等の公表について、「なるべく早い段階で、最終的な意思決定を行う前」という文言で、できる限り早い段階での公表が望ましいという方向性を表現。 | |
意見反映手続きの実施の積極的周知を規定。 | 「積極的周知」を規定したことは評価できます。しかし、残念ながら制度自体の認知度や注目度が低く、意見反映手続きの実施の周知も「積極的」といえるかどうか疑問です。また、「指針」の問題とは言えないかもしれませんが、意見反映手続きの実施は、単に意見実施の趣旨と関連資料をインターネット上に掲載するだけというかたちで公表されています。しかしながら、意見を提出しやすくするという視点から、案等の特徴や課題、問題点を示す工夫も必要ではないでしょうか。また、意見提出者がプライバシーの保護に不安を持つことも考えられることから、意見提出者のプライバシーが保護されることを明示するとともに、県庁内でのプライバシーの保護にも十分注意を払う必要があると思われます。 |
関連資料も含めた公表を明記。 | 関連資料も含めた公表を定めたことは評価できます。しかしながら、関連資料の公表は、現実にはインターネット上で行われています。インターネット上での公表によって、関連資料はより多くの人の目に触れることになります。しかし、インターネット上でまとまった文書を閲覧するには時間と手間がかかることも事実です。そのため、当該事案について意見反映手続きを行う趣旨等を懇切に説明することを含め、インターネット上での関連資料の公表の特殊性を踏まえた工夫が必要です。 |
意見の募集期間は1ヶ月程度が目安。 | 他の都道府県では1ヶ月程度を目安としています。しかし、意見反映手続きの対象、時期、目的、方法によって、それに相応しい十分な長さを判断した方がよい場合もあります。 |
「公聴会における意見の聴取」も可能。 | 「公聴会における意見の聴取」を意見提出方法としたことは評価できます。しかし、県民との懇談や説明の機会を捉えて意見の提出を求めるべきとすると、公聴会に限らず、また公聴会を狭く捉えるべきではなく、意見提出を求める機会をより柔軟に考えるべきです。公聴会が開けなくとも、利害関係者等に対して適切に意見の収集に出向いたり、意見の提出を呼びかけることがあってもよいのではないでしょうか。 |
(3) 意見提出をめぐる現状と課題
意見反映手続きは「意見を考慮して意思決定」を行う制度です。したがって、意見反映手続きにかけた案等について、相当数の意見の提出があったほうが望ましいといえます。
しかし、実際には、意見の提出がない場合もあり、あっても少数にとどまる場合があります。その原因をあげると次のようになるでしょう。
- 意見反映手続きの実施の周知が不十分
- 意見反映手続きにかけた事項の内容が高度に専門的
- 意見反映手続きにかけた事項が県民にとってなじみが薄いか、または関心をもつ人の範囲が狭い
- 公表される案等の内容が既に多くの点で確定している
意見の提出が相当数ある場合もあります。その原因として次のことをあげることができます。
- 意見反映手続きにかけた事項への県民の関心が高い
- 意見反映手続きにかけた事項に関心をもつ市民活動団体やNPO等が存在している
- 公聴会や懇談会、説明会等の機会を利用した意見の提出
以上の分析から、意見反映手続きにおける意見提出をめぐる課題がさまざまに浮かび上がりますが、特に次のふたつのことが重要であると考えます。ひとつは、指針が定める「なるべく早い段階」での案等の事例を増やすことです。もうひとつは、意見反映手続きの周知を工夫することで意見の提出をしやすくすることです。
(4) 「なるべく早い段階」での案等の公表
三重県の指針は「なるべく早い段階」での案等の公表という方向性を示していますが、実際には、審議会等で案等が固まってから意見反映手続きにかけるという場合がほとんどです。ある程度案等が固まらないと意見反映手続きにかけにくい、関係する団体や個人とまず協議しないと基本方向が定まらないということもあると思われます。しかし、案等の内容が固まってしまっていると意見を提出しにくい場合があります。また、審議会等の議論や案等の作成を通じて団体や個人との協議や懇談が終わってしまっている場合には、意見の提出は少なくなると推察されます。
