三重県情報公開・個人情報保護審査会 答申第19号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、開示請求者が平成29年9月6日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、「三重県県土整備部建築開発課宅建業・建築士班が特定の宅地建物取引業者に対し行った行政指導の内容を記録した一件書類の再訂正分」についての開示請求に対し、平成29年9月8日付けで三重県知事(以下「実施機関」という。)が行った不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 審査請求の理由
審査請求書、反論書及び意見陳述における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
平成29年7月4日に最初の公文書開示請求を行い、開示された公文書において、「相続財産管理人」という用語について6種類の誤った呼称を使用しており、多数の誤用が認められるとともに、宅地建物取引業法第47条違反の認定に影響する重大な事実誤認が判明した。
用語の誤用及び事実誤認の旨を実施機関に指摘し、対象公文書の修正を求めたうえで、平成29年8月18日に2回目の公文書開示請求を行ったところ、開示された公文書は一部修正が行われていたものの、同様の過誤が認められた。
そこで、再び公文書開示請求を行ったが、不存在を理由に第3回の開示を拒まれた。
2回目に開示された文書にあるように、「当該記述部分は、指導を行うに当たって重要な部分であり、開示請求者の指摘は適切であると思料されるため、当該文書を別紙のとおり修正」と記載されていることから、実施機関は文書を再度修正しているはずである。
平成29年9月1日付けで実施機関から審査請求人に送付された文書には、正しく「相続財産管理人」と記載されているので、誤用していた他の文書も訂正されているはずである。
法律用語を誤用し、法律的にも不備のある公文書を放置するとは到底考えられない。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。審査請求人は、「相続財産管理人」の呼称について、実施機関が誤用しているため、公文書の訂正を主張している。
要望者等との協議記録文書については、実際にその文言を使用して協議していること、宅地建物取引業者に対して報告を求めた依頼文書については、呼称の誤用による公文書の趣旨への影響はないこと、課内における協議文書についても、呼称の誤用による文書の趣旨や意思決定に影響はないことから、公文書の訂正の必要はないと判断している。
公文書の再訂正は行っていないため、本決定を行った。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する
(2)本決定の妥当性について
審査請求人は、実施機関は審査請求人の指摘が適切であると思料されると文書に記載していること、9月1日以降正しい用語を使用した文書が発出されているので、公文書を再修正しているはずと主張している。
実施機関によると、要望者等との協議記録文書については、実際にその文言を使用して協議していること、宅建業者に対して報告を求めた依頼文書については、呼称の誤用による公文書の趣旨への影響はないこと、課内における協議文書についても、呼称の誤用による文書の趣旨や意思決定に影響はないことから、公文書の訂正の必要はないと判断しており、再訂正はしていないと主張している。
このうち再訂正した文書は作成していないという実施機関の説明に特段、不自然、不合理な点は見られず、本決定は妥当であると判断する。
(3)審査請求人のその他主張について
審査請求人は、請求事案が宅地建物取引業法第47条違反と認定できない理由を実施機関は法律的に説明していないと主張しているが、当審査会は条例に基づき実施機関の行った処分についての不服申立てに関し審査するものであるため、当審査会の判断を左右するものではない。(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、審査会として次のとおり意見を申し述べる。
条例第1条では、「県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにする」等、情報公開制度の目的について、同第28条では、「実施機関は、この条例の適正かつ円滑な運用に資するため、公文書を適正に管理するものとする。」と公文書の管理についての責務を規定している。
公文書の適正な管理は、県民への説明責任を果たすために必要なことであるので、実施機関においては、正確な用語を用いて公文書を作成するよう努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
29. 11.15 |
・諮問書及び弁明書の受理 |
29. 11.28 | ・実施機関を経由して審査請求人からの反論書の受理 |
29. 12.28 | ・実施機関に対して、意見書の提出依頼 ・審査請求人に対して、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
30. 1. 4 | ・審査請求人からの意見書の受理 |
30. 1.18 | ・実施機関からの資料の受理 |
30. 2.19 |
・書面審理 (平成29年度第8回第2部会) |
30. 3.28 |
・審議 (平成29年度第9回第2部会) |
三重県情報公開・個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 |
---|---|
会長 (第一部会部会長) |
髙橋 秀治 |
※会長職務代理者 (第二部会部会長) |
岩﨑 恭彦 |
委員 | 内野 広大 |
委員 |
川本 一子 |
委員 | 藤本 真理 |
※委員 | 片山 眞洋 |
※委員 | 木村 ちはる |
※委員 |
村井 美代子 |
なお、本件事案については、※印を付した会長職務代理者及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。