三重県個人情報保護審査会 答申第26号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年9月16日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年度、請求者に対して『退職勧奨』を教育長が決裁した文書」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年9月29日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
(1) 本件対象公文書中、送付文書(第11号様式)には「日付」は記入されていないが、これは決裁文書の1枚目の左上方にある「文書の日付」欄に記載されている日付を同送付文書に記入するということであり、開示した文書に誤り等はない。
また、送付文書(第11号様式)の「報告」、「1」~「6」の内容については、最後の文書に書かれた各教員に関する情報を転記するということであり、異議申立人に係る情報はすべて開示している。他の教員に関する情報は異議申立人以外の個人情報であるので非開示となる。
(2) 異議申立人は、実施機関が開示した文書は公文書作成の案としての内部文書であると主張しているが、開示した文書が決裁文書であり、実施機関が保有しているのはこの文書のみである。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書、意見書及び口頭意見陳述において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。 実施機関が開示した「退職勧奨」を教育長が決裁した文書は、1枚目は決裁印が押されており、公文書であると認めるが、2枚目の通知文書(第11号様式)の日付・個人の退職勧奨の事実の記載がなく、公文書作成の案としての内部文書であって公文書とは認められない。決裁文書としては正式に通知する文書を保存しなければならず、保存されるべきものが公文書である。公文書としての決裁文書の開示を求める。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった個人情報並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本件対象個人情報について
本件異議申立てに係る対象個人情報は、実施機関が平成17年9月29日付け教委第20-319号で個人情報部分開示決定を行った③の文書(以下「本件文書」という。)中、送付文書(第11号様式)の「日付」、「報告」及び「1」から「6」までの記載内容であると認められる。
なお、実施機関が非開示とした異議申立人以外の第三者の個人情報については、異議申立人は異議を申立てておらず、本件対象個人情報とはなっていない。
(2) 本決定の妥当性について
異議申立人は、本件文書の2枚目に添付された送付文書(第11号様式)の「日付」と「報告」及び「1」から「6」の記入欄に記述がないことから、決裁印が押印された本件文書の1枚目を除く2枚目以降は公文書作成の案としての内部文書であり、公文書ではないと主張している。
当審査会において、本件文書を確認したところ、本件文書の1枚目の教育長の決裁印が押された文書と2枚目以降に添付された文書は一体のものとして起案され、決裁されたものであると認められる。したがって、本件文書の2枚目以降についても公文書であり、総体として教育長の決裁文書であると認められる。
また、送付文書(第11号様式)の「日付」と「報告」及び「1」から「6」の記入欄が空欄となっているが、実施機関が説明するように、送付文書(第11号様式)の「日付」は本件文書の1枚目の「文書の日付」欄に記載されており、また、「報告」及び「1」から「6」については本件文書の末尾にある別表の内容を転記して読むことができるので情報としては開示しているものと認められる。このように起案文で文書の様式を示し、記載される内容を別記あるいは別表とする起案の仕方もありえることであり、実施機関が開示した本件文書でどのような内容を記載するかは明白であることから、異議申立人が求める個人情報は開示しているものと認められる。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成17年12月26日 | ・ 諮問書の受理 |
平成17年12月27日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成18年 2月2日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成18年 2月3日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成18年 3月3日 | ・ 意見書の受理 |
平成18年 7月10日 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第36回個人情報保護審査会) |
平成18年 8月10日 | ・ 異議申立人の口頭意見陳述 ・ 審議 (第37回個人情報保護審査会) |
平成18年 9月11日 | ・ 審議 ・ 答申 (第38回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科講師 |
委員 | 安田 千代 | 司法書士、行政書士 |