三重県情報公開審査会 答申第446号
答申
1 審査会の結論
実施機関は本件異議申立てに係る本件部分開示決定において非開示とした部分を取り消し、開示すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年6月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った特定地の宅地開発における建設リサイクル法、廃掃法等に基づく廃棄物の処理について分かる全ての文書についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年6月24日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書及び本件非開示部分について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、建設リサイクル法に基づく届出であり、本件対象公文書において、実施機関が非開示とした情報は、土地利用計画平面図等に記載された当該開発事業における設計者の氏名(以下「本件非開示部分」という。)である。
4 異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
建設リサイクル法に基づいて提出された書類の中には虚偽の記載があり、つぶさに検証すれば簡単に見破ることができたにも関わらず、公式に受理したことは不当である。よって、行政品質維持と立法の主旨に鑑み、記載内容を更に精査したうえで、環境部所管課と連携し、正確な書類を再提出させ、または不法投棄を皆無とさせる行政指導を行ってこそ完結されるべきであるから、その旨答申を求める。また、設計者の氏名について、有資格者であるはずであるから、非開示にする理由がない。また、設計者として名前が記載されている者は、責任ある立場であり、法人情報であるから開示すべきである。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
民間企業の設計者の氏名は、条例第7条第2号の個人に関する情報である。また、ただし書のいずれにも該当しないものである。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
本件非開示部分を非開示とした理由について、実施機関に聴取したところ、当該設計者は法人の代表者ではなく、単なる従業員であり、個人が識別できる情報であるため、条例第7条第2号の個人情報に該当すると主張する。
しかし、当該開発事業についてはその開発を行うために別途、三重県知事の許可が必要であり、開発許可を受けた開発行為に係る土地利用計画図は、都市計画法の規定により都道府県知事が調製し、公衆の閲覧に供することとされている「開発登録簿」の登録内容の一部として、都市計画法施行規則第36条第2項に規定されている。このことから、本件非開示部分である設計者の氏名は、法令の規定により公にされるものであるといえる。したがって、本件非開示部分は同号ただし書イに該当すると認められる。
(4)異議申立人のその他の主張について
また、異議申立人はその他種々主張するが、いずれも審査会の判断を左右するものではない。
(5)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 7.22 |
・諮問書の受理 |
27. 7.24 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 8.12 | ・理由説明書の受理 |
27. 8.18 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27.11.10 |
・書面審理 (平成27年度第7回A部会) |
27.12.15 |
・審議 (平成27年度第8回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
※委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。