三重県情報公開・個人情報保護審査会 答申第21号
答申
1 審査会の結論
実施機関は本件審査請求の対象となった公文書のうち、当審査会が開示妥当と判断した部分を除き、非開示とすることが妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、開示請求者が平成29年11月9日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「H25~H29までの特定自治体内での浄化槽点検・清掃の会社別基数がわかる情報」についての開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、審査請求人(開示請求者ではない者)の情報が含まれる浄化槽保守点検報告書を対象公文書(以下「本件対象公文書」という。)として特定し、平成29年12月11日付けで開示請求者に対して行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)について、条例第17条第1項に規定する第三者である審査請求人が取消しを求めるというものである。
3 本件審査請求について
実施機関は、本請求に際し、本件対象公文書に審査請求人の情報が含まれていることから、条例第17条第1項の規定に基づき、審査請求人に対して意見照会を行った上で、本決定を行った。実施機関は本決定を行うと同時に、反対意見書を提出した審査請求人に対し、条例第7条第3号(法人情報)に該当しないとの理由で条例第17条第3項の規定に基づき本件対象公文書を開示する旨を通知したところ、審査請求人から非開示とすることを求めて本件審査請求が提起された。
なお、本請求を行った開示請求者に対しては、本件審査請求に係る裁決に至るまで開示を停止する旨の通知がなされている。
4 審査請求の理由
審査請求書及び反論書における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
同業者からの開示請求であり、自社利益の為だけに地域住民の情報を搾取しようとしているように思え、そのように使われるために県へ自社情報を提供している訳ではない。
報告書に記載されている情報を公にすることにより、当社の売上げに関する情報に直結するため、競争上の地位その他正当な利益を害する可能性が非常に高い。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。「浄化槽保守点検報告書」は、三重県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例施行規則(昭和60年三重県規則第48号)の規定に基づき、年度ごとに保守点検業者から提出され、①報告者、②登録番号、③登録年月日、④報告者の市町毎の1年間の保守点検実施件数、⑤報告者の市町毎の1年間の延べ保守点検実施回数が記載されている。
①~③については、三重県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例(昭和60年三重県条例第26号)の規定により、何人にも閲覧に供されている情報であることから開示が妥当である。
④、⑤については、審査請求人が述べる地域の特性を加味してもなお、顧客の特定が可能であるとは考えにくく、独自の顧客情報やノウハウなどに代表される法人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められないことから、条例第7条第3号に該当せず、開示が妥当である。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本件対象公文書について
三重県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例施行規則第10条では、「浄化槽保守点検業者は、毎年4月30日までに、その年の3月31日以前の1年間に行った浄化槽の保守点検の件数を浄化槽保守点検報告書により知事に報告しなければならない。」と規定しており、本件対象公文書は、これに基づいて浄化槽保守点検業者が、実施機関に報告した「浄化槽保守点検報告書」である。
浄化槽保守点検報告書には、報告者(浄化槽保守点検業者)の住所、氏名(名称)、登録番号、登録年月日が記載されているとともに、保守点検実施件数として、市町別、単独合併別・処理対象人員の区分別の実施基数及び延べ実施回数が記載されている。
審査請求人は、本件対象公文書に記載されている情報は条例第7条第3号に該当すると主張しているため、当審査会において本件対象公文書を見分した結果を踏まえ、非開示情報該当性を検討する。
(3)条例第7条第3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。「競争上の地位その他正当な利益」とは、法人等の公正な競争関係における地位、ノウハウ及び信用等の運営上の地位を広く含むものである。したがって、財産権のほか、信教の自由、集会・結社・表現の自由など当該法人の有する憲法上の権利等の非財産的権利を含む法律上の権利がすべて含まれると解される。(4) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について
ア 報告者(浄化槽保守点検業者)の住所、氏名(名称)、登録番号、登録年月日三重県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の規定によると、知事は、「浄化槽保守点検業者登録簿」に浄化槽保守点検業者の情報を登録し、この「浄化槽保守点検業者登録簿」は、何人も謄本の交付又は閲覧の請求をすることができるとされている。
当該情報は、「浄化槽保守点検業者登録簿」で明らかになる情報であり、この情報が開示されても、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、開示が妥当であると判断する。
イ 保守点検実施件数
浄化槽保守点検業者ごとの浄化槽保守点検実施件数は、通常、各業者の内部において管理される情報であり、また、実施機関も公表することを目的に「浄化槽保守点検報告書」を取得しているものではないため、一般には知られていない情報である。
そして、当該情報は、浄化槽保守点検業者にとって、1年間における浄化槽保守点検業務の受注実績であり、浄化槽保守点検業者の経営状況を反映するものである。
また、一般的に点検実施件数からは、顧客が誰であるかまでは特定することはできず、本事案においても同様であるものの、当該区域で点検を実施している浄化槽保守点検業者の営業状況を考慮すると、浄化槽の処理対象人員の規模が大きいものについては、その実施件数から浄化槽保守点検業者が受注している顧客を推測することができる。
このような情報が開示されることになれば、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められることから、本号に該当し、非開示が妥当であると判断する。
(5) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
30. 1.29 |
・諮問書及び弁明書の受理 |
30. 2. 2 | ・実施機関に対して、対象公文書の提出依頼 |
30. 2.26 | ・実施機関を経由して審査請求人からの反論書の受理 |
30. 3.27 | ・実施機関に対して、意見書の提出依頼 ・審査請求人に対して、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
30. 5.23 |
・書面審理 (平成30年度第1回第2部会) |
30. 6.27 |
・審議 (平成30年度第2回第2部会) |
三重県情報公開・個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 |
---|---|
会長 (第一部会部会長) |
髙橋 秀治 |
※会長職務代理者 (第二部会部会長) |
岩﨑 恭彦 |
委員 | 内野 広大 |
委員 |
川本 一子 |
委員 | 藤本 真理 |
※委員 | 片山 眞洋 |
※委員 | 木村 ちはる |
※委員 |
村井 美代子 |
なお、本件事案については、※印を付した会長職務代理者及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。