三重県情報公開審査会 答申第465号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成28年1月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った特定河川における漁業影響調査業務委託に係る特定期間の打合せ記録簿についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成28年1月27日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
異議申立人がこれまでに行った開示請求によって開示された公文書からは、特定期間に打合せが行われていたことが合理的に推測することができ、不存在であるとの判断は事実の認定を誤った不当なものであるため、ただちに対象公文書の全部を開示することを求める。
県が不存在決定を行った理由を検討すると、この打合せは、漁業被害を受けた一部の者に対してのみ補償を行うものであるため、そのような一部の被害者にのみ補償したことが公になると、他に補償を受けていない被害者の反感を買い、さらなる補償の請求へとつながるおそれがあることが、理由として推測される。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本業務は特定河川における災害復旧で発生した濁水が漁業養殖業者へ及ぼす影響について、現地調査を行い、その結果等を基に検討を行う業務である。記録簿の作成については、工損調査仕様書の第32条に「請負者は権利者と面接し、説明を行ったとき等は、その都度、説明の内容及び権利者の主張又は質疑内容等を説明記録簿に記載するものとする」とあり、これを受けて請負業者は第1回から第12回まで記録簿を作成している。今回、異議申立人から開示請求があったのは第13回以降の記録簿だが、この間は請負業者が別途作成した業務日報から確認したが、打合せを行っていないため、記録簿は作成されず、公文書が存在しないため、不存在決定とした。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、自身がこれまでに開示請求をし、開示された公文書から、第13回以降も打合せは行われたと推測することができるため、公文書は存在するはずであると主張する。このことについて実施機関に聴取したところ、過去の開示請求において、第1回から第12回までの打合せ記録簿については開示しており、実施機関としては第13回以降の打合せ記録簿については保有していないことを確認しているとのことである。また、当該事業において、請負業者が権利者と打合せを行った際には、記録簿を作成するように仕様書で義務付けているが、請負業者が実施機関に提出した業務日報を確認したところ、異議申立人が開示を求めている特定期間については、打合せを行った記録は見つからず、不存在と判断したとのことである。この実施機関の説明に特段、不自然・不合理な点は認められず、不存在とした実施機関の判断は妥当である。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
28. 3.31 |
・諮問書の受理 |
28. 4. 5 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
28. 4.26 | ・理由説明書の受理 |
28. 4.27 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
28. 9.13 |
・書面審理 (平成28年度第5回A部会) |
28.10.11 |
・審議 (平成28年度第6回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
※委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。