三重県情報公開審査会 答申第453号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年7月26日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、「昭和60年の換地を正当とする県の回答」についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年8月5日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、平成23年2月7日付け三重県農水商工部農地調整室長回答文書である。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
対象公文書にある黒塗りした非開示部分の取消しを求める。また、昭和60年の換地を正当とする県の回答の内容について異議を申し述べたい。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
本件公文書部分開示決定で非開示とした情報は、開示対象公文書である平成23年2月7日付け三重県農水商工部農地調整室長回答文書の本文中に記載された個人の氏名および土地の地番、地積、そして「特定施設に向かう道路の権利移動一覧」中の旧所有者である。これらの情報は、それ自体が、あるいは登記簿の他の情報と照合することによって特定の個人が識別され得る情報であり、条例第7条第2号に該当することは明らかであるため、非開示とした。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。
(3)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
ア 個人の氏名および土地の地番、地積について
まず、個人の氏名については、特定の個人を識別し得る情報にあたる。また、土地の地番、地積についても、登記簿上で容易に入手可能な他の情報と照合することにより、その地番の所有者が判明することから、特定の個人を識別し得る情報にあたる。したがって、個人の氏名および土地の地番、地積について非開示とした実施機関の判断は妥当である。
イ 「特定施設に向かう道路の権利移動一覧」中の旧所有者について
次に、審査会が本件対象公文書について見分したところ、県は、本件対象公文書により、「特定施設に向かう道路の権利移動一覧」中の旧所有者のいずれかを名宛人として回答したことが認められる。そして、ある者が一定の内容について県から回答を受けたという情報は、その者の個人に関する情報である。そうすると、本件対象公文書において、名宛人以外の所有者はA~Gで表示している旨の記載があることも併せて考えると、「特定施設に向かう道路の権利移動一覧」中の旧所有者の情報は、ある者が一定の内容について県から回答を受けたという個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報にあたる。
したがって、「特定施設に向かう道路の権利移動一覧」中の旧所有者を非開示とした実施機関の判断は妥当である。
(4)異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、昭和60年に行われた換地を正当とする県の回答の内容について異議を主張するが、当審査会は、情報公開条例に基づき実施機関の行った処分についての不服申立てに関し審査するものであって、実施機関における換地処分の手続やその内容等についてまで審査するものではない。(5)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27.10. 1 |
・諮問書の受理 |
27.10. 7 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27.10.14 | ・理由説明書の受理 |
27.10.27 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
28. 2.26 |
・書面審理 (平成27年度第9回B部会) |
28. 3.18 |
・審議 (平成27年度第10回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。