三重県個人情報保護審査会 答申第31号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非訂正決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年9月22日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の県立学校長及び教頭が作成した平成12年11月27日開催の「校務検討委員会」会議状況及びテープ取り上げ状況に関する陳述書」(以下「陳述書」という。)の個人情報訂正請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年10月24日付けで行った非訂正決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立人の主張
異議申立人が訂正請求書、異議申立書及び理由説明書において主張している内容は、以下のように要約される。
陳述書4ページ15行目の異議申立人の発言とされる「警察呼びます。警察呼びますよ。」の発言は、その状況を録音したテープを精査したところ録音されていなかった。録音されていないのであるから、その発言は事実であるはずがない。「警察呼びます。警察呼びますよ。」との発言は校長らの創作であり、陳述書は虚偽の記載がなされたものである。
4 実施機関の主張
実施機関が非訂正決定通知書、理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、次のように要約される。
陳述書は平成12年11月当時の特定の県立学校長及び教頭によって作成され、裁判の証拠として提出されたものであり、事実に基づいている。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった文書並びに異議申立人が提出した録音テープ及び録音テープの反訳書、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
なお、条例は平成17年3月28日に改正され、改正後の条例は平成17年10月1日から施行されているが、本件異議申立てに係る個人情報訂正請求は平成17年9月24日(平成17年9月22日付け)に行われていることから、当該請求については三重県個人情報保護条例及び三重県情報公開条例の一部を改正する条例(平成17年三重県条例第6号)附則第3項により、改正前の条例が適用される。
(1) 個人情報の訂正請求権について
条例第27条は、「何人も第24条第1項又は第25条第3項の規定により開示を受けた自己に関する個人情報に事実の誤りがあると認めるときは、当該実施機関に対し、その訂正(追加及び削除を含む。以下同じ。)を請求することができる。」と規定し、実施機関から開示を受けた自己に関する個人情報に事実の誤りがあると認めるときは、その訂正を請求することを権利として認めている。
(2) 訂正請求の手続
条例第28条は、第1項で「訂正請求をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した請求書(以下「訂正請求書」という。)を実施機関に提出しなければならない。」と規定し、同項第1号に「訂正請求をしようとする者の氏名及び住所並びに代理人による訂正請求の場合にあっては本人の氏名及び住所」、同項第2号に「訂正請求に係る個人情報を特定するために必要な事項」、同項第3号に「訂正請求の内容」と定めている。
また、同条第2項は、「訂正請求をしようとする者は、実施機関に対し、訂正請求の内容が事実と合致することを証明する書類等を提示しなければならない。」と規定している。
(3) 個人情報の訂正義務について
条例第29条は、「実施機関は、訂正請求があったときは、必要な調査を行い、当該訂正請求の内容が事実と合致することが判明した場合は、当該訂正請求に係る個人情報が次の各号のいずれかに該当するときを除き、当該個人情報の訂正をしなければならない。」と規定し、同条第1号で「法令等の定めるところにより訂正をすることができないとされているとき」、同条第2号で「実施機関に訂正の権限がないとき」、同条第3号で「その他訂正をしないことについて正当な理由があるとき」と定めている。
(4) 本件対象個人情報について
本件対象個人情報は、特定の県立学校長及び教頭が異議申立人から録音中のテープレコーダーを取り上げ、その録音されたテープをもとに校長及び教頭と異議申立人とのやりとり及び会話状況等を記載した陳述書の4ページ15行目の異議申立人の発言とされる「警察呼びます。警察呼びますよ。」の記載である。
(5) 個人情報の非訂正の妥当性について
異議申立人は、訂正請求の内容が事実と合致することを証明するものとして、録音テープと同テープの反訳書を提出し、テープには「警察呼びます。警察呼びますよ。」の発言は録音されていなかったと主張している。
しかし、当審査会で録音テープを聴いたところ、「警察呼びます」という趣旨の発言を2回聴取することができた。
したがって、陳述書の「警察呼びます。警察呼びますよ。」との記載に対する本件訂正請求については、前述のとおり、「警察呼びます」という趣旨の発言を聴取できたことから、訂正請求の内容が事実と合致するものとは認められないため、実施機関の行った非訂正決定は妥当である。
なお、本件においては訂正請求の内容が事実と合致することを証明するものとして、録音テープと同テープの反訳書が提出されているが、そもそも録音テープについては改変が容易であり、録音テープに「警察呼びます」という趣旨の発言がなかったとしても、これらのみで事実が証明されたと認めるのは困難であることを付言する。
(6) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成18年6月27日 | ・ 諮問書の受理 |
平成18年7月10日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成18年7月19日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成18年8月4日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成18年8月15日 | ・ 意見書の受理 |
平成19年 1月29日 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第42回個人情報保護審査会) |
平成19年 2月21日 | ・ 審議 (第43回個人情報保護審査会) |
平成19年3月23日 | ・ 審議 ・ 答申 (第44回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科助教授 |
委員 | 安田 千代 | 司法書士、行政書士 |