三重県情報公開審査会 答申第447号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年6月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、特定地内の砂防指定地山林の原形復旧が遅れている事実について関係法令にかかる点検、行政手続等、経緯が分る全ての文書についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年7月3日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、「砂防指定地内行為等休止届」(以下「本件対象公文書」という。)である。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
本件不法投棄地は、主たる不法投棄物の撤去は終了したものの、先行した土砂採取時に不法投棄された建設産廃について、事業者は当社の関与したものではないとして撤去を拒否し、義務付けられた埋戻しによる原形復旧を履行しようとせず、現状のまま砂防指定地内作業許可の延伸を図ってきた。
管轄する建設事務所は、砂防法に同許可の延伸制限がない事や環境所管部門との対策に係る協議が整わないことを理由に、徒に作業期間の延伸を認めてきた。当初事業の開始期日や遅延している理由を明示せず、本件事案の経緯を不透明な状態にする隠ぺいに当たる。
本件公文書は、公正を疑うに足りる要件が有るから、事業者の申請に係る文書を訂正させ、所要の決裁を為した上で、再開示すべきである。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
砂防指定地内行為許可を受けている当該地においては、許可申請者が廃棄したものではない建設廃材が埋まっており、その建設廃材を投棄した主体者がわかっておらず、またその扱いが決まっていない状況で、このまま作業を継続することが困難であるという理由で休止届が出されている。
申請者が過去に行った投棄物の撤去は、既に終了していることや、ある程度埋戻しして法面自体も安定させており、砂防における悪影響が現時点では認められない状態で休止届が出されていることから、その届出を受理している。
全ての文書は開示しており、また、これまでの砂防法における手続に瑕疵があったとは考えておらず、決裁をやり直すこともない。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、法の精神に基づいて行政指導が進められておらず、そのような状態でなされた休止届は公正でなく、改善の方法等を記した文書を事業者から提出させた上で、開示すべきと主張している。
これに対し、実施機関は、砂防法における手続に瑕疵はなく、本件開示請求については、本件対象公文書を特定し、開示したと説明している。この実施機関の説明に特段、不自然不合理な点はないと認められ、当審査会としては、本件対象公文書を特定し開示したことは妥当と判断せざるを得ない。
なお、当審査会は、情報公開条例に基づき実施機関の行った処分についての不服申立てに関し審査するものであって、実施機関における行政指導等の手続が砂防法に適合しているか否か等についてまで審査するものではない。
以上のことから、実施機関が行った本決定は妥当である。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
27. 8. 5 |
・諮問書の受理 |
27. 8.12 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 9. 2 | ・理由説明書の受理 |
27. 9.14 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27.12.11 |
・書面審理 (平成27年度第7回B部会) |
28. 1.22 |
・審議 (平成27年度第8回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。