意見反映手続きは、審議会等での議論とは別に、県民からの意見の提出を求める制度であることから、そのような事態があってもそれはそれでよいと考えることもできます。しかしながら、審議会等自体が審議の参考とするために、意見反映手続きを利用する、あるいは公聴会や懇談会で意見募集することが「なるべく早い段階」での案等の公表につながると言えます。そうすることで、案等が固まりきらない時点での意見の提出を可能とし、意見反映手続きを参加手続きとして充実させることにつながると考えられます。
(5) 意見反映手続きの実施の周知
意見反映手続きの利点は、対象事項に関心のある人なら誰でも意見提出ができることにあります。このことが意見反映手続きのもっとも重要な意義です。しかしながら、意見反映手続きの対象となる事項は、多くの県民が共通して関心をもつものから関心が一定の範囲の県民に限られるものにまで及びます。また県民が積極的に意見を提出しやすいものから専門性が高く意見提出しにくいものまであります。
意見反映手続きの対象となる事項の関心度や意見提出の難易が異なるとすると、それに相応しい周知のあり方を検討すべきです。このことは見方をかえると、意見反映手続きは複数の異なる機能を果たしうることを意味します。つまり、専門家の意見を聞くことでより専門的知見を活かした政策立案を行うことを期待される場合もあれば、広く県民の意見を知る必要がある場合まで考えられるからです。したがって、関心のある者なら誰でも意見を提出することができるということは活かしながら、対象事項の特徴に応じて、専門家の意見を募る、あるいは利害関係人への説明等の機会を設ける等して、意見を集めることができるような運用をすべきです。意見反映手続きを参加の制度化とみると、だれでも対象となる事項について意見や見解を述べることができるということは評価できるものの、逆に、あまりに一般的な参加制度であるがゆえに印象が薄くなるという面もあります。
したがって、利害関係者からの意見の提出、関係する市民活動団体やNPOからの意見の提出、専門家や専門知識を有する者からの意見の提出を重視すべき場合には、それにふさわしい周知の手続きをとることが考えられます。言い換えれば、県民、利害関係者、市民活動団体・NPO及び専門家・有識者(専門知識をもつ者)に分けて意見反映手続きの実施の周知を考える必要があります。
(6) 意見の処理をめぐる課題
意見反映手続きは、提出された「意見を考慮して意思決定」が行われたという事実と実感があって、はじめて有効な制度になるといえます。
提出された意見に対しては、意見に対する県の見解や対応がまとめられ公表されています。しかしながら、この公表の事実自体が意見提出者には分かりにくかったり、意見提出の対象となった事案について、意見提出を受けて案等の内容がどのようになったか分かりにくいというのか現状です。意見への対応に関わらず、意見を提出した案等がどのようになったかについて知りたいと思うのは当然であり、この点での工夫が必要と考えます。
おわりに
以上のように、当委員会では三重県が行っている意見反映手続きに焦点を当て、提言というかたちで検討結果をまとめました。前にも述べましたとおり、意見反映手続きは、県民から提出された意見を考慮して意思決定が行われたという事実と実感があって、はじめて有効な制度になるといえます。その意味から、意見反映手続きが三重県の政策立案過程に積極的に位置づけられることが必要です。
また、県民を対象とした意見反映手続きの問題とは言えないかもしれませんが、市町村の意見を三重県の政策立案にいかに反映させていくかについては、今後の課題と考えています。
意見反映手続きによる意見件数等集計表
2003年6月現在
事業名等 | 意見募集期間 | 担当チーム(課) | 意見件数 |
---|---|---|---|
三重県自動車排出窒素酸化物及び粒子状物質総量削減計画(素案) |
H15年 5月 6日~ |
大気環境チーム | 集計中 |
教職員の人材育成に関する中間整理案 |
H15年 3月24日~ |
教育改革チーム | 集計中 |
三重県における情報提供の現状と課題(中間まとめ)案 |
H15年 3月12日~ |
情報公開チーム | 意見なし |
第3次三重県高齢者保健福祉計画・第2期三重県介護保険事業支援計画(案) |
H15年 2月15日~ |
長寿社会チーム介護保険グループ | 2件(2市町) |
三重県廃棄物処理計画(中間報告) |
H15年 1月28日~ |
