三重県個人情報保護審査会 答申第9号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年6月24日に三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「○○年より2003年までの勤務校校長による勤務評定にかかる書類のすべて」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成16年7月9日付けで行った非開示決定の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。 (1) 条例第16条第7号(評価等情報)に該当
勤務評定は、三重県立学校職員の勤務成績の評定に関する規則(昭和33年4月30日三重県教育委員会規則第20号)第7条第3項で非公開とすることが規定されており、校長はこれを前提として、公正な判断に基づいたありのままの評価を記載しており、その内容は職員の人格評価と密接に関連したものである。仮に勤務評定が開示されると、校長の評価と本人の自己 評価が食い違っている場合に、評価が間違いであるとして校長に対する不信感や個人的不満、対立関係を生じさせる可能性がある。その結果、校長による指導等を困難にし、職場内の信頼関係・一体感を失わせ、業務執行能力を低下させ、さらには、校長が被評価者との関係悪化等をおそれて、本人に不利益な評価を避け、寛大な評価や機械的に一律の評価をしてしまうことになりかねず、勤務評定制度が形骸化、空洞化するおそれがあり、条例第16条第7号に該当することから非開示とした。
(2) 条例第16条第1号(法令秘情報)の取下げ
別件の個人情報保護審査会答申では、実施機関が定める規則で非開示を定めていたとしても条例第16条第1号(法令秘情報)には該当しないという判断が示されていることから、第1号を非開示理由とすることは取り下げる。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
校長は正常な判断力を有しておらず、正常な勤務評定ができるとは考えられない。また、異議申立人は○○処分を受けているが、この処分は勤務評定によるところが大きい。勤務評定は非常に重要な報告であり、そのような重要な報告を「開示することにより人事管理上信頼できる情報が作成されない。」などという小さな理由で非開示にすることは到底許されない。
現在は内申書さえも開示される時代であるにも関わらず、勤務評定を旧態依然として非開示とするのは理由がない。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった個人情報並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本件対象個人情報について
三重県立学校職員の勤務成績の評定に関する規則により、定期評定は毎年9月1日に実施すること、校長以外の職員については校長が評定すること等が定められている。
異議申立人は、「○○年より2003年までの勤務評定にかかる書類のすべて」について開示請求をしたが、同規則により、保存期間は新たに勤務評定書が提出されるまでの期間及びその期間の経過後1年までとされていること、また、2003年9月1日には異議申立人に対する勤務評定は行われていないことから、本件異議申立てにかかる対象個人情報は、2002年9月1日に校長が行った勤務評定書であると認められる。
(2) 条例第16条第7号(評価等情報)の該当性について
条例第16条第7号は、「個人の指導、診断、判定、評価等に関する情報であって、開示することにより、当該事務の適正な遂行を著しく困難にすると認められるもの」は、非開示とすることができることを定めたものである。
勤務評定は、職員の勤務の実績とその実績を通じて見られた能力、性格及び適性とを分析、総合して行い、職員に対する指導、監督及び研修の指針と人事行政の参考とに資し、もつて教育の効果の向上を期することを目的とするものであり、評定者はあらゆる角度から公平に観察して、正確な評定を行なうようにしなければならないとされている。
異議申立人は離職しているので、実施機関の主張するように、職場内の信頼関係・一体感を失わせ、校長の業務執行能力を低下させるおそれがあると認めることはできない。
しかしながら、校長は被評定者に開示されないことを前提に勤務評定を行っており、これが開示された場合には、被評定者が校長による評定を率直に受け止めることが難しい場合も十分に考えられ、被評定者が離職していたとしても、校長と被評定者との間に対立関係を生じさせる可能性がある。また、今後、校長が勤務評定を行う場合、被評定者との対立関係を避けるため、被評定者に不利な記載をすることを避けるようになるおそれがあり、結果として、人事管理上信頼できる資料が作成されず、本来ありのままを正確に評定しなければならない勤務評定制度が形骸化・空洞化し、勤務評定制度本来の目的を達成できなくなるおそれがあると認められる。
したがって、実施機関の行った非開示決定は妥当である。
(3) 条例第16条第1号(法令秘情報)の該当性について
実施機関は口頭による理由説明において、条例第16条第1号を理由として非開示とすることを取り下げているので、審査会としては判断しない。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成16年 7月27日 | ・ 諮問書の受理 |
平成16年 8月 3日 | ・ 実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
平成16年 9月 1日 | ・ 非開示理由説明書の受理 |
平成16年 9月21日 | ・ 異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成16年11月29日 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第19回個人情報保護審査会) |
平成16年12月20日 | ・ 審議 (第20回個人情報保護審査会) |
平成17年 1月26日 | ・ 審議 ・ 答申 (第21回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 曽和 俊文 | 関西学院大学法科大学院教授 |
会長職務代理者 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
委員 | 稲葉 一将 | 愛知学院大学法学部講師 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 松井 真理子 | 四日市大学総合政策学部助教授 |