三重県情報公開審査会 答申第440号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年6月9日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った特定地の宅地開発における建設リサイクル法、廃掃法、農地法等関係法令に基づく全ての文書についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年6月22日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書及び本件非開示部分について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、特定地が含まれる農地の転用許可時に、三重県農業会議の意見を聴くための「三重県農業会議常任会議員会議への諮問について」及び「諮問結果」である。そして、本件対象公文書において、実施機関が非開示とした情報は、法人その他の団体でない申請者の職業(以下「本件非開示部分」という。)である。
なお、本決定において異議申立人が「開示請求対象外の白ヌキとした部分について、件名を明らかにしても何の支障もないのに、意図的に隠ぺいした。」とした部分については、実施機関が「開示請求の内容に直接関係がないため開示対象外と判断し白抜きとした部分については、本件非開示部分以外、既に開示を行っている。
また、農地所有者の住所、氏名についても、不動産登記簿で誰でも入手できる情報であるため、実施機関は開示を行っている。
4 異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
申請者の職業は、農業会議が農地転用許可申請を審議する唯一の判定要件であり、非開示とする理由がない。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
農地所有者の職業については、公になっておらず、条例第7条第2号の個人に関する情報であり、特定の個人が識別され得るものに該当するため、非開示とした。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
本件非開示部分は、県又は市町が農地転用許可を行うに当たり、意見を聴くこととしている三重県農業会議への諮問及び諮問結果の文書に記載された農地所有者の職業である。この情報は、個人に関する情報であって、直接あるいは他の情報と組み合わせることにより、特定の個人が識別され得る情報であり、本条本号に該当すると認められる。
また、当該情報は、本号ただし書のいずれにも該当しないことは明らかである。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 7.27 |
・諮問書の受理 |
27. 7.29 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 8.12 | ・理由説明書の受理 |
27. 8.26 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27.10.23 |
・書面審理 (平成27年度第5回B部会) |
27.11.13 |
・審議 (平成27年度第6回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。