三重県情報公開・個人情報保護審査会 答申第31号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、審査請求人が平成30年9月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、「特定の漁業協同組合に対して県が実施した監査において、漁業協同組合内の資格審査委員会が適法に審査をしているか否かを県がどのように監査をしたのかがわかる一切の情報及び資格審査委員会における審査の状況がわかる資料」についての開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成30年10月9日付けで行った公文書部分開示決定の取消しを求めるものである。
3 審査請求の理由
審査請求書及び意見陳述における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
本件部分開示決定は、不開示とすべきではないものを、不開示としたもので、違法な処分であり、取り消されるべきである。
ある漁業協同組合の組合員資格について、漁業協同組合内で資格審査委員会を設置し、審議することとなっているが、正しく審議が行われているのか疑わしい。県が水産業協同組合法に基づく常例検査において、組合員資格があるかどうかの資料を適正に検査しているかどうかチェックするため、開示を求める。
4 本件対象公文書について
本件審査請求の対象となっている公文書は、実施機関が漁業協同組合に対して実施した常例検査の復命書である「検査報告書」及び検査結果を同組合に交付する「検査書」(以下「本件対象公文書」という。)である。5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。今回非開示とした検査報告書及び検査書の「指摘事項の項目を除く情報」は、検査の結果、法令等の規定に基づき組合の運営上、是正若しくは改善の必要があると認められる事項であり、公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる条例第7条第3号で規定する法人情報と判断した。また関係法規等として、根拠となる法令や組合の定款を記載しているが、その他に規約、規程等の条文を記載している。これらを開示することによって、指摘内容を推測され、法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるので非開示とした。
さらに、漁業を営む個人の氏名、営む漁業種類、水揚げ日数、水揚げ金額等を記載しており、これらの記述が組み合わされることにより、特定の個人が識別され得る情報となること、また、特定の個人の財産状況であるとも認められるため、条例第7条第2号で規定する個人情報でもあると判断した。
なお、過去には「農業協同組合法に基づく常例検査の結果」の非開示決定に対する異議申立事案において、三重県情報公開審査会から答申第111号が出されており、今回の対象公文書については類似案件であることから、この答申内容を踏まえ、指摘事項の項目のみ開示を行っている。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
しかしながら、法人等に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康または財産を保護し、又は違法若しくは著しく不当な事業活動によって生ずる支障から県民の生活を保護するために公にすることが必要であると認められる情報、及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書きにより、常に公開が義務付けられることになる。
(3)条例第7条第3号(法人情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号(法人情報)に該当するとして非開示としたのは、実施機関が漁業協同組合に対して行った常例検査の検査報告書又は検査書における指摘事項の項目以外の情報である。
本件対象公文書に記載されている指摘事項の項目以外の情報については、当該法人に対して運営上是正若しくは改善の必要性を関係法規等に照らし指摘したものであるため、公にすることにより、当該漁協の社会的評価に影響を与え、今後の当該漁協の事業活動に支障を及ぼす場合があると考えられ、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるので、本号本文に該当し、同号ただし書の情報に該当するとは認められないので、非開示が妥当である。
なお、非開示部分には漁業を営む個人の氏名、営む漁業種類、水揚げ日数、水揚げ金額等が記載されている部分が存在する。実施機関はこれらの情報は、特定の個人が識別され得る情報となること、また、特定の個人の財産状況であるとも認められるため、条例第7条第2号で規定する個人情報でもあると判断したが、審査会はこれらの情報は、事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることによって、事業を営む個人の名誉や社会的評価が損なわれると認められ、当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるので、条例第7条第2号には該当せず、条例第7条第3号本文に該当すると判断する。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
30.11.12 |
・諮問書及び弁明書の受理 |
30.11.14 | ・実施機関に対して、対象公文書の提出依頼 |
30.12. 7 | ・実施機関に対して、意見書の提出依頼 ・審査請求人に対して、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
31. 4.24 | ・書面審理 ・審査請求人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (令和元年度第1回第1部会) |
1. 5.29 | ・審議 (令和元年度第2回第1部会) |
1. 6.26 |
・審議 |
三重県情報公開・個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 |
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※会長 (第一部会部会長) |
髙橋 秀治 |
会長職務代理者 (第二部会部会長) |
岩﨑 恭彦 |
※委員 | 内野 広大 |
※委員 |
川本 一子 |
※委員 | 仲西 磨佑 |
委員 | 片山 眞洋 |
委員 | 坂口 知子 |
委員 |
山崎 美幸 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。