三重県情報公開審査会 答申第443号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った公文書部分開示決定については、その決定を取り消し、改めて対象公文書を特定し決定すべきである。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年5月19日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、「大明西町内会及び鳥羽市建設課からの干拓堤防補修・改修に係る陳情文書、西堤防が干拓堤防として創設されたにも関わらず突然河川堤防に変更された理由がわかる文書、河川堤防として管理しているのならばその適合基準」についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年5月29日付けで行った公文書開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
河川堤防として管理している適合基準の開示を請求したところ、公文書は不存在との回答だった。県は、平成11年に大明西町西堤防を干拓堤防から河川堤防に変更したが、その理由について住民への説明はなく責任の所在があいまいである。住民はこの堤防により多大な損害と危機感に脅えながら生活している。河川堤防として管理している以上、適合基準や設置基準等の書類があるはずである。
また、西堤防が干拓堤防として創設されたにも関わらず突然河川堤防に変更になった理由がわかる文書については、寄附採納に係る文書の他にも存在するはずである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
実施機関は、開示請求のうち、「河川堤防として管理しているのならばその適合基準」については、河川堤防施設の移管を受ける際の適合基準を請求されているものと判断し、当該公文書は存在しないことから不存在決定をした。
また、県が二級河川加茂川右岸を河川堤防として管理する契機となったのは寄附採納による受納であり、このほかに移管の手続きは規程上存在しない。したがって、河川堤防に変更になった理由がわかる文書を寄附採納の理由が書かれた文書として特定し、開示決定をした。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、「西堤防が干拓堤防として創設されたにも関わらず突然河川堤防に変更された理由がわかる文書」については、寄附採納に係る文書の他にも存在するはずであると主張している。
一方、実施機関は、県が加茂川右岸を河川堤防施設として管理することとなったのは寄附採納による移管によってであり、他に必要な手続きはなかったことから他の公文書は存在しないと主張する。この説明に特段不自然不合理な点はないことから、当審査会としては公文書は不存在と判断せざるを得ない。したがって、実施機関が、「西堤防が干拓堤防として創設されたにも関わらず突然河川堤防に変更された理由がわかる文書」を寄附採納承認に係る文書として特定した判断は妥当である。
次に、異議申立人は河川堤防として管理している以上、適合基準や設置基準等の書類があるはずであると主張する。他方で、実施機関は、「河川堤防として管理しているのならばその適合基準」については、河川堤防施設の移管を受ける際の適合基準は三重県では定められていないため存在しないと主張している。
しかし、請求内容からは、異議申立人は、移管を受ける際の適合基準のみならず設置基準や移管後の現在の河川堤防の管理基準について請求していることは十分に認識できたはずである。この点について、実施機関は請求段階において、開示請求者の意思をよく確認すべきであり、対象公文書についても限定的に捉えることなく幅広く文書を特定すべきであったと言わざるを得ない。
特に、実施機関の説明からは、加茂川右岸を補修改善する際の河川整備計画が存在することは明白であることから、「河川堤防として管理しているのならばその適合基準」を不存在とした実施機関の決定は公文書の特定に不備があり妥当とは言えない。
したがって、実施機関は、本決定を取り消し、再度対象公文書の特定を行ったうえで、改めて決定すべきである。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 7. 6 |
・諮問書の受理 |
27. 7.10 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 7.28 | ・理由説明書の受理 |
27. 7.30 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27. 9.15 |
・書面審理 (平成27年度第5回A部会) |
27.10.27 |
・実施機関の補足説明 (平成27年度第6回A部会) |
27.12.15 |
・審議 (平成27年度第8回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
※会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。