循環システム推進チーム | 9件(2人) |
熊野灘沿岸海岸保全基本計画(案) |
H14年12月28日~ |
港湾・海岸チーム、海岸整備チーム |
2件(2人) |
三河湾・伊勢湾沿岸海岸保全基本計画(案) |
H14年12月28日~ |
港湾・海岸チーム、海岸整備チーム | 意見なし |
クリスタルバレー構想推進プログラム(案) |
H14年12月27日~ |
企業立地推進チーム | 意見なし |
三重県食の安全・安心確保基本方針(案) |
H14年12月20日~ |
食の安全・安心確保プロジェクトグループ | 51件(49個人3団体、うち2団体は共同で応募) |
屋外広告物掲載基準(改正素案) |
H14年12月21日~ |
都市基盤チーム | 意見なし |
新三重県障害者プラン(素案)について |
H14年12月 1日~ |
生涯福祉チーム | 121件 |
三重県立自然公園条例の改正について |
H14年11月18日~ |
人と自然の環境共生チーム | 2件(2人) |
平成14年度三重県土地利用基本計画変更案 |
H14年11月20日~ |
県土利用・水資源・流域圏推進チーム | 意見なし |
自然環境保全条例の改正のあり方について(中間報告) |
H14年10月29日~ |
人と自然の環境共生チーム | 246件(107個人7団体) |
三重県海岸整備アクションプログラム |
H14年10月21日~ |
港湾・海岸チーム | 17件(10人) |
「工場立地法に基づく地域準則を定める条例」(仮称)制定に関する「基本的考え方」について | H14年10月14日~ H14年11月 5日 |
企業立地推進チーム | 7件 |
三重県白地地域における建築形態制限の指定方針について |
H14年10月 1日~ |
建築チーム | 県民10件(4人)市町村30件(15市町) |
人と自然にやさしいみえの農産物表示制度(仮称) |
H14年 8月23日~ |
地産地消・流通対策チーム | 44件 |
三重県地方分権推進方針(仮称)中間報告 |
H14年 8月 1日~ |
地域振興部市町村合併推進チーム | 6件(1人) |
三重ブランド認定基準の運用(案) |
H14年 7月22日~ |
農林水産商工部三重ブランド推進チーム | 5件(3通) |
「三重県版健やか親子21(仮称)」計画指針(案) |
H14年 6月 1日~ |
健康福祉部子ども家庭チーム | 31項目の意見 (3個人、11団体) |
行政手続及び文書管理の電子化推進アクション・プラン(案) |
H14年 3月15日~ |
地域振興部業務プロセス革新プロジェクトグループ | 3件(2人) |
特定建設資材に係る分別解体及び特定建設資材廃棄物の再資源化等に関する指針(案) |
H14年 2月26日~ |
公共事業推進課 | 意見なし |
平成14年度途中三重県土地利用基本計画変更案 |
H14年 2月 1日~ |
資源課 | 意見なし |
三重県海岸整備アクションプログラム |
H14年 1月28日~ |
港湾課 | 意見なし |
第9次鳥獣保護事業計画(案) |
H14年 1月 4日~ |
自然環境課 | 83項目の意見 (24の個人及び団体) |
三重県企業庁経営計画中間案 |
H13年12月25日~ |
企業監理課 | 意見なし |
バリアフリー社会づくり戦略プラン(素案) |
H13年12月21日~ |
政策調整課 | 88件(22通) |
三重県CALS/ECアクションプログラム(素案) |
H13年12月18日~ |
公共事業推進課 | 1件 |
新しい総合計画「三重のくにづくり宣言」第二次実施計画(中間案) |
H13年12月 7日~ |
企画課 | 566件(309人) |
三重県男女共同参画基本計画(仮称)素案 |
H13年12月 1日~ |
男女共同参画室 | 265件(22人) |
平成13年度末三重県土地利用基本計画変更案 |
H13年12月 1日~ |
資源課 | 意見なし |
三重県健康づくり推進条例(仮称)骨子案 |
H13年10月11日~ |
健康対策課 | 633件 |
三重県版CALS/EC整備基本構想素案 |
H13年10月 2日~ |
公共事業推進課 | 2件 |
医療・健康・福祉産業振興計画(メディカルバレー構想)中間報告 |
H13年10月 2日~ |
