三重県個人情報保護審査会 答申第14号
答申
1 審査会の結論
「三重県指導力向上支援判定委員会及び職員分限審査委員会の委員の発言内容を記録した議事録」について、実施機関が行った不存在決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年11月8日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例 」という。)に基づき行った「平成15年7月1日の三重県指導力向上支援判定委員会の議事録、平成16年2月16日の三重県指導力向上支援判定委員会の議事録及び平成16年3月22日の職員分限審査委員会の議事録の要旨のまとめでなく委員の発言の議事録」の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成16年11月19日付けで行った不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の不存在理由説明
実施機関が理由説明書及び口頭による理由説明において主張している内容は、以下のように要約される。
(1) 三重県指導力向上支援判定委員会の議事録について
三重県指導力向上支援判定委員会は、指導力不足等教員の認定及び当該教員の人事上の措置の決定の過程で、より慎重な審査を行うことを目的として実施機関の事務局内部で開催された委員会である。当該委員会は、その設置の必要性が法令等で規定されたものではなく、そこでの審査は実施機関内部で日常的に行われている業務の一部としての性格が強い。また、当該教員に関る詳細な資料をもとに審査が進められているため、その後の指導力不足等教員の対応に伴う業務を行うに当たっては、その資料と当該委員会の審査内容のまとめだけで十分であり、委員名及び発言内容の詳細な記録を作成する必要はない。
(2) 職員分限審査委員会の議事録について
職員分限審査委員会は、分限処分に関する議案を教育委員会定例会に提出する前の段階で、より慎重な審査を行うことを目的として実施機関の事務局内部で開催される委員会である。当該委員会は、その設置の必要性が法令等で規定されたものではなく、そこでの審査は実施機関内部で日常的に行われている業務の一部としての性格が強い。また、当該教員に関する詳細な資料をもとに審 査が進められているため、その後の分限処分に伴う業務を行うに当たっては、その資料と当該委員会の審査内容のまとめだけで十分であり、委員の発言内容の詳細な記録を作成する必要はない。
4 異議申立ての理由
異議申立人が異議申立書、意見書及び口頭による意見陳述において主張している異議申立ての主たる理由は、以下のように要約される。
三重県指導力向上支援判定委員会及び職員分限審査委員会は、実施機関が自ら法的根拠に基づき設置した委員会であって、日常的な業務と異なり、指導力不足等教員の研修後の措置や分限処分の審査を厳正・公正に議論したことを証明する責任がある。そのために議論の内容を記録した議事録が必要であり、議事録がないのは不自然である。
5 審査会の判断
当審査会は、異議申立ての対象となった個人情報並びに異議申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
(1) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立ての趣旨は、三重県指導力向上支援判定委員会及び職員分限審査委員会のそれぞれの審査内容をまとめたものが存在するのに、委員の発言内容を記録した議事録が不存在であるはずがなく、不自然とした点であると認められる。
まず、三重県指導力向上支援判定委員会について、実施機関の説明を踏まえ、提出された当該委員会の資料及びその協議内容のまとめを確認し、検討したところ、当該委員会の運営の実態は、委員の議論によって意思形成されるようなものではなく、これまでの審査手続き等に何らかの形式的な不備がないかを最終的に確認し、決定するというものであると認められる。このような実態においては協議概要及び結果を取りまとめた「指導力向上支援判定委員会協議まとめ」のみを作成し、委員の発言内容を記録した議事録が作 成されなかったとしても不自然ではないと認められる。したがって、委員の発言内容を記録した議事録について不存在とした実施機関の決定は妥当なものと言える。
次に、職員分限審査委員会について、実施機関の説明を踏まえ、提出された当該委員会の資料及びその審査内容のまとめを確認し、検討したところ、当該委員会は職員の分限事由を審査し、その結果を教育長に報告するために実施機関の事務局内部に設置されたものであるが、当該委員会の運営の実態は、事務局から詳細な資料の説明を受けるとともに、対象職員に対する分限処分の原案の確認を行うというものであると認められる。このような実態においては、当該委員会の出席委員や審査の際の意見の概要及び表決の結果が記された「教育委員会職員分限審査委員会議事録」のみを作成し、委員の発言内容を記録した議事録が作成されなかったとしても不自然ではないと認められる。したがって、委員の発言内容を記録した議事録について不存在であるとした実施機関の決定は妥当なものと言える
(2) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1 審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成16年12月22日 | ・ 諮問書の受理 |
平成16年12月27日 | ・ 実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
平成17年 3月11日 | ・ 理由説明書の受理 |
平成17年 3月15日 | ・ 異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
平成17年 7月28日 | ・ 書面審理 ・ 実施機関の補足説明 ・ 異議申立人の口頭意見陳述 ・ 審議 (第25回個人情報保護審査会) |
平成17年 8月23日 | ・ 審議 (第26回個人情報保護審査会) |
平成17年 9月22日 | ・ 審議 ・ 答申 (第27回個人情報保護審査会) |
三重県個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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会長 | 浅尾 光弘 | 弁護士 |
委員 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 松井 真理子 | 四日市大学総合政策学部教授 |