三重県個人情報保護審査会 答申第45号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年11月18日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った以下の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年12月2日付けで行った不存在決定の取消しを求めるというものである。
請求者の免職取り消しについての人事委員会の申し立てにおける処分者実施機関平成○年○月○日提出の再答弁書6ページ24行目「実施機関に申立人の状況を見てもらうべく連絡した。」とあるが、実施機関がこれに応じて請求者の状況を見るために出張した
①出張伺い、報告書など
②校長と教育委員会との連絡の内容
③②に応じて請求者の状況を見る行動を起こすにいたった経過を示す資料
④請求者に、請求者の状況を見るために実施機関が出張することを告知する資料
⑤①~④のほか、これら請求者の状況を見るために実施機関が出張したことに関するすべての資料
3 実施機関の不存在理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
平成○年○月○日の出張については、校長から電話で要請があったため行ったもので、訪問内容メモ及び旅行命令書等が存在するのみであり、校長との連絡内容や経緯を示す資料は作成されず、同日に実施機関の者が学校へ出張することを請求者に告知した事実はない。また、請求者の状況を見るために実施機関が同日以外に出張した事実はない。したがって、それらについての資料は存在しない。
平成○年○月○日の出張は処分を課す前提の調査ということではなく、単に要請があったため学校訪問したものである。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書及び意見書において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
異議申立人が開示を求めたのは、異議申立人が異常であるという校長から実施機関への報告の記録、これに応じて実施機関が「善処」するために異議申立人の様子を見に行くための出張を行うに至った過程を示す資料、当該出張について告知した資料、その他、これらに関するすべての資料である。
これらは異議申立人に不利益処分を与えるための異議申立人につき様子を見に行く過程の資料である。不利益処分を予定するためにはその根拠となる異議申立人の異常性が全く記録されていないということはありえず、不存在ということはありえない。
また、不利益処分を与えるために異議申立人につき様子を見に行く過程とは実施機関による聴聞である。聴聞を行う際には処分を受ける者の防御、弁明の準備を行う機会を保証するため告知が行わなければならない。したがって、告知の書類が不存在ということはありえない。
さらに、実施機関は異議申立人による人事委員会への免職処分取り消しの申し立ての再答弁書にて「異議申立人の異常性を確認したため『善処する』こととした」と主張しているのであるから、「善処」の処理資料がないということはありえない。
実施機関は再答弁書で、状況を見てもらうべく報告し、その上でなされた学校訪問は異議申立人の告知聴聞の機会であるとする情報開示を既に行っている。したがって、実施機関が開示した資料は異議申立人が求めた資料ではないことは明らかである。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本決定の妥当性について
異議申立人は、平成○年○月○日の出張について、異議申立人に不利益処分を与えるための出張であると主張し、告知、聴聞など処分に係る資料が不存在ということはありえないと主張する。
しかしながら、実施機関の説明によると、本件出張は異議申立人の不利益処分を前提としたものではなく、校長からの電話連絡により実施機関の職員が出張したものであるとのことであり、この説明を不合理とする特段の事情は認められない。
したがって、「訪問内容メモ及び旅行命令書等が存在するのみであり、校長との連絡内容や経緯を示す資料は作成されず、平成○年○月○日に実施機関の者が学校へ出張することを請求者に告知した事実はない。また、請求者の状況を見るために実施機関が同日以外に出張した事実はない。したがって、それらについての資料は存在しない。」との実施機関の主張に不自然な点は認められず、実施機関の行った不存在決定は妥当であると認めざるを得ない。
なお、請求内容の「①出張伺い、報告書など」について、実施機関は既に部分開示した個人情報と同一であるとする決定を行っているが、当該決定に関し、異議申立人はそれが求めた資料ではない旨主張している。しかしながら、訪問内容メモ及び旅行命令書等が存在するのみとの実施機関の説明は上記のとおり特段不自然なものとは認められず、当該決定についても不当とすることはできない。
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成18年7月11日 | ・ 諮問書の受理 |
平成18年8月7日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成18年8月17日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成18年 8月28日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成18年 9月1日 | ・ 意見書の受理 |
平成20年 6月30日 | ・ 書面審理・ 実施機関の補足説明・ 審議(第59回個人情報保護審査会) |
平成20年 8月1日 | ・ 審議(第60回個人情報保護審査会) |
平成20年 8月28日 | ・ 審議・ 答申(第61回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科准教授 |
委員 | 安田 千代 | 司法書士、行政書士 |