薬務食品課 | 意見なし |
総合計画「三重のくにづくり宣言」第二次実施計画素案 |
H13年 9月26日~ |
企画課 | 560件(307人) |
三重県海岸整備アクションプログラム |
H13年 8月10日~ |
港湾課 | 28件(8人) |
三重県個人情報保護条例要綱案 |
H13年 7月24日~ |
情報公開室 | 意見なし |
三重県住宅マスタープラン |
H13年 6月22日~ |
建築住宅課 | 5件(4人) |
ホームページの「パブリックコメント」コーナーへのアクセス数
2002/10月 | 11月 | 12月 | 2003/1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
---|---|---|---|---|---|---|
1,243件 |
1,373件 |
1,164件 |
1,312件 |
1,230件 |
906件 |
1,106件 |
三重県情報提供推進委員会の検討経過
回 | 開催年月日 | 検討項目 |
---|---|---|
第1回 | 平成13年12月17日(月) | 委員紹介、委員会設置要綱説明 検討事項 ① 会長及び副会長の選任について ② 会議の公開について ③ 三重県の情報提供施策の現状について ④ 今後の情報提供のあり方について |
第2回 | 平成14年 2月 4日(月) | 検討事項 ○ 情報提供の進め方について |
第3回 | 平成14年 4月15日(月) | 検討事項 ○ パブリックコメント制度について |
第4回 | 平成14年 6月10日(月) | 検討事項 ○ 県内市町村における住民参画の状況について ・ 四日市市まちづくり市民円卓会議について (四日市市都市計画課 政策推進監説明) |
第5回 | 平成14年 8月 5日(月) | 検討事項 ○ 有効な情報提供の方法について ―パブリックコメント制度を活用するには― |
第6回 | 平成14年10月21日(月) | 検討事項 ○ パブリックコメントについて ―提言(中間まとめ)に向けて― |
第7回 | 平成14年 12月17日(火) | 検討事項 ○ 委員会の中間まとめについて |
第8回 | 平成15年 2月 4日(火) | 検討事項 ○ 委員会の中間まとめについて |
第9回 | 平成15年 6月24日(火) | 検討事項 ○ 委員会からの提言(案)について |
県民の意見を行政に反映させる手続きに関する指針
1 趣旨
この指針は、行政における意思形成過程において、広く県民に対しその生活に関連する計画、条例等の案(以下「案等」という。)を公表し、それに対する意見を考慮して意思決定を行うため、県民からの意見の提出手続きを定め、公正で民主的な県政を一層推進することを目的とする。
2 対象
県は、広く県民に適用されるものであって次に掲げる案等を策定しようとするときは、本手続きを経るものとする。
なお、個別具体的な処分・計画は本手続きの対象外とする。
また、同様の手続きを経るものとして法令等に別段の定めがあるもの、審議会等の審議の過程で本手続きに準じた手続きを実施するもの、迅速性・緊急性を要するもの、軽微なもの等については本手続きによらないことができる。
(1) 生活創造圏域又はそれを超える地域の県民に影響を及ぼす県の施策に関する基本的な計画の策定又は変更(目標年次の設定がないもの及び目標年次を策定の日から1年を超える将来に設定しているものに限る。)
(2) 県民に義務を課し、又は権利を制限する条例及び制度の制定又は改廃(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)
(3) 生活創造圏域又はそれを超える地域の県民に影響を及ぼす県民の公共の用に供される施設の建設に係る基本的な計画の策定又は変更
3 意見提出の手続き
(1) 公表時期
本手続きの対象となる計画等の策定をしようとするときは、なるべく早い段階で、最終的な意思決定を行う前に、案等を公表する。
(2) 公表資料
本手続きを実施するにあたっては、県民の理解に資するため、案等そのものに加えて、関連資料を公表する。
(3) 周知方法
本手続きを実施するにあたっては、次のような方法を活用し、積極的に周知を図る。
ア インターネットホームページへの掲載
イ 情報公開総合窓口への配架
ウ 報道機関への資料提供
