三重県個人情報保護審査会 答申第17号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非訂正決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成17年2月24日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「職員一同から提出された要望書」の個人情報訂正請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成17年3月18日付けで行った非訂正決定の取消しを求めるというものである。
3 異議申立人の主張
異議申立人が訂正請求書、異議申立書及び意見書において主張している内容は、以下のように要約される。
(1) 当該要望書は公務員により作成された文書であるから公文書である。どのような経緯で提出されようと、事実に反する個人情報が同文書に存在し、それにより異議申立人は誹謗中傷されているわけであるから、即刻、訂正されるべきである。
(2) 平成11、12年度には病気入院または不登校になった生徒への家庭訪問は、平成17年2月21日付けで開示された「平成12年12月13日に教諭が生徒宅を訪問した際の旅行命令簿及び復命書」を見ればわかるように、平成12年12月13日に一度しか実施されていない。また、異議申立人は家庭訪問が実施された平成12年12月13日を含む前後の期間は休暇を取得しているのであるから、出張を拒んだという記述は虚偽である。
4 実施機関の主張
実施機関が非訂正決定通知書、理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
(1) 当該要望書は、異議申立人の処遇に関して学校職員一同から実施機関に提出されたものであるが、実施機関あるいは校長の職務上の命令を受けて作成されたものではない。そもそも校長以外の職員に同僚の人事上の処遇について実施機関に要望・具申するような権限はなく、学校職員の有志が任意で提出した私信であると考えられる。このため、仮にその記載内容に事実に反する部分があったとしても実施機関には訂正する権限がない。
(2) 異議申立人は、病気入院または不登校になった生徒への家庭訪問は旅行命令書がある平成12年12月13日に一度しか実施されていないと主張しているが、口頭による旅行命令も行われるので、旅行命令書がないからといって出張がなかったとは言えない。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった個人情報並びに異議申立人が提出した「訂正請求の内容が事実と合致することを証明する書類」、異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 個人情報の訂正請求権について
条例第27条は、「何人も第24条第1項又は第25条第3項の規定により開示を受けた自己に関する個人情報に事実の誤りがあると認めるときは、当該実施機関に対し、その訂正(追加及び削除を含む。以下同じ。)を請求することができる。」と規定し、実施機関から開示を受けた自己に関する個人情報に事実の誤りがあると認めるときは、その訂正を請求することを権利として認めている。
(2) 個人情報の訂正義務について
条例第29条は、「実施機関は、訂正請求があったときは、必要な調査を行い、当該訂正請求の内容が事実と合致することが判明した場合は、当該訂正請求に係る個人情報が次の各号のいずれかに該当するときを除き、当該個人情報を訂正しなければならない。」と規定し、同条第1号で「法令等の定めるところにより訂正をすることができないとされているとき。」、同条第2号で「実施機関に訂正の権限がないとき。」、同条第3号で「その他訂正をしないことについて正当な理由があるとき。」と定めている。
(3) 本件対象個人情報について
本件対象個人情報は、平成13年2月27日付けで職員一同から三重県教育委員会教職員課長宛に提出された異議申立人の処遇に関する要望書において、異議申立人が、入院した生徒の様子を見に行こうとする申し出を拒んだという旨、及び不登校になった生徒の家庭訪問を拒んだという旨の記述である。
(4) 個人情報訂正の要否について
実施機関は、当該要望書が任意で提出された私信であることから、実施機関に訂正する権限がないと主張している。
しかし、条例第29条第2号の「訂正の権限がないとき」とは、市町村長が発行した証明書や民間の診療機関が作成した診断書等のように実施機関以外のものが自らの権限と責任で作成したもので、実施機関に訂正する権限がないものを想定していることから、実施機関の非訂正の理由は適当ではなく、実施機関が作成した公文書のみならず、県民等から収受した文書であっても公文書として訂正の対象となると考えられる。
一方、異議申立人は、訂正請求の内容が事実に合致することを証明する書類として、異議申立人が平成17年2月21日付けで開示を受けた「平成12年12月13日に教諭が生徒宅を訪問した際の旅行命令簿及び復命書」を提示して、病気入院または不登校になった生徒宅への家庭訪問は一度しか実施されていなかったと申し立てるとともに、家庭訪問が実施された平成12年12月13日を含む前後の期間は休暇を取得していたと申し立て、したがって、異議申立人が出張を拒んだという記述は虚偽であると主張している。
しかし、実施機関の説明によれば、職員に対する旅行命令は口頭による場合も多くあり、そのことからすれば、家庭訪問等の出張が平成12年12月13日の一度だけであったとは限らない。したがって、異議申立人の提示した書面だけでは訂正請求の内容が事実に合致していると判明したとは言えない。
(5) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
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平成17年4月25日 | ・ 諮問書の受理 |
平成17年 4月28日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成17年 4月28日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成17年 5月9日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成17年 10月25日 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 審議 (第28回個人情報保護審査会) |
平成17年 11月28日 | ・ 審議 (第29回個人情報保護審査会) |
平成18年 1月10日 | ・ 審議 ・ 答申 (第30回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 藤野 奈津子 | 三重短期大学法経科講師 |