三重県情報公開・個人情報保護審査会 答申第18号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った不存在決定は妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、審査請求人が平成29年4月28日付けで三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った、「平成28年12月21日に提出した知事宛ての要望した文書(表紙のみ添付)についての経過。(4ヶ月たっても書面回答なし)」に係る保有個人情報開示請求に対し、平成29年5月12日付けで三重県知事(以下「実施機関」という。)が行った保有個人情報不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 審査請求の理由
審査請求書及び意見陳述における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
私が平成28年12月21日に提出した知事宛ての要望した文書(以下「本件要望書」という。)について、関係部局内(県土整備部、環境生活部)で過去からの経緯を含めて引き継ぎを行ったり、対応を協議した文書が存在するはずである。
また、私が実施機関に提出した個人情報等の書面、登記事項証明書等の写し及び南勢志摩地域活性化局環境室が作成した業務報告書等が実施機関で保管されているはずであり、国の三重行政評価事務所が平成28年11月2日に開設した「一日合同行政相談所」で、私が平成26年9月より相談していた事項を再度依頼したものと、実施機関の代表者(戦略企画部)にお願いした相談についても、実施機関側で作成した文書が存在するはずである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本件開示請求は、本件要望書に対する経過の開示を求めるものである。
審査請求人は、かねてから隣家の解体工事等により建物損壊等の被害を受けたとして、その対応を要望しており、本件要望書が提出される前から、必要な現場調査や行政指導を行い、複数回に渡って審査請求人にその対応について説明済みであり、関係書類も保有個人情報開示請求や三重県情報公開条例に基づく公文書開示請求により別途開示済みであり、対応は完了している。
よって、本件要望書に対して改めて文書作成は行っておらず、その後記録しておくべき経過事項もなかったことから、本件開示請求時点においては、経過がわかる保有個人情報は存在しない。なお、別途、平成29年8月4日付け審査請求人あて文書により、本件要望書に記載された事項については、本件要望書が提出される以前にすべて対応が完了しており、今後も対応を行う必要はないと判断している旨を回答した。
また、審査請求人は、審査請求人自身が提出した個人情報等の書面、登記事項証明書等の写し及び南勢志摩地域活性化局環境室が作成した業務報告書等が存在すると主張するが、これらの書類は、審査請求人が提出した本件要望書自体であり、その後の対応などを記録した経過に係る文書には該当しない。
次に、三重行政評価事務所が平成28年11月2日に開設した「一日合同行政相談所」で審査請求人が相談した事項についての公文書は、本件要望書の提出日である平成28年12月21日以前のものであり、内容の如何にかかわらず、本件要望書に対する経過に係る文書に該当しないと考えるが、その公文書を保有する戦略企画部に内容を確認したところ、審査請求人が主張する「平成26年9月より相談していた事項に関する記載」はなく、この点においても不存在決定に誤りはない。
5 審査会の判断
当審査会は、審査請求人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のとおり判断する。(1)本決定の妥当性について
ア 本件要望書提出以降について
本件要望書が提出される以前に、実施機関は審査請求人からの要望を受け必要な調査や行政指導を行うなど対応は完了しており、本件要望書に対して新たな文書作成は行っていないとの実施機関の説明に、特に不自然、不合理な点は認められない。
イ 一日合同行政相談に係る文書について
実施機関は、一日合同行政相談に係る文書は本件要望書に対する経過を説明する文書に該当しないと主張していることから、念のため、当審査会が事務局職員をして、戦略企画部が保有する相談記録等を確認させた結果の報告によれば、実施機関の説明のとおり、本件要望書についての経過に係る記述は認められなかった。ウ 本件要望書について
審査請求人の自ら提出した個人情報等の書面等が存在するとの主張に対し、実施機関は、これらの書類は本件要望書自体であって、その後の対応などを記録した経過に係る文書には該当しないと主張していることから、この点について検討する。当審査会において改めて本件開示請求書を確認したところ、「4ヶ月たっても書面回答なし」との記載内容からは、審査請求人は明らかに本件要望書を提出した時点以降に作成された実施機関の対応状況が分かる文書を請求していると解することが相当である。
ところで、本件要望書は、実施機関は審査請求人に返却予定で預かっていたと説明しているが、開示請求時点で4ヶ月以上返却できずに保有しており、一時的に文書を預かっていたとはいえず、文書を現実に支配、管理していたと判断できるため、公文書には該当する。
しかし、実施機関は本件要望書の正式な受理を行っておらず、本件要望書を添付して対応を協議した起案や供覧を行ったり、本件要望書を添付して引継ぎを行う文書も作成していないため、本件要望書は平成28年12月21日以降の実施機関の対応状況が分かる文書には該当しないと判断する。
したがって、本件要望書は経過に係る文書には該当しないとの実施機関の判断は、結果としては妥当である。
(2)審査請求人のその他の主張について
審査請求人はその他種々主張するが、いずれも審査会の判断を左右するものではない。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの意見
当審査会の結論は以上のとおりであるが、審査会として次のとおり意見を申し述べる。
実施機関は、本件要望書を受け取った時点で公文書として取扱い、返却も含めて何らかの対応について起案を行ったり、組織共有のための供覧を行うべきであったと考える。
保有個人情報開示制度が適正に運用されるためには、その前提として、公文書の管理が適正に行われることが不可欠である。実施機関には公文書の適正な管理が望まれる。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
29.11.9 |
・諮問書及び弁明書の受理 |
29.12.22 | ・実施機関に対して、意見書又は資料の提出依頼 ・審査請求人に対して、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
30.1.16 | ・実施機関より資料の提出 |
30.1.31 | ・書面審理 ・審査請求人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (平成29年度第7回第2部会) |
30.2.19 | ・審議 (平成29年度第8回第2部会) |
30.3.28 |
・審議 |
三重県情報公開・個人情報保護審査会委員
職名 | 氏名 |
---|---|
会長 (第一部会部会長) |
髙橋 秀治 |
※会長職務代理者 (第二部会部会長) |
岩﨑 恭彦 |
委員 | 内野 広大 |
委員 |
川本 一子 |
委員 | 藤本 真理 |
※委員 | 片山 眞洋 |
※委員 | 木村 ちはる |
※委員 |
村井 美代子 |
なお、本件事案については、※印を付した会長職務代理者及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。