三重県情報公開審査会 答申第439号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年4月30日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、平成25年4月1日から平成27年3月31日の間、県内保健所における所有者の判明しない犬猫の引取りについて、県が引取事由を記入した「台帳」(電子データを含む)についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年5月12日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
所有者不明の引取りにおける、引取事由が記入された「台帳」が県に存在するはずである。
台帳とは環境省告示「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」(以下「環境省告示」という。)で定められた「台帳」のことである。この「台帳」は県が動物を引き取る際の理由として引取事由の記載を要求しているが、県が定めた動物引取願(第17号様式)にはこれを記載する欄がないため、「台帳」は他に存在するはずである。
また、「台帳」が存在しないとすると、動物の種類や引取事由・拾得の場所・年齢等を集計し国へ報告をするうえで著しく手間を要すると思われる。そのように手間を要する集計を県がしているはずがなく、「台帳」は存在しているはずである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
県では、「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき所有者が不明の犬及び猫の引取りに際して「動物取引願」の提出を受けており、これを「台帳」とみなして運用していたことから、対象公文書の特定にあたり異議申立人へ連絡したところ、異議申立人は過去に行った公文書開示請求により「動物引取願」の内容を知っており、今回請求している文書は環境省告示に基づく「台帳」であり、上記の「動物引取願」は今回請求している文書ではないと主張された。これらの経緯、及び「動物引取願」にある「所有者が判明しない」ためという記載が引取事由の記載に等しく、これとは別に「台帳」を作成していないとの理由から、今回異議申立人が請求した「台帳」は不存在であると判断した。
なお、国への年一回の報告については、拾得した動物の頭数と種類についてで足り、月ごとに集計をしている。引取事由をはじめ詳細な項目まで報告を要求されていないので、「動物引取願」での管理で必要十分である。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人は、県が定めた「動物引取願」には引取事由を記載する欄がなく「台帳」は他にあるはずであるということ、「台帳」がなければ国への集計報告ができないはずであるということ、の2点を主張する。
これらのことについて実施機関に聴取したところ、所有者不明ということ自体が引取事由に当たるため、「動物引取願」を環境省告示で定められている「台帳」とみなして運用してきたこと、また、国への報告は引き取った動物の頭数と種類で足り、「所有者不明」ということ以外に引取事由は要求されていないので、「動物引取願」とは別に「台帳」を作成しなくても運用できたことが、「台帳」が不存在の理由であるということである。この実施機関の上記運用が適切であったか否かの問題はあるものの、当該公文書が不存在という説明に特段不自然不合理な点は認められないことから、当審査会としては、実施機関が環境省告示に基づく台帳を作成しておらず、県が引取事由を記入した「台帳」は存在しないと判断せざるを得ない。
以上のことから、実施機関が、本件公文書を不存在とした本決定は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
8 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 7.17 |
・諮問書の受理 |
27. 7.28 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 8.11 | ・理由説明書の受理 |
27. 8.12 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27.10.23 |
・書面審理 (平成27年度第5回B部会) |
27.11.13 |
・審議 (平成27年度第6回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。