エ 県政だより等に掲載
オ その他適当と考えられる方法
(4) 意見の募集期間
意見の募集期間については、意見の提出に必要とされる時間等を勘案し、1ヶ月程度を1つの目安として、案等の公表時に明示する。
(5) 意見の提出方法
意見の提出方法は、郵便、ファクシミリ、電子メール、公聴会における意見の聴取その他適当と思われる方法とし、どの方法により実施するかについて、案等の公表時に明示する。
公聴会の開催により意見等を聴取する場合は、開催日時、公聴会において意見を述べようとするものの申し出の手続き等を定め、案等の公表時に明示する。
なお、公聴会の開催により意見を聴取する場合であっても、書面による意見の提出の申し出があった場合は、これを受け付けなければならない。
(6) 意見の処理
案等を公表した場合は、提出された意見を考慮して意思決定を行うとともに、これに対する県の考え方を取りまとめ、提出された意見とあわせて公表する。
4 一覧の作成
知事は、本手続きを行っている案件の一覧表を作成し、ホームページに掲載するとともに、情報公開総合(案内)窓口に配架する。
附則
この指針は、平成13年4月1日から施行し、本指針施行の日以降において立案に着手するものについて適用する。
三重県情報提供推進委員会設置要綱
(設置)
第1条 三重県の情報提供に関する施策を推進するため、三重県の情報提供施策の推進に関する要綱6(1)に基づき、三重県情報提供推進委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(所掌事務)
第2条 委員会は、県の情報提供施策の推進に関する事項について審議検討する。
2 委員会は、前項の審議検討に伴い、次の各号に掲げることをすることができる。
(1) 県が実施する情報提供の実施状況について、県に対して報告を求めること。
(2) 県が実施する情報提供施策について、県に対して提言すること。
(3) 情報提供施策の推進について調査又は研究を行うこと。
(4) 県が実施する情報提供施策について県民から意見を聴くこと。
(委員)
第3条 委員会の委員は、7人以内とする。
2 委員は、学識経験者等のうちから知事が委嘱する。
3 委員の任期は、委嘱の日から平成15年9月30日までとする。ただし、委員が欠けた場合における委員の任期は前任者の残任期間とする。
(会長)
第4条 委員会に会長を置く。
2 会長は、委員の互選により定め、副会長は、委員のうちから会長が指名する者をもって充てる。
3 会長は、委員会の会議を主宰する。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときは、その職務を代理する。
(委員会の招集等)
第5条 委員会は、会長が招集する。
2 会長は、必要あると認めるときは、委員会に委員以外の者の出席を求め意見を聴くことができる。
(委員会の公開)
第6条 委員会の会議は、公開するものとする。ただし、会議において取り扱う情報が次の各号に該当し、会長が委員会に諮って非公開とすることが適当であると判断した場合はこの限りでない。
(1) 情報公開条例第7条各号に該当し非開示とすべき情報が含まれる事項について審議検討する場合
(2) 公開することにより、会議の公正又は円滑な運営に支障が生ずると認められる場合
(庶務)
第6条 委員会の庶務は、情報公開室において行う。
(補則)
第7条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、会長が委員会に諮って定める。
附則
1 この要綱は、平成13年10月1日から施行する。
2 この要綱の施行の日以後最初に開かれる委員会は、第5条第1項の規定にかかわらず、生活部長が招集する。
三重県情報提供推進委員会委員名簿
○ 会長 (敬称略、50音順)
委員候補者名 | 出身団体等名称・役職 | 選任分野 |
---|---|---|
柏木 はるみ | 女性問題研究会TSU・アイリス代表 | 市民(女性)代表 |
○ 樹神 成 | 三重大学教授 | 学識経験 |
杉浦 礼子 | (株)百五経済研究所 | コンサルタント |
中村 賢 一 | 伊勢文化舎代表 | 報道関係 |
松井 真理子 | 四日市大学助教授 | 学識経験 |
任期 平成13年10月1日~平成15年9月30日