三重県個人情報保護審査会 答申第46号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非利用停止等決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成20年6月2日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「総合税システムに登録された開業年月日」の利用停止等請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成20年6月11日付けで行った非利用停止等決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立人の主張
異議申立人が利用停止等請求書及び異議申立書において主張している内容は、以下のように要約される。
- S11.11.11に開業した日となっているが、出生していない日であり、誤っていることが明らかである。
- 条例第7条第2項には、「本人から収集しなければならない」とあるが、本人から収集していない。また、同条同項ただし書きの第2号(法令又は条例の規定に基づくとき)を除くいずれにも該当せず、同条同項第2号に該当する場合を除いては条例第7条に違反して収集されていることになる。私の知る限り、法令、条例で県税事務所が本人以外から開業年月日の情報を収集できる根拠となるものはない。結果として、本決定通知書の理由は誤りである。
4 実施機関の主張
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
異議申立人が利用停止を請求した個人事業税の「開業年月日」については、「S11.11.11」と表示されている。これは、総合税システムの作業手順上、この欄への入力は必須となっていたため、開業年月日が不明の時は、事務処理上便宜的に「111111」と入力することとしていた為であり、本件も同様の処理をしている。条例第37条は、条例第7条の規定に違反して収集又は条例第8条の規定に違反して利用又は提供、及び条例第9条の規定に違反して提供されている場合に利用停止等を請求できるとしている。本件では開業年月日が不明であることから、従来からの取扱いにより「111111」と入力したものであり、条例7条に違反して収集したものではない。また、第8条、第9条に違反している事実も無く、異議申立人の請求は根拠のないものである。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった保有個人情報並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 保有個人情報の利用停止等請求権について
条例第37条は、開示を受けた自己を本人とする保有個人情報が、第7条(収集の制限)に違反して収集されたと認めるとき、又は第8条(利用及び提供の制限)若しくは第9条(オンライン結合による提供の制限)に違反して利用又は提供されていると認めるときは、その消去又は利用若しくは提供の停止を請求することができることを明らかにしたものである。
(2) 保有個人情報の利用停止等義務について
条例第39条は、「実施機関は、利用停止等請求があった場合において、必要な調査を行い、当該利用停止等請求に理由があると認めるときは、当該実施機関における個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で、当該利用停止等請求に係る保有個人情報の利用停止等をしなければならない。」と規定している。
(3) 本件対象保有個人情報について
本件対象保有個人情報は、異議申立人の個人事業税に係る県税事務所の総合税システムに登録された「開業年月日」である。
(4) 保有個人情報の非利用停止等の妥当性について
(1)で述べたとおり、保有個人情報の利用停止等については、条例第7条、条例第8条、又は条例第9条に違反して収集、利用又は提供されているときに請求することができる旨が規定されている。
条例第7条第2項は、「実施機関は、個人情報を収集するときは、本人から収集しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、このかぎりでない。(各号の記載は省略)」と規定している。
異議申立人は、「開業年月日(S11.11.11)」は本人から収集しておらず、また、条例第7条第2項のただし書きのいずれにも該当しないから同条同項に違反して収集していると主張する。
しかしながら、実施機関の説明によると、開業年月日が「S11.11.11」と表示されているが、これは総合税システムの作業手順上、この欄への入力は必須となっており、また、現存する年月日しか入力できなかったため、開業年月日が不明の時は、事務処理上便宜的に「111111」と入力したものであるとのことである。
したがって、本件対象保有個人情報はそもそも収集した個人情報ではないことから、実施機関が条例第7条第2項に違反して収集したものとは認められない。また、実施機関が条例第7条第1項、同条第3項、第8条第1項、同条第2項あるいは第9条に違反している特段の事情は認められない。
(5) 結論
よって、主文のとおり答申する。
(6) 付言
開業年月日が「S11.11.11」と登録されている本件対象保有個人情報を県民等が見た場合、昭和11年11月11日に開業したことを示していると解するのは当然と考えられる。課税データのように県民等に示すことも予想されるデータを扱うシステム開発等においては、県民等がデータを見てもその意味を誤解することのないようなシステムの仕様とするよう留意されたい。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成20年 6月 24日 | ・ 諮問書の受理 |
平成20年 6月 24日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成20年 7月 7日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成20年 7月 7日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成20年 8月 1日 | ・ 書面審理・ 実施機関の補足説明・ 審議(第60回個人情報保護審査会) |
平成20年 8月 28日 | ・ 審議(第61回個人情報保護審査会) |
平成20年 9月 26日 | ・ 審議・ 答申(第62回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科准教授 |
委員 | 安田 千代 | 司法書士、行政書士 |